TPP交渉に関連する米の輸入についての日米閣僚交渉がヤマ場を迎えています。

輸入枠を大きく広げる方向で交渉が進んでいるようですが、減反や飼料米への転換など生産調整の協力に努力してきた農家にとって納得できるものではありません。

にもかかわらず、交渉にかかわる情報は一切出てきません。アメリカでは先週末、TPPに関する情報公開を強化したTPA法案が提出されたのに、日本政府は頑なに秘密主義を守っています。

22日の農水員会で政府を追及しましたが、「何も確定していない」「交渉全力を尽くします」と言うだけで、聞いたことに一切答えませんでした。



米を5万㌧から21万㌧で秘密交渉―さらなる米価暴落を招く

日米の2国間で行われている閣僚協議で、米国が要求しているのは主食用米17万5000㌧を含む21万5000㌧の輸入。これに対し日本側は5万㌧の「TPP特別枠」の輸入を新たに認める方向で交渉しているとされています。

昨年、実質米価は1俵あたり1万3000円を割るという戦後最低水準を更新しました。そんな中、5万㌧も別枠輸入をすれば、無関税で輸入が続けられているミニマムアクセス米(MA米)の77万㌧と合わせ、82万㌧もの米が日本に入ってくることになります。

 米の消費量は毎年8万㌧ずつ減っています。確かに同量の備蓄用米の政府買い入れが前提とされていますが、MA米も備蓄米もいずれ売却するわけですから、輸入拡大はやはり米価の引き下げ方向に必ず作用する。長年、政府の生産調整で煮え湯をのまされ、米価暴落で苦境に立つ農家にとってとても受け入れられるものではありません。

 また、政府米はアメリカから税金で高く買って安く売るので常時赤字。別枠輸入には100億円の財政負担が必要とされています。そもそも、これまでのMA米に関連する財政負担は累計で2723億円。これがさらに膨れ上がることになります。



米だけではなく牛肉、豚肉も―国会決議に対する重大な背信

 米だけではありません。牛肉については輸入関税を現在の38.5%から10年間で10%に引き下げ、豚肉では差額関税制度※を廃止し、キロ当たり482円程度の関税を50円付近まで下げ、重量税化することを検討しています。

日本養豚協会は昨年10月、米国のビルザック農務長官とフロマン米通商代表に書簡を送りました。その中で同協会は「我が国の豚肉の生産コストはアメリカに比べて高く、差額関税制度の国境措置を撤廃すると壊滅的な打撃を受ける」と訴えています。4月19日には、同協会の生産者たちが東京都千代田区に集まり、街頭で「TPPで関税を引き下げられるなら壊滅だ」とアピールをしておられました。

2013年4月、衆参農林水産委員会は

「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議の対象とすること」

「聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は(TPPからの)脱退も辞さない」

10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」

とする決議を採択しました。林芳正農水相は5日のNHK日曜討論会で「国会決議を守ったと言われるよう、期限を設けず頑張る」と発言しています。しかし、次々と報道されている内容が事実だとすれば、とても決議を守ったとは言えません。(つづく)

※豚肉の輸入価格が低いときは基準輸入価格に満たない部分を関税として徴収して国内養豚農家を保護し、価格が高いときには低率な従価税を適用することにより関税負担を軽減する制度