凄く喉が乾いた夜に
耐えきれず起き出して
勢いよく水をがぶ飲み
するとこがある
飲まなければ死んでしまうのではないか
というくらい
必要に迫られ水を飲む
肉体的には勿論だけれど
それよりも恐らく精神的に
逼迫して水を欲している
あまりの勢いに手が震え
注いだコップから水がこぼれ
唇の端から水が溢れて
首を伝い
パジャマの中に
ひんやりとした滴が滑り落ちても
気にせず野性的に
水を貪り飲む
大量の水を体内に納めて
キッチンの蛍光灯と
冷たいシンクに手をついて
はぁと大きくため息をつく
これでもう大丈夫だ
もう大丈夫だ
私はこんなにも渇いていたのだ
夕方に、家族でぶらりと訪れた書店で
娘の好きな本やドリルを選びながら
「本が欲しい、」とこぼした私に
夫が買ってくれた
西加奈子さんの「おまじない」
普段はね、あのね、ええと、
最近は本を読む時間はないし
買うとしても
リサイクルショップで買うんだけどね、、
江國香織さんはレースの砂糖みたいに
紅茶の上ですぅっと溶けていくような
女性らしい文章が昔から大好きで
角田光代さんの書く文章も
梨木香歩さんの小説も好き
原田マハさんは絵画に詳しくて
西加奈子さんの小説はね、なんていうか、大胆で、えっとえっと、昔の下北沢みたいな
彼女も絵を描くし、多分同じくらいの子供がいるの…
買ってもらえないおもちゃやの前で
自分の好きな物を
一生懸命親に説明している様な子供みたいだなと思った
夫はいつでも欲しいなら買ってあげる
というけれど
私が「やっぱりいい」という
けれど何故だか今日は
「欲しい、西加奈子も
江國香織も両方欲しい」
と2冊ともレジに持っていった
夫は、
「この人達はこれで仕事をしているんだから、ちゃんと本屋さんで買ってあげるのは大切だ」と言っていて
本当にそうだなと思った
娘は「とけいのよみかた」
ドリルを買ってもらい
病院を頑張ったご褒美に、
夫にがちゃがちゃを回させてもらった
私は2冊も小説を手にして
正直凄く嬉しかった
紙で字を読むのは
仲の良い友達と直接あって話すような物だ
画面を通さない縦書きの活字が
頁の手触りが
頁の厚みで分かる現在地が
体験として心地よいのだ
昼御飯が遅かったので
まだお腹がすいていなかった
そのままバスに乗っても良かったのだが
「ねぇ、今から小一時間お茶をしよう?娘はドリルをやって、私は本を読んで、あなたは携帯で好きなことをして」
「だって、えんぴつがない」
「えんぴつは売っているし、私はたった今えんぴつ削りを買ったところなんだよ」
手元にえんぴつ削りがある奇跡に感動して
全員が納得して顔を見合わせると
特に私と娘はあまりに嬉しくて
スキップのような小走りに
えんぴつとけしごむを買いに行った
私は不器用な人間なので
ひとつのことに没頭すると
回りが見えなくなる
子供が生まれてから
最優先はいつも娘で
子供を見ながら読書をするという
楽しみを中途半端になってイライラするくらいならとすっぱり諦め捨ててしまった
あんなにふやけるほど
湯船に浸かり
毎日何時間も
本を読み耽ったのに
子供が生まれてから
私の頭からどんどん言葉がこぼれ落ちて
日常生活でも、小さな娘と簡単な言葉だけを使うようになり
自分の思っていることを上手く言葉に出来ずに
もどかしく本当はずっと苦しかった
携帯ではそれなりに
文章を読んでいたはずなのに
不思議と言葉の栄養にはならなかったのだ
今夜は夫から時間を貰って
(と言っても、夫はなんだかんだと上手にちょこちょこ抜け出して一人の時間を作るのだが)
一気に本を読んだ
読んだというよりは
ある種暴力的に
活字を一気に貪った
あっという間に読み終えて
久しぶりに集中できて
心がすっきりした
同時にこんなにも本を読みたかったのか
文章を必要としていたのかということに気付いた
あまりに喉が渇いていたので
どんな味だったか
正直、細かいところまで覚えていない
ただ、あまりにも必要で
読了後にはぁと大きなため息が出た
こんなにも言葉を必要としていたんだ
全然気がつかなかった
正直、まだ大丈夫じゃないけれど
私にはまだもう一冊江國香織がある
2冊とも万が一邪魔されても大丈夫なように
頻繁に息つぎが出来るような
サイズ感の物語がいくつも詰まった本を選んだ
私は致命的に不器用だ
一度にひとつのことしかできない
だから、諦めて捨てた読書ができたとき
とても感慨深かった
というはなし
絵画展のお知らせ
Germeny Regen
「kunst aus Japan」
2020 「KÜNSTLER der GALERIE KALINA 2020」
「ギャラリーカリーナ2020年度アーティスト」選出
1984 東京生まれ
【展覧会】Exhibition
2018「Artistes Du Monde in Cannes2018」
EXPOSITION INTERNATIONAL D’ART CONTEMPORAIN
「国際現代美術展覧会」カンヌ、フランス
2019 「kunst aus Japan」GalerieKalina、レーゲン、ドイツ
2020 「kunst aus Japan」
Galerie Kalina レーゲン、ドイツ
「Family Love」
Grand Arbre 東京 日本
【受賞歴】Award history
2019 「KÜNSTLER der GALERIE KALINA 2019」
「ギャラリーカリーナ2019年度アーティスト」選出
2020 「KÜNSTLER der GALERIE KALINA 2020」
「ギャラリーカリーナ2020年度アーティスト」選出
【メディア】Media
2018 『Nice matin』新聞 フランス
2019 『Bayerwald-Bote』新聞 ドイツ
2020 『Coctel Art Magazine』インタビュー スペイン
【出版】Published
2007 「そるあなsolana」小説・描き下しイラスト春日出版
うたのおねえさんやMC、ナレーションをしていました
