役者を辞めて、一般企業に就職しようと考えても、それまで役者だけ、芝居の世界だけで生きてきてこれといった経歴も資格もない。
社会人として再スタートするにも人より遅いスタートになってしまって、自分に何の仕事が出来るのだろうと考えてしまって、役者として生きていくと決めるにも辞めて就職すると決めるにも踏ん切りがつかず、ただ不安だけが募ってしまう。
 
役者を辞めようか考えていた時、私僕自身がこのような状態でした。
 
当時、周りの仲間や先輩、後輩にも同じ悩みを持った人たちが沢山いました。
現在役者をやっている人の中にも、このような辛い状態にある人がいると思います。
 
私は結局、1年近く悩んだ末に役者を辞め、アルバイト、契約社員、正社員、個人事業主といくつかの職種、雇用形態を経験してきました。
その経験から、役者を辞めようか考えていた時に抱えていた、「役者を辞めて何の仕事が出来るのか。就ける仕事があるのか。」という不安に対する答えを書いてみたいと思います。
 
現在同じような悩みを抱えている方にも、役に立てる内容ではないかと思います。
 

役者を辞めたとして、就ける職業があるのか

今考えれば、「そりゃあるでしょ」と思うような不安ですが、当時は本気でこれが怖かったんです。

 

自分がバイトと芝居しかしたことがないというのが、いつの間にかコンプレックスになっていました。

芝居仲間には、私と同じようにバイトと芝居しか知らない人がほとんどでしたが、たまに地元に帰れば、大学を出た友達が大手企業に就職していたり、結婚していたり子供がいたりして、会話の内容もいつの間にか合わなくなっていたり、芝居の道を行く自分と他の道を行く友達を比べて、劣等感とは言いませんが、「さみしさ」だったり「焦り」を感じてしまうようになっていました。

 

しかし私が初めて正社員として就職したのが25歳の時でしたが、就職先はまだまだあると思えました。ただし大企業は無理だし、条件の良い求人もほとんどありません。

それでも良ければ、何とか30歳ぐらいまでは正社員として職に就くことは出来ると思っています。就職することも、その後働いていくことも簡単ではありませんが。

 

役者を辞めた後にどんな職業に就けるのか

これに関しては、資格が必要な仕事や高度に専門的な職業でなければ、多くの職業を目指すことは可能だと思います。

ただ、実際にその職種の企業に入れるかどうかは、中途採用の場合は募集される時期が合うかの問題もありますし、多くの企業ではなるべく若い人材を入れたいと考えているので、役者を辞めて就職するタイミングが遅くなればなるほど、入社する難易度が高くなることは覚悟する必要があります。

 

私が24で役者を辞めてから、30歳になった現在までにアルバイト以外で経験してきた職種としては下記のものがあります。

 

・書店の契約社員

・販売職の正社員

・SEの正社員

・フリーのSE(個人事業主)

 

自分の経験として、これらの職(フリーのSEは厳しいかもしれません)には30歳で未経験でも就職することが可能だと思います。

 

ただし、就職するのも就職してからも楽ではありませんでした。

年下の先輩や上司の指導を受けながら、役者とはまた違った必死さで朝から夜中まで働き、休日も仕事のための勉強や資格を取得したりと、就職するのが遅かった分を取り戻すぐらいの気持ちでやってきましたので。

 

他にも、知り合いの元役者がその後就いている職には、飲食店を経営する会社の社員や、不動産営業、医療事務、親の資産を継いでマンション経営などがあります。

 

以前は一緒に芝居をやっていて、現在は別々の仕事についている友達とたまに会った時、いつも話すことがあります。「今の仕事は大変だけど、役者よりは楽だな」と。

努め人をやっていて大変なことはたくさんありますが、それでもその度に「役者よりは楽だ」と思えることが本当に自分の根底で、原動力になってくれていると感じています。

 

 

