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アメリカ・ロサンゼルスにあるUCLAでの一年間の交換留学から現在まで、感じたこと・経済金融などについて

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最近、昭和期の経済小説にはまっています。


もともと就職活動の時期には、商社や金融機関では、日々どのようにビジネスが行われているのか、リアルな現場のイメージを感じ取るために、黒木亮さんの作品は数多く読みました。

しかし今社会人になり、僅かながらも「会社」というものと、「それを取巻く環境や様々な登場人物」に触れることで、経済小説の持つ独特の世界観が織り成す面白さが分かるようになってきました。


最初は、黒木さんの本を読み返す程度だったのですが、高杉良、城山三郎、山崎豊子、等と時代順にさかのぼり、渉猟しています。

特に昭和期の経済小説が面白いのは、ほぼ事実をベースに、黒幕政治家や財界の実力者、官僚など、個性の強い登場人物の抗争や陰謀を描いているところにあります。
昭和期のいわゆる政官財「鉄のトライアングル」に見られる、持ちつ持たれつの癒着構造と、その当時実際に関わった人々の息づかいが聞こえてくる。


それが平成に入り、よりコンプライアンス、透明性、説明責任が厳格化し、あらゆるものがシステマティックになることで、昭和期のように圧倒的な個性を持つ人が活躍する機会は減ってしまったように感じます。総理大臣ひとつ例にとっても、昭和には田中角栄をはじめ強烈なパーソナリティを持った人が多くいましたが、平成の総理大臣で後生にも名を馳せるような人は、小泉さんくらいじゃないでしょうか。

勿論、今でも、机の上の議論だけで物事が進むわけではありません。多かれ少なかれ、影響力のある人の繋がりっていうのは、あらゆる業界でも機能しているはず。

例えば、どの総合商社も、経産省や財務省の次官、審議官クラスの人を社外取締役に迎えてます。エネルギーや金属の資源開発の規模が大きくなっている中で、どうしても一社単独で進めていくことは難しく、政官の資金的、政策的な後ろ盾がないとやっていけません。
ただ、今のほうがより、さっぱりしてるのかなとは思います。


また、徹底したリアリズムがあるのも魅力の一つです。

最近、半沢直樹がブームになりましたが、勧善懲悪の図式と、明確な起承転結があり、主人公は最終的には報われる。手に汗握り、エンターテインメント性抜群です。本自体の長さも文庫で上下二冊くらいにおさまり、映画を観たりスポーツ観戦をするような感じで読めます。

一方で、昭和期の作品、白黒はっきりつかない。読後の爽快感みたいのはない。不器用ながらも自分の信念を貫くことの登場人物の葛藤や苦悩が描かれています。
前のエントリー でも書いたことですが、結局人間の人生は起承転結があるわけではなく、終っているのか終ってないのかというようなところを永遠に繰り返す。だからこそ、自分に嘘をつくことなく、かっこよく生きていけたらいいなと思うわけです。


長々と書きましたが、

特に面白かった3作品を紹介したいと思います。


「不毛地帯」山崎豊子

言わずもがなかもしれませんが、すばらしい作品です。

商社を志す就活中の学生は是非読むべきだと思います。

まずよくもここまで緻密な情報収集をしたなと驚かずにはいられない。

ソ連、米国、イラン、と舞台が目まぐるしく変わるダイナミックさや、

綿花、航空機、船舶、自動車、石油と扱う商材もそれぞれよく説明がなされており、

勉強にもなります。


不毛地帯 全5巻完結セット (新潮文庫)/新潮社

¥価格不明
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「粗にして野だが碑ではない」城山三郎

これは伝記ものですが、丸紅の朝田さんも商社パーソン必読の書としてあげています。

その商才のセンスから、戦前の三井物産でトップとなった後、78歳の高齢で当時は誰もがなること拒んだ国鉄の総裁になった石田禮助の生涯を描いたもの。

裏表が全くなく言いたいこと単刀直入にいい、国鉄でも痛みを伴う改革に着手したにも関わらず、勤務の最後の日には、「廊下から正面玄関にかけて職員や女性職員の人垣で埋まり、さらに道路にも、その先に当時設けれられていた歩道橋にも鈴なりになっていた。」といかに人から愛されていたかが分かります。

