ツール・ド・フランス2021
7月21日(木)
ステージ18
ルルドからカテゴリー超級のオタカム頂上までのピレネー山岳最終区間143.5km
優勝は、
18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク)
独走で2勝目。(ステージ18でゼッケン18が優勝・・・・)
すでに開幕から3週間が経過。
ここまで2日間ピレネーの厳しい山岳でバトルを繰り広げてきた選手たちが、最後の力を振り絞って、ピレネーの最終山岳決戦に挑む。
キリスト教の巡礼地ルルドを出発し、60km弱の平坦区間を走ってから無慈悲な山岳区間が登場する。
合計獲得標高4,036mを稼ぎ出す超級→1級→超級という難関山岳3連発。
まずは超級山岳オービスク(距離16.4km/平均7.1%)を越え、少々の登り返しとダウンヒルを経てツール初登場の1級山岳スパンデル(距離10.3km/平均8.3%)に挑み、そのダウンヒル後に超級山岳オタカム(距離13.6km/平均7.8%)に登り詰める。2014年大会の同じ第18ステージに登場し、首位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)が独走勝利で総合優勝を固めたオタカムで、今年も激しく、かつ美しい勝負が繰り広げられた。
この日はPCR検査で陽性となった過去4度の総合覇者クリス・フルームと
82. ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン34イタリア)と
62. ○イマノル・エルビティ(モビスター38スペイン)
の3名が未出走に。
レースウェアに着替えた後に陽性発覚したフルームは「残念ながら陽性になってしまった。パリでこの旅を締めくくることができずに本当に残念だ。ツールはチームと僕にとって重要なレースであり、特に踏める脚が戻ってきた中レースを去るのは締め付けられる思い」とメッセージを綴っている。
序盤60kmの平坦区間で大きなタイム差を稼げれば逃げ切りのチャンスはある。
そう考えた選手たちが鼻息を荒くしてリアルスタートを待ち、エマニュエル・マクロン大統領が同乗したディレクターカーから旗が振られると共にマイヨヴェールの
16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー)
がアタック。
逃げ切りや前待ち、ポイント賞、山岳賞など、様々な思惑を秘めた選手たちが次々と動いたことでアタック合戦が長期化した。
15. クリストフ・ラポルト(ユンボ29フランス)
を含む6名が25秒差で逃げたものの、スタート前に「今マイヨアポワを着ているとは思わなかったけれど、ここまで来たら是が非でも狙いたい。山岳ポイントを20点稼ぐことが最大の目標」と話していたシモン・ゲシュケ(ドイツ)の山岳賞を決めたいコフィディスが追いかけ、タイム差が縮まったことで次々と複数名が逃げにジャンプしたが、肝心のゲシュケはこの動きに乗れず。
平均50km/hで1時間以上を駆け抜けた末に30名以上という逃げグループが生まれ、諦めないコフィディスがひたすら追走してオービスクの登坂へ。
ゲシュケ自ら飛び出して合流を狙ったものの、先頭ではランキング3位の
172. ジュリオ・チッコーネ(トレック27イタリア)
の山岳賞逆転のために
175. ○バウケ・モレマ(トレック35オランダ)
が献身的にペースを上げたことで15秒まで縮んだ差がゼロになることはなかった。
チッコーネを先頭にオービスクを越え、夢破れたゲシュケを飲み込んだメイン集団は総合7位
124. ○ルイス・メインチェス(ワンティ30南アフリカ)
の飛び出しを許して5分弱遅れでダウンヒルへ。
フィニッシュまで43.5km地点で2つ目のスパンデル峠が始まると、逃げグループは
ファンアールトと
97. ティボー・ピノ(FDJ32フランス)、そして
22. ダニエル・マルティネス(イネオス26コロンビア)
の3名に。
UAEアシスト陣がブランドン・マクナルティ(アメリカ)だけになったメイン集団では、いよいよタデイ・ポガチャルの攻撃が始まった。
2分18秒差をひっくり返すには最終峠オタカムを待たずに仕掛けなければならない。ポガチャルはマイヨジョーヌのヨナス・ヴィンゲゴーに対して一発、また一発と攻撃を仕掛けたものの、ヴィンゲゴーはその全てを冷静に対処する安定感を見せつけ、総合3位以下を全員千切ってダウンヒルへと突入する。
ツール初登場の曲がりくねったダウンヒルでは、まずヴィンゲゴーがバランスを崩す危険なシーンを回避し、じりじりと追い詰められたポガチャルは左コーナーでのオーバーランによって落車してしまう。
酷い落車ではないことを確認していたヴィンゲゴーはすぐ再乗車したライバルを待ち、左腿後ろに擦過傷を作りつつ追いついたポガチャルが握手を求める。
スポーツマンシップで結ばれた2人は、ユンボのアシスト勢2人や
91. ○ダヴィド・ゴデュ(FDJ25フランス)
21. ○ゲラント・トーマス(イネオス36イギリス)
らの合流を許しつつ今大会最後の難関山岳オタカムへ。
超級オタカムでは先頭グループのピノが逃げ切りを目指してアタックしたが、ファンアールトのカウンターに対処できず遅れてしまう。
しかし、再びヴィンゲゴー&ポガチャル、そして
14. ○セップ・クス(ユンボ27アメリカ)
だけになっていた精鋭グループが残り5.3km地点で合流を果たす。
こうして最後の超級山岳でマイヨヴェール(ファンアールト)とマイヨジョーヌ(ヴィンゲゴー)、そしてマイヨブラン(ポガチャル)が揃った。
クスからヴィンゲゴーのアシスト役を受け取ったファンアールトの全力牽引が始まると、「落車でモチベーションが少し下がったのは確かだけど、限界まで踏み続けた」と振り返るポガチャルがついに遅れを喫した。
ヴィンゲゴーの路上ペイントが書かれた登坂路で、ユンボの2人がポガチャルを置き去りにした。
その後体力を絞り尽くしたファンアールトが遅れ、ヴィンゲゴーの独走がスタート。
集中した表情で踏み続けるマイヨジョーヌに対し、ジッパーを全開にして追うポガチャルの差は、10秒、また10秒と広げ続けた。