いかがでしたでしょうか?
当時の私が不安に思っていたような、役者とバイトしかやっていなかったから仕事に就けないということはありません。誰でも未経験からでもできる仕事は意外にたくさんありました。
ただし、30歳を過ぎるぐらいになると、そこから未経験で入れる職種はかなり限られてきます。
その年齢に至るまでには、役者を続けるのか辞めて別の職に就くかの決断が必要になります。
僕が役者を目指して専門学校に入学した時、その後の役者人生でもずっとお世話になることとなる、「師匠」とも呼べる役者さんに出会いました。その師匠は、僕の最初の担任講師でした。
師匠が最初の授業で言ったことは、「皆さん、何歳までに芽が出なければ役者を辞める。役者の道を諦める。という年齢を決めて下さい。」でした。
 
それから6年後、僕は役者を辞めました。
最初に師匠に問われた時に漠然と考えたのは「30歳まで」でしたが、実際には24歳で辞めました。その決断が正しかったかどうかは未だに分かりませんが、後悔していないという意味では正しかったと言っても良いと思っています。
 
役者を続けていく中で、(順調に売れていれば別かもしれませんが)「いつまで続けようか・・・。もう辞めるべきなのだろうか・・・。」と考える時は必ず来ると思います。
 
今回は、そんな悩みの最中にいる役者さんの参考になる記事を目指します。
 

「役者を辞めようか・・」は誰もが通る道?

役者になろうと決意した時、役者を辞める日のことまで考えた人は少ないと思います。
でも誰でもいずれは、「役者を辞めようか・・・」と考える日が来るのだと思います。
僕は24歳の時に役者を辞めましたが、その1年程前から何度も「役者を辞めようか、続けようか」と頭の中で行ったり来たり考え続けていました。

 
売れている映画俳優でも、「何度も役者を辞めようと考えた」という話もよく聞きます。
前述した僕の師匠も映画俳優ですが、若い時に何度も辞めようと考えたと言っていました。
 

役者を辞めるなら早い方が良いのか


僕は24歳で役者を辞め、その後30歳の現在まで、アルバイト、契約社員、正社員、個人事業主といくつかの職種、雇用形態を経験してきました。

その経験から感じるのは、役者をやってきたという経歴はプラスの面もあるし、マイナスな面もあるということ。

これだけだと当たり前と思われるかもしれませんが、実際に自分が役者を続けるか辞めるかを迷っていた時には、役者としての経歴は一般企業への就職には全く役に立たず、辞めて就職する時期が遅くなればなるほど、不利になるのではないかと不安でした。

なので、現在同じ心境の役者さんには、有益な情報を提供できるかと思っています。

当時の僕が抱いていた不安と、実際に役者を辞めて別の職に就いてみてどうだったのかを書いてみます。

 

◆当時の不安 その①

役者の経歴は一般企業への就職には何の役にも立たないのではないか。

 

◇実際

特別仕事に役立つことはあまりないが、話のきっかけにはなるし、経営者や人事の方によっては高評価を得られることも。

僕はやったことがないですが、営業には活かせると思います。

 

◆当時の不安 その②

30歳ぐらいまでなら就職も出来ると聞くが、僕は大学も出ておらず、アルバイト以外の職歴もなかったため、30歳で初めて正社員として就職なんて本当に可能なんだろうか。

 

◇実際

僕がこれまで経験してきた会社で考えると、恐らく可能だと思います。ただし、20代半ばでの就職と30を超えてからの就職では、かなり難易度に差があるのは事実です。

それに、一般企業の中で働くことも相当に厳しいことです。30を超えてから右も左も分からない仕事に就き、下手すれば10歳近く年下の先輩あるいは上司の指導を受けながら毎日朝から夜中まで働くということに耐え抜く強さが必要です。

とはいえ僕の意見としては、役者をやるということ以上に大変な仕事はそうそう無いと思っています。役者を本気でやってきた人なら、別の仕事をしても十分にやっていけるはずだと信じています。

ただ心配なのが、30近くまで役者で食っていくことを目指して頑張って、志半ばで辞めた後、心が空っぽの状態で企業勤めは出来ないのではないか、耐えられないのではないかということ。それだけが心配です。30まで続けるのであれば、辞めた後も、勤め人として強く生きていけるだけの強さと覚悟が必要だと思います。

 

◆当時の不安③

役者を何歳まで続けられるのか。役者を辞めるのなら早い方が良いのではないか。

 

