◆概要

東大大学院の境家史郎教授(日本政治)は、日本国憲法が昭和22年5月の施行から一度も改正されていない背景に、国民の意識である「消極的護憲派」の存在があったことを指摘している。

 

◆背景

・戦後に行われた新聞社などによる意識調査によれば、国民の護憲思考は考えられてきたほど強くなかったことが分かる。

・昭和29年の自衛隊創設のとき、当時の吉田茂首相は9条改正を放置した。

・そこから国民は自衛隊と9条が併存する状態に慣れてきた。

・その結果、矛盾があっても弊害はないから変えなくてよいという「消極的護憲派」が増え続け、政府(自民党政権)だけでなく、国民も9条の解釈の幅をどんどん広げていった。近年では世論調査の8割超になる場合もある。

・同様に、24条1項は「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」と規定し、「両性」は男女を意味するというのが伝統的解釈だった。

・リベラル勢力が同性婚に賛成する傾向があるが、同性婚の容認を憲法に書き込むことをせずに「こうも読めるよね」と解釈を広げる方向に加担している。

・護憲派は9条改正につながる「お試し改憲」を批判しているが、影響の少ない条文を改正する「お試し改憲」を頭から否定している必要はない。

・もっとセンシティブな問題を扱う事態に備え、実務的に国民投票を経験しておくのも大事だ。

・憲法の在り方を判断する国民投票への参加を通じて、国民も憲法の意義を理解するのではないか。

 

◆私見

・吉田茂政権による放置の結果、「消極的護憲派」が主流となってしまった。これが悪の根源。

・今となっては、保守派は解釈変更しか手がなくなったと考えている。安倍政権がその典型。

・境家教授の提案は、「婚姻」の件を例にして安全保障にかかわる9条の前に「お試し改憲」を提案するもので、この提案を支持したい。

・ただし、「婚姻」で「お試し改憲」するなら、「婚姻は生理的な両性の合意のみに基いて成立」とすべき。