(つづき)

14日の衆議院農林水産委員会では、機能性表示食品の問題も取り上げました。4月から、これまで手間がかかっていた「健康の維持・増進に役立つ」旨の食品パッケージ表示が簡易にできるようになる制度ですが、さっそく国民の健康にかかわる重大な問題が生じています。

体に対する機能の表示が簡単になった

 これまで、健康に関する表示ができるのは栄養機能食品と特定保健用食品(トクホ)に限られていました。栄養機能食品は、5種類のミネラルと12種類のビタミンについて定型文を表示できるだけ。トクホは、保健機能成分について表示するもので、「脂肪の消費をしやすくする」お茶といった効果の表示ができますが、許可制であり、企業が自らコストをかけて臨床試験などをする必要がありました。

 ところが新制度では、機能性成分を証明する研究論文を提出すれば、「体のどこにいいのか」「体にどう機能するのか」を表示できます。消費者庁は書類に不備がないかだけを審査し、内容については審査しません。多くの企業がビジネスチャンスと機能性表示の届け出に殺到していますが、消費者庁は内容を全くチェックしないので健康被害の可能性も懸念されていました。

早速、懸念が現実に

 417日、消費者庁のホームページに最初の届け出案件が掲載されましたが、早速懸念が現実のものとなりました。株式会社リコムが申請しているサプリメント「蹴脂(しゅうしりゅう)」です。エノキタケ抽出成分を含む食品として、「体脂肪(内臓脂肪)を減少させる働きがあります」という表示を申請していますが、実はこのエノキタケ抽出物を含む同社の「蹴脂(しゅうしちゃ)」は、「安全性が確認できない」としてトクホの申請が却下されているのです。

 2013年に出された同社のトクホ申請に対して食品安全委員会による審議が行われていましたが、412日に正式な評価書がまとめられました。その内容を見ると、「心血管系、泌尿器系、呼吸器系、生殖器系など、多岐にわたる臓器に影響を及ぼすことは否定できない」とし、したがって「本食品の安全性が確認できない」と記述。「作用機序および安全性について科学的に適切な根拠が示されない限り、本食品の安全性を評価することはできない」と結論付けています。

 すなわち、食品安全委員会が “科学的根拠がない” “多岐にわたる臓器に影響あり”とした同社の「お茶」を、成分は同じダイエットサプリに変えただけで「健康にいい」ものとして流通する可能性があるのです。

新表示制度は大いに問題あり

 機能性表示食品は企業の責任で表示し、消費者庁の情報公開を見て消費者が自分で判断する制度。しかし、食品安全委員会の警告はその枠組みでは知ることができません。今回のケースでも、消費者は自力で消費者庁の公開情報と食品安全委員会の疑問とを結びつけないと蹴脂粒の安全性が判断できない状態になっています。

 私の追及に対し、所管する松本洋平内閣府大臣政務官は「いずれにいたしましても、科学的根拠に基づかない表示がされた食品の流通を防ぎ、消費者の安全が確保されるように制度を運用」すると確約しました。「事前に科学的根拠に基づくかどうかの内容の審査はしない」というこの制度でそんな運用ができるかどうか疑問ですが、引き続きこの約束が守られるよう監視していきたいと思います。