◆概要

令和6年は、日銀の大規模金融緩和からの「出口」や幅広い分野での残業規制の厳格化、社会保障関連費の負担増など、日本は大きな政策転換を迎えるだろう。

国際情勢の不安定化によるエネルギーと食料の自給率に乏しい国の経済を直撃している。この正念場乗り越えようとするとき「財務省頼み」のままでは限界かもしれない。

昨年の岸田文雄政権の政策決定過程を取材していて財務省の力の低下を感じたからだ。


◆背景
・「最強省庁」財務省は長らくこう呼ばれてきた。東大卒が多く、首相官邸や与野党の国会議員と渡り合いながら税制と予算を差配してきた。岸田政権でも村井英雄官房副長官をはじめ財務省出身者が首相の判断に影響力を持っているといわれる。財務省は事実上、中央省庁のトップとして歴代政権を最も近くで支え、時には首相官邸以上の存在管を示してきた。

・一方財務省が深く関わってきた日本経済はさえない。主要国の名目国内総生産(GDP)で、日本が世界占める割合は平成17年の10.1%から令和4年は4.2%に低下した。先進7か国が減少したが、半減したのは日本だけ。金融大手、ゴールドマンサックスの長期予想では、日本はGDPの規模で2075年には、エジプトやメキシコにも抜かれ、12位に沈む。かつて世界2位の経済大国の凋落ぶりだ。

・財務省は歳出改革にも失敗している。20年前に500兆円規模だった国債発行残高は6年度末に1105兆円に膨らむ見通しだ。

・財務省は、「健全で活力ある経済を実現する」「質の高い政策を作り上げ、日本と世界の課題解決に貢献する」とうたっている。だが現実はどうか。

・少子化対策、防衛力強化など、国の将来を左右する政策で財源確保に向けた議論が低調なのも、所得税などの定額減税に対する国民の理解が広がっていないのも、官邸と財務省の微妙な距離が影響している。

・何十年も低成長が続き、メリハリある予算も作れないのに、財務省以下、官僚は誰も責任を取らない。こうした官僚組織の在り方は国民が政治に対する信頼を失う一因になっていないか。

・最近は学生の公務員離れも加速している。政策立案を担う霞が関が機能不全に陥っているならば、活力ある経済を取り戻すためにも、行政機関の抜本的見直しが必要だ。

 

◆私見

この論説の著者は、産経新聞の経済部長である。紙面に記載可能な範囲で、財務省の強権な態度と施策を叱責しているが、まだあだオブラートに包んでいると言わざるを得ない。一般紙面の記者としては限界か。

その点を以下に指摘する。

・財務省は歳出拡張、国債発行を極度に嫌っている中で、国債残高は右肩上がりだが、一方で日銀による国債の買い取りも右肩上がりで23年末で53.3%と過去最大となり、約半分は市場に出回っていない。財務省は国債を発行したふりをしている。

・安倍政権では、かなり財務省と戦ったが、「緊縮財政」の牙城は崩せなかった。まして岸田政権においては、発足以来失政の連続で国民の支持率低下により、予算案の作成は財務省に丸投げ状態。

・与党の国会議員が公の場で「積極財政」「減税」という言葉さえ発することができないほど財務省の圧力は強い。発言したとたんに後援会長、地元を通じた圧力、政治資金、選挙スキャンダルなどの妨害工作が起きるのは歴史が示している。特に政治資金関連は全てのお金の流れは国税庁を通じて検察に筒抜けなのだから、派閥や所属国会議員は常に標的になっている。

・財務省の抜本的見直しとは、安倍晋三元首相が目指した改革の本丸は、歳入庁と歳出庁への分離だ。