◇実際

先に述べていますが、やはり一つの区切りは30歳ぐらいだと思います。

可能であれば27歳か28歳までにした方が、職選びには有利です。

さらに、「役者を辞めるのなら早い方が良いのではないか」に対する僕なりの答えを言うのなら、それはYESです。

役者を辞めて就職するのが遅くなるよりは、早い方が良いです。選択できる職業の幅も多いですし、就職後にその職が合わなければ転職することも出来ます。その職に必要な技能を身に着けるための期間も長く取れます。就職した後のことを考えるなら、早く役者を辞めた方が良いというのは残酷ながらも事実だと思います。

ただし、まだ役者としてやっていきたい気持ちの方が強いのに、その気持ちを押し殺して若いうちに役者を辞めてしまって後悔するのなら辞めない方が良いと考えます。どちらを選んでも、自分の選択には自分で責任を取るしかないのです。30歳までまだ時間があるのであれば、しっかり考えて道を選んでほしいと思います。

 

 

役者という職業の特殊なところの一つは、その職を志した人のほとんどが、道半ばで諦め、別の職に就くということです。

続けても辞めても、どちらも簡単な道ではありませんが、しっかり自分の人生を考えることが大事です。

先に役者の道を離れた僕の体験、考えが参考になれば幸いです。

チケットノルマがあることで、お金がなく、役者を続けることが辛くなっていませんか?

 

僕は約3年間、「小劇場」で公演をする「小劇団」に所属したり、客演で舞台に立っていました。その時に苦しんだのが、「チケットノルマ」です。
現在、役者として活動している方の中にも、当時の僕と同じように「チケットノルマ」のために貧乏している、役者を続けるのが辛いと思っている方がいると思います。
 
今回は、役者を辞めた僕が、「チケットノルマ」の苦しみを解決するための方法を考えていきたいと思います。
 

なぜ「チケットノルマ」が必要なのか

 
小劇場で公演することがメインの活動となっている小劇団の場合、
必ずと言って良いほど、「チケットノルマ」が発生しますよね。
 
なぜ役者やスタッフが自分で「チケット」を売らないといけないのかというと、
劇団自体に集客力がないからですね。
 
劇団のファンが何百人もいて、公演のたびに勝手にチケットが売り切れるのであれば、
手売りする必要などないわけですから。
 
小劇場でのお芝居を何度もやっていると、それが当たり前に思えてきてしまいますが、
僕が初めて小劇場での芝居に出た時には、急に「チケット30枚がノルマね」なんて言われて驚いたものです。あなたもそうではありませんか?
 

役者のつらさの根源は、劇団と企業の違い?

 
なぜか忘れがち、見落とされがちですが、役者もひとつの職業のはずなのです。
それを前提にして考えていくと、おかしなことに気づくはずです。
 
一般的な企業と劇団を比べてみれば、よくわかります。
 
一般企業に就職した場合は、何の知識も経験もない状態だったとしても、就職したその時から、社会保険に加入になり、給料ももらえます。これが当たり前だとみんな思っています。
 
劇団に入団した時は、劇団四季でもない限り給料なんか出ません。それどころか大半の小劇団では、みんなでお金を出し合って芝居を作り、観客に観にきてもらいます。劇団に入った役者やスタッフがお金を支払うわけです。もちろん社会保険なんか入れません。ほとんどの人は他にアルバイトなどの仕事をしてお金を稼ぎながら劇団での活動をするでしょう。これが当たり前だとみんな思っています。
 
芝居から離れた今、客観的に考えられるようになってようやく気付きました。
本来、「役者」は数ある「職業」の中の一つであるはずです。
多くの「職業」では、見習い期間であれ、「給料」をもらいながら「教育」を受けられます。
しかし「役者」という「職業」だけは、見習い期間に「給料」をもらえないどころか公演のたびにお金を払って舞台に立ち、「職業」として認められることもなく、フリーター扱いなのです。
 
役者(世間的には「役者の卵」)を続けていくには、こういった世間からの評価にさらされ、本業(役者業)でお金を稼げず、むしろチケットノルマなどのためにお金を支払いながら舞台に立つ辛さを耐え続けることが必要なのです。
 