人が資産である商社において、どうすれば彼のように信頼を集められるか考えさせられる本です。


粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯 (文春文庫)/文藝春秋

¥500
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「シルクロードの滑走路」黒木亮

「トップレフト」など投資銀行を志す学生にとって、黒木亮の必読の書がいくつかありますが、自分のお気に入りは、商社の航空機リースを題材にしたこの本です。

一進一退の交渉シーンは、リアルかつ専門用語も平易に説明されており、非常に楽しく読めます。

シルクロードの滑走路 (角川文庫)/角川グループパブリッシング
¥660
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日本ボクシング、WBOとIBFに加盟へ 4月からhttp://www.asahi.com/sports/update/0218/TKY201302180223.html




日本ボクシングコミッション(JBC)が、41日付で、未公認だった世界ボクシング機構(WBO)と国際ボクシング連盟(IBF)の2団体に加盟しました。

それまでは、王者が乱立し、タイトルの権威が下がるという理由から、世界ボクシング協会(WBA)と世界ボクシング評議会(WBC)しか認可してきませんでした。しかし、この動きは、世界の潮流から離れたもので、今まで日本のボクシング界は「鎖国」状態にあったのです。


そのため、例えば、日本人選手がIBFのタイトルを目指すには、JBCのライセンスを放棄しなければなりませんでした。これは、有望な選手の海外流出に繋がっていました。



また、国内興行が厳しさを増しているという現状もあります。

下の図はボクシングの興行における一般的な損益です。海外への渡航費やファイトマネーの相場の高さなどから、これまで海外でのタイトルマッチは敬遠されてきました。




@UCLA-ボクシングの興行損益

『変わるボクシング界 世界メジャー四団体へ』, 日本経済新聞, 4/3朝刊 をもとに作成


しかし、最近では国内でも、テレビ局などから対戦相手に注文がつくようになり、国内興行も財務的な厳しさを増してきたのが現状です。そこで、ビッグマッチのパイを増やし、より海外に目を向けるための第一歩として、二団体に加盟するというわけです。


すなわち、メリット・デメリットを整理すると、以下のようになります。

メリット:選手の海外流出の防止、国内興行が厳しさを増す中で海外への活路

デメリット:タイトル乱立(4団体17階級68人の王者)、安易な世界挑戦


そして、二つの主なデメリットを解消するために、JBCは日本ランキングの改革に着手し、「タイトルはたくさんあるけど、結局日本人で誰が一番強いの?」という疑問を解消しようとしていますし、世界タイトルに挑戦する場合は、日本、東洋太平洋、世界のいずれかでの王座獲得経験を必要とする挑戦資格を設けました。 



今後の日本ボクシング界がどう変わっていくか楽しみです。



と、ここまでは、各種メディア等でも取り上げられていることを簡単に整理してみました。

で、今回少し掘り下げたいのは、この「国内興行が厳しくなっている」という部分。



一般的に、ボクシングなどの格闘技(相撲なども含む)における興行は、チケットの分配であったり、会場等その土地における地ならし、用心棒として、暴力団との関係が強いことはよく知られています。

参考:相撲界や芸能界より根深い? ボクシング業界と暴力団の関係

http://news.livedoor.com/article/detail/5853361/



総合格闘技PRIDEが暴力団との関係を週刊現代に暴かれたことを発端に、フジテレビが放映を打ち切り、消滅したことは記憶に新しいはずです。



そして、昨今、暴対法による取締りが非常に厳しくなっており、大相撲における暴力団が関わった八百長問題も拍車もかけ、格闘技などの興行が暴力団と距離を置こうとする動きがあるのも事実です。



そのため、今回の加盟によって、日本ボクシング全体がより海外に目を向けるようになり、透明性が高まるのではないかと思います。アメリカなどでは、ボクシングは巨大なマネーが動くビジネスである一方、資本主義の原理が浸透しています。

ちなみに、日本ボクシング協会は、一般財団法人で、HPを見てもバランスシートが出てこないので、どうやら会計開示義務はないようです。

ただ、こういう見えないお金を介した癒着構造は、実は日常のあらゆるところに潜んでいるわけで。

例えば、数年前、京都に行ったときに、お寺のお坊さんが共産党のビラを配っていたのには驚きました。ただ、これはよくよく調べると、共産党が京都の景観を守ろうとしてるかつ、その唯物論的無宗教観から、特定の宗教との繋がりがないことが支持されている理由の一つだと知りました。
勿論、お寺などの宗教法人は、非課税です。