歯を食いしばって超級オタカムを36分32秒、ラスト8km区間を21.3km/h(ポガチャルは20.3km/h)で駆け上がったヴィンゲゴー。
最終的にポガチャルを1分04秒引き離して今大会ステージ2勝目を挙げると共に、パリでのマイヨジョーヌ着用を大きく引き寄せることに成功した。
母国デンマークのグランデパール(開幕)で涙をこぼした1996年生まれの25歳が、第11ステージのコル・ド・グラノンに続く2度目の難関山岳フィニッシュ制覇。
土曜日の40.7km個人タイムトライアルを前にポガチャルとの総合リードを実に3分26秒にまで広げることに成功している。
「インクレディブルだ。今朝はガールフレンドと娘に、今日は君たちのために勝つと伝えたんだ。嬉しいし、彼女たちのために勝てたことを誇りに思う」と、満足げな表情を浮かべながら自身初の総合優勝に向けて大きく前進した。
一方、敗れたポガチャルも素直に「一番良い負け方」とヴィンゲゴーを讃える。
「総合成績のためだけを考えていた。後悔なくレースを終えることができると思う。パリまでにあと一回勝てるチャンスがあるので狙っていきたい。落車した僕を待ってくれたヴィンゲゴーにはリスペクトしかない」と話している。
最終山岳ステージを終えて総合4位
151 ○ナイロ・キンタナ(アルケア32コロンビア )
と総合5位
91. ○ダヴィド・ゴデュ(FDJ25フランス)
が入れ替わり、
111. ロマン・バルデ(DSM31フランス)
は総合6位から8位に逆戻り。
131. ○アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ29カザフスタン)
が総合11位から9位に成績を上げている。
ステージ18 結果
① 18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク)総合1位 3:59:50
② 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア)総合2位 +1:04
③ 16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー) +2:10
④ 21. ○ゲラント・トーマス(イネオス36イギリス)総合3位 +2:54
⑤ 91. ○ダヴィド・ゴデュ(FDJ25フランス)総合5位 +2:58
⑥ 131. ○アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ29カザフスタン)総合11位 +3:09
⑦ 22. ダニエル・マルティネス(イネオス26コロンビア)
⑧ 14. ○セップ・クス(ユンボ27アメリカ) +3:27
⑨ 41. アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ26ロシア)総合8位 +4:04
⑩ 97. ティボー・ピノ(FDJ32フランス) +4:09
⑪ 124. ○ルイス・メインチェス(ワンティ30南アフリカ)総合7位
⑬ 151 ○ナイロ・キンタナ(アルケア32コロンビア ) 総合4位 +5:22
⑭ 28. アダム・イェーツ(イネオス29イギリス)総合9位 +5:34
⑰ 111. ロマン・バルデ(DSM31フランス) 総合6位 +6:40
⑲ 61. ○エンリク・マス(モビスター27スペイン)総合10位 +7:23
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
① 18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク) 71:53:34
② 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア) +3:26
③ 21. ○ゲラント・トーマス(イネオス36イギリス) +8:00
④ 91. ○ダヴィド・ゴデュ(FDJ25フランス) +11:05
⑤ 151 ○ナイロ・キンタナ(アルケア32コロンビア ) +13:35
⑥ 124. ○ルイス・メインチェス(ワンティ30南アフリカ) +13:43
⑦ 41. アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ26ロシア) +14:10
⑧ 111. ロマン・バルデ(DSM31フランス) +16:11
⑨ 131. ○アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ29カザフスタン) +20:09
⑩ 28. アダム・イェーツ(イネオス29イギリス) +20:17
⑪ 61. ○エンリク・マス(モビスター27スペイン) +24:08
マイヨヴェール(ポイント賞)
① 16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー) 451pts
② 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア) 219pts
③ 105. ○ヤスパー・フィリプセン(アルペシン24ベルギー)196pts
マイヨアポワ(山岳賞)
① 18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク) 72pts
② 73. ○シモン・ゲシュケ(コフィディス36ドイツ) 64pts
③ 172. ジュリオ・チッコーネ(トレック27イタリア) 61pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
① 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア) 71:57:00
② 25. トーマス・ピドコック(イネオス22イギリス) +49:34
③ 6. ○ブランドン・マクナルティ(UAE24アメリカ) +1:20:14