チケットノルマと役者の現実

 
僕もチケットノルマには毎度苦しみました。
チケットの売り上げのことを考えるよりも、どれだけ良い芝居をするかを考えたいのに、
僕が一時期在籍した小劇団では、芝居のダメ出しよりもチケットの売り上げについて言われることの方が多かったぐらいです。
ただ、それは僕の在籍した劇団に限ったことではなく、どこも似たような状況でしたが。
 
誰かにものを売るノウハウなど持っていなかった僕は、
課せられたチケットノルマをさばくには、知人に買ってもらう、観にきてもらうという方法をとることしかできませんでした。
すると結局、役者仲間にみにきて観にきてもらうことが多くなり、代わりにその仲間の公演の時には私も見に行くのです。
 
売れない小劇団の多くは、こうして極狭い範囲で観に行ったり観にきてもらったりを繰り返しながら、知名度が上がって集客力が上がる日を待っています。
 
あるいは年に数回も公演に出るとなると、知人に来てもらうことすら厳しくなります。
そういう時は自腹で買い取り、1枚2000円~4000円するチケットにノルマ未達の枚数分だけお金を支払うのです。
 
それで借金までしている人もいました。
小劇団の役者の現実は本当に厳しいものです。

チケットノルマ貧乏の解決策

 
小劇場、小劇団での芝居をつづける限り、チケットノルマをさばくための闘いと、公演をうつためにお金を稼がなくてはいけないという現実は続くでしょう。
 
この、役者という仕事を続けるために、他の仕事でお金を稼がないといけないジレンマを解決するための方法は、下記のようなものが考えられますが、どれも簡単ではありませんね。
 
①なんとかしてチケットを売り続ける
②チケット手売りに依らない集客を実現する
③スポンサーを獲得する
④自腹でもいいと覚悟を決める
⑤辞める
 
①の実例として、
僕が事務所に所属していた時の先輩には、公演のチケットを渋谷の通行人に声をかけ続け、ノルマ達成した人もいましたし、居酒屋に居合わせた初対面のサラリーマン数十人に買ってもらった人もいました。
それぐらいやる覚悟と行動力があれば、チケットノルマがあっても何とかクリアしていくことは出来るでしょう。
 
②は個人の力というよりは、劇団全体としての集客力の話です。
公演する小屋の大きさによって、何人ぐらいの集客が必要なのかは変わってきますが、劇団の公演を自発的に観にきてくれるファンだけで、必要な客数をクリアできるのであれば、自ずとチケットノルマは必要なくなります。ただし、これが出来ないから多くの小劇団にチケットノルマがあるわけですから、どの劇団もこの段階を目指しはするが長い時間がかかるというのが現実です。
 
③でいうスポンサーとは、企業に限ったものではなく、市町村などの行政や文化庁などが経済的な支援をしてくれる場合もあります。しかしそのためには、それ相応の実力があると認められて、支援する価値があると認められなければなりません。多くの劇団では、そうして評価してもらえるようになることを目標のひとつとしているでしょうが、実際はそこに至る前に劇団自体が解散してしまったり、退団してしまうことが多いでしょう。数ある劇団の中で、スポンサーがつくぐらいの価値を発することは簡単ではないです。
 
④はその通り、チケットノルマ代を自腹で支払い続けてでも芝居をやりたいと思えば、それでやり続ける覚悟を決めることです。その覚悟があって、それで良いと心から思えるのであれば、辞める必要はないでしょう。
 
⑤最終的には夢半ばで諦めてやめていく人が多い世界です。私もその一人でした。役者の世界は厳しい世界です。職人の世界と同じく、一人前になるまでには膨大な時間とお金が必要です。それでも情熱を絶やさずに、初期衝動を失わずに走り続けられる人は、きっと続けるべきですし、続けるでしょう。私のように、志半ばで続けられるだけの気持ちの強さを保てなくなってしまう人も多いですが、役者を経験して、また別の職業について人生を歩んでみると、案外悪くないと思えています。
 
 
やはり簡単な解決策はありません。もしあれば、これだけ長い間、小劇場界隈での「チケットノルマ」制度が続いてきていないでしょう。
 
今回の記事が、「チケットノルマ」貧乏に苦しむ役者の皆さんが問題を客観視して、苦しみ辛さを解消する一助となれることを願います。