皆さんは体育館やオフィスの床で睡眠を取った経験をお持ちでしょうか。夜は非常に寒く,僕は風邪をひきました。よほど暑い時期を別にすれば,やはり睡眠時は暖かい場所が不可欠でしょう。そういう意味でこのJパックス社発明の簡易ベッド「暖段はこベッド」は,避難を強いられた人にとって大変有り難い発明だと思います。 
  
 しかし,この大変有り難い新発明がJパックス社の収益にあまり寄与していないという事実には複雑な思いを禁じ得ません。Jパックス社は意匠・商標登録は取得したようですが,業界団体に設計図を無償提供してこのベッドの製造を促すというのでは儲けには全く繋がらないでしょう。普及活動も手弁当というのですから、まさに同社の水谷嘉浩社長が仰るとおり「被災者のために」という純粋な思いだけが頼りなのだと思います。 
 そうした活動は非常に尊く,水谷社長や同社社員諸氏への尊敬の気持ちは高まるばかりですが,Jパックス社が営利企業であり会社関係者も「かすみを食べて生きているわけじゃない」以上は,こうした会社・社員の善意や努力が収益という形で還元されることが同社の発展にとっても望ましいのではないでしょうか。こうした善意の会社が健全に利益を上げてどんどん大きくなっていけば,それだけ社会が良くなっていくということです。そしてまた「世の中に役立つことをすれば報いられる」という事実を人々に示すことで,人々に社会貢献・善行へのモチベーションを与えることにもなると思います。 

 ではどのようにするのが望ましいでしょうか。このベッドの利用者は被災者個人ですが,それを利用するのは災害時であり,そうした際に市民に安全で快適な生活を提供する義務を有するのは国や自治体です。したがって,この「暖段はこベッド」の特許使用料を国や自治体が負担するという形を取ることが妥当だと思われます。具体的には国または自治体は,Jパックス社が直営で被災地に納入した分については同社が適正な利潤を上げられる金額で購入し,業界団体に提供された設計図に基づいて同業他社が制作納入した分については本来Jパックス社が受け取るべき特許使用料を肩代わりするという形は如何でしょうか。また,もし災害に備えた町内会や個人向けにこのベッドを販売するのであれば,国または自治体が補助金を投入して小売価格を引き下げるという形も考えられると思います。 

 国や自治体がコストを負担することで,社会に有益な活動をした営利企業がその活動の対価に相当する利潤を上げられるとも検討に値するのではないか,僕はそのように思っています。 



■段ボールベッドで避難所革命 東日本大震災がきっかけで開発、下町企業が利益より優先するものとは 
(ウィズニュース - 03月11日 07:00) 
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=220&from=diary&id=5532362