また、芸能関係者に○○学会員が多いのも、その多数の○○学会員を背景にした仕事の紹介や興行などにおけるチケットの手配を行ってくれるからです。

サントリーがグローバル企業にも関わらず、いまだに未上場なのも、オーナーである一族の力が非常に強いということがあげられると思います。上場すれば財務などの開示義務と説明責任が生まれてしまうため、彼らにとっては経営の透明性を高めなければなりません。
そこで、その批判の矛先をずらすために、サントリー美術館などの文化や芸術の振興を支援していると言われています。




 世の中は、決して開けてはいけないパンドラの匣で満ちているのではないかと、最近思うのです。

普段あまりTVはみないんですが、そんな中、好きなジャンルがあって、それがスポーツドキュメンタリー。


特にNHKのスポーツドキュメンタリーは大好きです。大学一年生の頃は、NHKが大好きで入りたい企業ナンバーワンだったし、二年生の時には授業の一環で、ホームレスの就労問題を題材にしたドキュメンタリー映画を作りました。

 

話を本題に戻すと、ドキュメンタリーの中でも、スポーツってメッセージの訴求がしやすい分野で、一人の選手に焦点を当てながら、その選手の苦悩とそれをどのように克服していくかっていうストーリーが描かれている。

構成自体は、至極シンプルなんだけど、いとも簡単に心打たれてしまう。

その選手が抱える悩みは、自分が普段日常生活で感じるものと本質的には似ていて、挫折や失敗を乗り越えながらも、決してあきらめずに挑戦していく姿に、自分も負けてられない、とモチベートされる。

誰もが何かしらのスポーツを原体験として持っているっていうのも、心に響く理由の一つとしてあるかもしれません。



 もともと、スポーツドキュメンタリーが好きになったのは、「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見たのがきっかけ。

当時、高校のサッカー部で一つ上の学年のメンバーに選ばれるようになった自分が、中々まわりの要求水準や期待に応えられずに悩んでいたときに、ちょうど清水商業の大瀧雅良監督の回がやっていました。

その回では、大瀧さんは、壁にぶつかっている生徒を、「がむしゃらにやればきっと何かがつかめる」と、あえて試合に出します。

その回は擦り切れるほどみて、自分も思い悩んでいるだけじゃダメだと、必死に練習しました。



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今でも、「アスリートの魂」はほぼ毎週みてるし、その他民放でやる特集なんかもたまにみます。 


最近みたものだと、NHKでやっていた「世界最強伝説 ラスベガス世紀の一戦」という1/27に放送されていたもの。

ボクシングの本場アメリカで6階級制覇(体重差20kg)という前人未踏の偉業を成し遂げたマニー・パッキャオ。


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フィリピンのミンダナオ島のジャングルで極貧から身を起こし、金銭的支援にとどまらず国会議員にも立候補、政治家として貧困と立ち向かう姿が描かれています。そんな中、老いと階級を越えた戦いのためのオーバートレーニングがたたり、かつてないほどキレを失ったパッキャオは、引退もささやかれる中で、12月に行われた、宿命のライバル、ヒスパニックの英雄マルケスとの世紀の対戦を行います。


ハイライトは、KO負けして失意の中フィリピンに帰国する彼を大歓声で迎える国民たち。

「母国を支えているつもりでいたが、自分が支えられていることに気付いた。」

ありきたりだけど、スポーツって負けて初めて気付くことがあるなーと、涙腺崩壊。



ただ一方で、実際の人生がこんなにドラマティックかっていうと、そんなことはなくて。


「黒冷水」を書いた作家の羽田圭介さんが、インタビューで、小説の意義について、問われて、

「人間の生活というのは起承転結があるわけではなく、終っているのか終ってないのかというようなところを永遠に繰り返すと思うのですが、それこそが、人物が生きて書かれてる証なんじゃないかなと思うんです。」

っていう風に答えていて、本当にその通りだなーと。



壁を乗り越えたり、ターニングポイントとなる瞬間って中々、ここだ!って断言できない。

無我夢中で頑張ってたら、なんとなく、あ、状況好転してるかも、って事後的に気付くわけです。

 
4月からいよいよ始まる社会人生活、まさにそんなことの連続なのかなって思います。