チケットノルマがあることで、お金がなく、役者を続けることが辛くなっていませんか?
僕は約3年間、「小劇場」で公演をする「小劇団」に所属したり、客演で舞台に立っていました。その時に苦しんだのが、「チケットノルマ」です。
現在、役者として活動している方の中にも、当時の僕と同じように「チケットノルマ」のために貧乏している、役者を続けるのが辛いと思っている方がいると思います。
今回は、役者を辞めた僕が、「チケットノルマ」の苦しみを解決するための方法を考えていきたいと思います。
なぜ「チケットノルマ」が必要なのか
小劇場で公演することがメインの活動となっている小劇団の場合、
必ずと言って良いほど、「チケットノルマ」が発生しますよね。
なぜ役者やスタッフが自分で「チケット」を売らないといけないのかというと、
劇団自体に集客力がないからですね。
劇団のファンが何百人もいて、公演のたびに勝手にチケットが売り切れるのであれば、
手売りする必要などないわけですから。
小劇場でのお芝居を何度もやっていると、それが当たり前に思えてきてしまいますが、
僕が初めて小劇場での芝居に出た時には、急に「チケット30枚がノルマね」なんて言われて驚いたものです。あなたもそうではありませんか?
役者のつらさの根源は、劇団と企業の違い?
なぜか忘れがち、見落とされがちですが、役者もひとつの職業のはずなのです。
それを前提にして考えていくと、おかしなことに気づくはずです。
一般的な企業と劇団を比べてみれば、よくわかります。
一般企業に就職した場合は、何の知識も経験もない状態だったとしても、就職したその時から、社会保険に加入になり、給料ももらえます。これが当たり前だとみんな思っています。
劇団に入団した時は、劇団四季でもない限り給料なんか出ません。それどころか大半の小劇団では、みんなでお金を出し合って芝居を作り、観客に観にきてもらいます。劇団に入った役者やスタッフがお金を支払うわけです。もちろん社会保険なんか入れません。ほとんどの人は他にアルバイトなどの仕事をしてお金を稼ぎながら劇団での活動をするでしょう。これが当たり前だとみんな思っています。
芝居から離れた今、客観的に考えられるようになってようやく気付きました。
本来、「役者」は数ある「職業」の中の一つであるはずです。
多くの「職業」では、見習い期間であれ、「給料」をもらいながら「教育」を受けられます。
しかし「役者」という「職業」だけは、見習い期間に「給料」をもらえないどころか公演のたびにお金を払って舞台に立ち、「職業」として認められることもなく、フリーター扱いなのです。
役者(世間的には「役者の卵」)を続けていくには、こういった世間からの評価にさらされ、本業(役者業)でお金を稼げず、むしろチケットノルマなどのためにお金を支払いながら舞台に立つ辛さを耐え続けることが必要なのです。
チケットノルマと役者の現実
僕もチケットノルマには毎度苦しみました。
チケットの売り上げのことを考えるよりも、どれだけ良い芝居をするかを考えたいのに、
僕が一時期在籍した小劇団では、芝居のダメ出しよりもチケットの売り上げについて言われることの方が多かったぐらいです。
ただ、それは僕の在籍した劇団に限ったことではなく、どこも似たような状況でしたが。
誰かにものを売るノウハウなど持っていなかった僕は、
課せられたチケットノルマをさばくには、知人に買ってもらう、観にきてもらうという方法をとることしかできませんでした。
すると結局、役者仲間にみにきて観にきてもらうことが多くなり、代わりにその仲間の公演の時には私も見に行くのです。
売れない小劇団の多くは、こうして極狭い範囲で観に行ったり観にきてもらったりを繰り返しながら、知名度が上がって集客力が上がる日を待っています。
あるいは年に数回も公演に出るとなると、知人に来てもらうことすら厳しくなります。
そういう時は自腹で買い取り、1枚2000円~4000円するチケットにノルマ未達の枚数分だけお金を支払うのです。
それで借金までしている人もいました。
小劇団の役者の現実は本当に厳しいものです。
チケットノルマ貧乏の解決策
小劇場、小劇団での芝居をつづける限り、チケットノルマをさばくための闘いと、公演をうつためにお金を稼がなくてはいけないという現実は続くでしょう。
この、役者という仕事を続けるために、他の仕事でお金を稼がないといけないジレンマを解決するための方法は、下記のようなものが考えられますが、どれも簡単ではありませんね。
①なんとかしてチケットを売り続ける
②チケット手売りに依らない集客を実現する
③スポンサーを獲得する
④自腹でもいいと覚悟を決める
⑤辞める
①の実例として、
僕が事務所に所属していた時の先輩には、公演のチケットを渋谷の通行人に声をかけ続け、ノルマ達成した人もいましたし、居酒屋に居合わせた初対面のサラリーマン数十人に買ってもらった人もいました。
それぐらいやる覚悟と行動力があれば、チケットノルマがあっても何とかクリアしていくことは出来るでしょう。
②は個人の力というよりは、劇団全体としての集客力の話です。
公演する小屋の大きさによって、何人ぐらいの集客が必要なのかは変わってきますが、劇団の公演を自発的に観にきてくれるファンだけで、必要な客数をクリアできるのであれば、自ずとチケットノルマは必要なくなります。ただし、これが出来ないから多くの小劇団にチケットノルマがあるわけですから、どの劇団もこの段階を目指しはするが長い時間がかかるというのが現実です。
③でいうスポンサーとは、企業に限ったものではなく、市町村などの行政や文化庁などが経済的な支援をしてくれる場合もあります。しかしそのためには、それ相応の実力があると認められて、支援する価値があると認められなければなりません。多くの劇団では、そうして評価してもらえるようになることを目標のひとつとしているでしょうが、実際はそこに至る前に劇団自体が解散してしまったり、退団してしまうことが多いでしょう。数ある劇団の中で、スポンサーがつくぐらいの価値を発することは簡単ではないです。
④はその通り、チケットノルマ代を自腹で支払い続けてでも芝居をやりたいと思えば、それでやり続ける覚悟を決めることです。その覚悟があって、それで良いと心から思えるのであれば、辞める必要はないでしょう。
⑤最終的には夢半ばで諦めてやめていく人が多い世界です。私もその一人でした。役者の世界は厳しい世界です。職人の世界と同じく、一人前になるまでには膨大な時間とお金が必要です。それでも情熱を絶やさずに、初期衝動を失わずに走り続けられる人は、きっと続けるべきですし、続けるでしょう。私のように、志半ばで続けられるだけの気持ちの強さを保てなくなってしまう人も多いですが、役者を経験して、また別の職業について人生を歩んでみると、案外悪くないと思えています。
やはり簡単な解決策はありません。もしあれば、これだけ長い間、小劇場界隈での「チケットノルマ」制度が続いてきていないでしょう。
今回の記事が、「チケットノルマ」貧乏に苦しむ役者の皆さんが問題を客観視して、苦しみ辛さを解消する一助となれることを願います。