移動のバスの中は、ひっそりとしていた。

心なしか都内も音がないというか…

隣には玲がいるけど、完全に寝てしまっている。

テンションが上がって一日が経って、朝からお土産だのなんだので軽い観光。

夕方には帰路にという事で今。

さっき理佐に電話してみたけど、多分仕事中だろうから、電話に出なかったので、一応メッセージを一通。

すぐに返事が来て、それにまた返事。

正直、会いたい。

 

 

 

「…はぁ…しんど…」

 

 

 

「…どしたの?」

 

 

 

前の席にいたふーちゃんが私の方に向き直りながら声をかけてきた。

理佐との関係は、今じゃ別に隠してる訳でもない。

でも、正直に言うと伝書鳩のように理佐にこの事が伝わらなとも限らない。

 

 

 

「…お腹空いたなって…」

 

 

 

「ほんとに…?また理佐のことなんじゃないの?」

 

 

 

「…なんでそうなんの…」

 

 

 

「なんとなく…わかりやすいもんね。理佐もそうだけど両方すぐわかる。同時に落ち込んだり、片方怒ってたり…見てて可愛いもん。」

 

 

 

「今は理佐いないんだか「甘い甘い…まぁ、これから会えるんだから。良いじゃん。2日間くらいは休めるかもよ?」

 

 

 

「…うん…」

 

 

 

私は大人じゃない。

勘違いされがちだけど。

みんなの方がよっぽど大人だ。

感情の起伏が少ないだけで、悲しい、嬉しい、楽しい。

思うところはあるんだから。

そこを最初に汲み取ってくれたのが、理佐だった。

思い出すと、泣きたくなる。

会いたい。

 

 

 

それから一時間ほど走って、家に着いた。

オートロックを通り、家の扉を開けると、リビングが明るい。

 

 

 

「…帰ってるんだ…ただいま~…」

 

 

 

扉を開くとそこにはソファーに横になってる理佐が。

着替えてない?

珍しい。

そんな事したら汚れるよとか、シャワー行ってきて。なんて言う癖に。




「…」




片腕で目を隠すように寝ている理佐を見ていると、さっきの事を考えてしまう。

理佐に救われた私は、恩返し出来てんのかな。

ソファーとテーブルの間に腰を下ろす。




「…いつもありがとね…助かってるんだよ、私。頑張るのしんどい時もあるけど、理佐の笑顔見たらまた頑張れるなって思うんだよね。いつも、言えなくてごめんね?感謝してる。心から。」




言い終えて、私は立ち上がろうとした時だった。

片腕を掴まれて、そのまま理佐の上に倒れ込む。




「…おかえり。」




「…ただいま…てか、起きてたの?」




「ドア開けた時かな…でも、ツアー前に由依が出掛ける時の夢見てた。起きたら由依いるんだもん。」




「帰ってきたんだよ。」




「うん。」




「ねぇ。会いたかった。」




「…私も。」




「…明日は休みだから。明後日も。」




「…明後日は私が仕事。」




「じゃあ、明日はゆっくり出来るよね。今夜からか。」




「そうだね。さ。着替えて、ご飯食べて、お風呂入って、ゆっくりしよっか。」




「うん。」




でも、どちらも動かなかった。

ただその場で抱き合って、幸せを深く噛み締めて、笑い合う。

きっと、明日は体バキバキだよね。

ソファーでこのまま寝落ちだもん。

でも、そんな1日も楽しくて、尊くて、幸せなんだよ。

ありがとね、理佐。