(つづき)

■農協改革は何がねらいか
 農協の株式会社化は米韓FTAを締結した韓国でも強行されました。経済事業会社、農協銀行、農協生命保険、農協損害保険に分割され、国際競争下にある営利企業として経営の合理化に迫られて農家や地域からの乖離が進んでいます。
 今回の改正では「株式会社になることができる」としていますが、附則では5年後に制度の見直しを図るとしました。さらに与党の取りまとめでは「農林中金、信連、全共連は、経済界、他業態金融機関との連携を容易にする観点から、農業出資の株式会社に転換することを可能とする方向で検討する」と書いています。
 在日米国商工会議所(ACCJ)は政府に対する意見書で「JAグループは実質的に不特定多数に販売できる規制を利用して金融事業を拡大させてきた」とし、さらに「金融庁規制下にある保険会社は生損保兼営が禁止されているが、JA共済にはこれが認められている」と指摘。「このような緩い規制環境に置かれたJAグループの金融事業はすでに日本の保険市場において大きなシェアを占めている」「JA共済は保有契約件数で見ると日本の生命保険会社として第3位の規模を持ち、生命保険収入でのシェアは10%に及ぶ」と非難しています。

 そして「逆に、自己改革案の中にはJAグループの金融事業の更なる肥大化が散見される。准組合員の拡大が進む恐れがある」と述べ、日本政府の規制改革実施計画で准組合員の利用制限が検討されていることについて「歓迎する」としています。

 これはつまり、JAのシェアを俺たちにもよこせ、と圧力をかけているわけです。
 農水委員会で私が「今後5年間で株式会社化が進まなくても問題にしないのか」と聞いたところ、林大臣はハッキリと「おっしゃる通り(問題にしない)」と明言しました。ここはしっかり記憶しておきたいところです。



■改革でどうなるのか
 つまりこの問題は、日本の農村を日米大企業の草刈り場にするのか、助け合いを基礎とした地域コミュニティを守るのかが問われていると言えるでしょう。

 有名な話ですが、オーストラリアの小麦の農協AWBは、農家が株主となって株式会社化しましたが、その後カナダの肥料会社アグリウムに買収され、その1カ月後には米国資本の穀物メジャー、カーギル社に売り払われました。
 仮に全農が株式会社化した場合、同様の事態が考えられます。全農の子会社「全農グレイン」は米国ニューオリンズ州に世界最大の穀物船積み施設を保有していますが、アメリカの穀物企業にとってここは目の上のたんこぶだといいます。
なぜなら全農は、ここで遺伝子組み換え作物を分別して管理しているからです。東京大学の鈴木宣弘教授は「遺伝子組み換え作物を混入しないよう管理している全農グレインは、米国にとって不愉快な存在でしかない。AWBのように全農を株式会社化して、その後に買収するというシナリオは十分あり得る」と指摘しています。

 私たちの食の安全すら危険にさらされかねないのです。