連休明けから、衆議院はあわただしくなっています。ついに閣議決定された戦争立法のほか、労働者派遣法や刑事訴訟法(盗聴の拡大、司法取引の導入)、農協法の改悪など、重要法案が次々と審議入りしていくからです。そんな中、ある意味ヒッソリと、とんでもない法改正が行われようとしています。農林水産省の出先である地域センターを廃止し、食の安全にかかわる米や牛肉などの表示監視業務を大きく削減するほか、作況などの統計調査を大幅にスリム化するというものです。私は14日に開かれた衆議院農林水産委員会でこの問題について質問しました。

国政と農村をつなぐ地域センターを廃止

 地方農政局・北海道農政事務所が所管している地域センターは現在、農業に関する統計調査や経営所得安定対策のほか、食品表示の監視などの業務を行っています。

 2011年に行われた前回の改正により地方農政事務所、統計・情報センターなど346か所あった全国の拠点が現在の合計103か所に集約されました。その際、地域センターや支所の設置位置は各地からおおむね2時間以内で行けるよう調整するとしたはずです。しかし、これをを半減させて県庁所在地に集約し、業務の外部委託などによって職員数も削減するというのです。

米、牛…食の安全が危ない
 農水省の資料によれば、センター廃止によって、JAS法に基づく食品表示の巡回調査は原則として広域業者のみとし、職員数の削減に対応し、20%程度削減するとしています。重大なことは、米のトレーサビリティ法による流通監視業務も人員に見合った調査件数に削減するとしていることです。

 同法の制定は2008年、国が非食用(工業用ノリなどの原料用)として販売した事故米が、弁当や菓子の原料に流用されていた事件がきっかけです。大阪の米穀類の加工販売企業が、非常に強力な発がん性物質のアフラトキシンなどに汚染された米を食用として転売していた事件で、米製品の安全性に対する消費者の不安が増大しました。農水大臣、事務次官が引責辞任する異例の事態となり、翌2009年に米の受け渡し情報の記録や原産地情報の伝達を義務付けた同法が成立したのです。今回の改正は、この監視体制を大きく弱めるものです。

 牛トレーサビリティ法による巡回調査も「体制に見合った件数に削減」されてしまいます。同法による調査は、BSE(狂牛病)感染問題や食肉偽装事件などを受けて2001年に導入されたもの。牛を個体識別番号により一元管理し、生産、流通、消費の各段階においてこの番号を正確に伝達することを義務付けていますが、この義務の履行監視も手薄になってしまいます。

世界に誇る農業統計業務も縮減

 さらに、統計業務も削減対象になっています。日本の農業統計は信頼性の高い統計として世界的な評価を受けているのですが、この業務を大きく縮減してしまいます。さまざまな施策の基礎となるデータを集める作況特定筆調査は、これまで2万筆で行っていたものを10分の12000筆に縮減してしまいます。驚くべきことです。

業務削減は本末転倒

 私の追及に対し、林芳正農水大臣は「業務の支障がないよう配慮する」と抽象的な答えを繰り返すのみでした。本来、国民生活にとって必要な業務の体制を整えるのが政府の役割です。人員削減ありきで、業務は「体制に見合ったもの」にするというのは本末転倒と言わざるを得ません。

(つづく)