ツール・ド・フランス2021
7月9日(土)
ステージ8
ドールからスイスのローザンヌまでの186.3km
優勝は、
16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー)
今大会2勝目で、ツールでの区間8勝目
デンマーク、フランス、そしてベルギーに続き、第109回ツール・ド・フランスが通過する4カ国目は隣国スイス。
フランスのドールを出発して4級と3級山岳、スイスに入って4級山岳を越えてからローザンヌを目指す186.5kmコースは、総獲得標高2,500mほどの丘陵ステージだ。
「近代細菌学の開祖」とされるルイ・パスツールの生誕200年を祝い、その出生地であるドールの街(ツールを迎えるのは合計4回目)を出発。
ローザンヌにあるIOC(国際オリンピック委員会)本部前を通過し、最後にオリンピックスタジアムを目指して3級山岳(距離4.8km/平均4.6%)を駆け上がるレイアウトは「登れるスプリンター」あるいは爆発力に長けるパンチャー向けだ。
この日は前日に逃げた
4. ○ヴェガールスターケ・ラエンゲン(UAE33ノルウェー)
が新型コロナウイルス陽性となり、レースから離脱。幸いUAEの他メンバーには伝染しておらず、マイヨジョーヌを着るタデイ・ポガチャルらは問題なくドールの街を出発した。
全く逃げが決まらなかったここまでの2日間とは異なり、この日は散発的なアタックがパラパラと続く落ち着いたレース序盤戦となった。
山岳賞ランキングでポガチャルに1ポイント差まで迫られた
146. ○マグナス・コルトニールセン(EF29デンマーク)
が逃げを試みたものの決まらず、そのカウンターで仕掛けた
88. ○フレッド・ライト(バーレーン23イギリス)
を含む3名の抜け出しを集団は見送った。
逃げグループを形成した3名
54. ○マティア・カッタネオ(クイックステップ31イタリア)
88. ○フレッド・ライト(バーレーン23イギリス)
162. フレデリック・フリソン(ロット29ベルギー)
逃げとの差が20秒程度まで広がり、そろそろペースダウンかというタイミングで、メイン集団先頭付近では大規模な落車が発生し、複数の選手が路面に叩きつけられ、あるいは路肩の草地に放り投げ出される事態に。停止しきれず落車したポガチャルに幸い怪我はなかったものの、真っ先に落車した
118. ケヴィン・ヴェルマーク(DSM21アメリカ)
は左鎖骨骨折を負い初出場ツールからの涙のリタイアを強いられている。
総合19位、3分58秒遅れのカッタネオが逃げたため、ラエンゲンのツール離脱によって7名となったUAEチームエミレーツが許したタイム差は最大でも3分半。
この日最後のスプリント勝負を見据えるユンボ・ヴィスマとバイクエクスチェンジ・ジェイコも一人ずつアシスト役を送ってレース状況をコントロール。
46.9km地点のモンロンの街に設定された中間スプリントポイントでは、最高速60.2km/hでもがいた
105. ○ヤスパー・フィリプセン(アルペシン24ベルギー)が
16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー)
を下して13ポイント(ファンアールトは11ポイント)を獲得した。
ジュラ山脈に入り、逃げとメイン集団のタイム差が2分少々に縮まった状態で、最初の4級山岳をフリソンを先頭に通過する。
続く3級山岳はカッタネオが先頭通過し、標高1,000m台の台地に出てからスイスへと入国。
補給地点ではトレック・セガフレードのスタッフが
175. ○バウケ・モレマ(トrック35オランダ)
に渡そうとしたサコッシュに、
97. ティボー・ピノ(FDJ32フランス)
が顔をぶつけるシーンも。アイウェアに守られたピノは幸い怪我なくプロトンに復帰している。
やがて「2人のクライマーがペースを上げた時、僕になす術はなかった」と言うフリソンが遅れ、3つ目の4級山岳もカッタネオが先頭通過。
約28kmのダウンヒルを経て、スイスとフランスにまたがるレマン湖沿いの平坦区間へと入り、最後の3級山岳を目指した。
スタートからちょうど4時間に達した残り8.5km地点で、
88. ○フレッド・ライト(バーレーン23イギリス)
がカッタネオを振り切って独走に持ち込んだ。
オリンピックスタジアムを目指す距離4.8km/平均4.6%の「コート・ドゥ・スタード・オリンピック」に大歓声を浴びながら突入したライトだったが、すぐ後ろには、登坂スプリント体制を整えるメイン集団が迫っていた。
45. ○パトリック・コンラッド(ボーラ30オーストリア)
の牽引によって残り3.5kmでライトは吸収。
一列棒状で登坂を駆け上がり、モレマやレナード・ケムナが脱落するハイペースを刻む。コンラッドの「漢牽き」が残り1.5kmで終了すると、ポガチャルを連れた
5. ○ラファウ・マイカ(UAE32ポーランド)
がペースセットを引き継いだ。
マイカ、ブランドン・マクナルティ、ポガチャルのUAEトレインがリードし、その後ろでは総合2位
18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク)
がファンアールトを引き連れると共にポガチャルの動きをチェック。
マイカの牽引が残り300mで終了し、
36. ボブ・ユンゲルス(AG2R29ルクセンブルク)
のペースアップの背後でタイミングを待った
201. ○マイケル・マシューズ(バイク・エクスチェンジ31オーストラリア)
がスプリントを開始した。
2日前の第6ステージでポガチャルに負けたマシューズが「あの時の失敗から一番先にスプリントを始める必要があることを学んだ」と真っ先に加速する。
マイヨジョーヌのポガチャルこそ抑えたものの、左側からはのファンアールトが飛んでくる。アウト側からマシューズを追い抜き、完全に抜け出す圧巻の加速力でファンアールトが勝利した。
「この勝利に興奮しているよ。勝つ自信があったからこそチームにレースをコントロールしてくれと頼んだ。勝負を制することができて最高の気分だ」。フィニッシュ直後にチームメイトたちと勝利の喜びを分かち合ったファンアールトはそのように言う。「こういうステージではチームの力なくして勝利はない。ネイサン・ファンフーイドンクは一日中レースをコントロールしてくれた。彼のためにも勝てて良かった」
ファンアールトは初日から3日連続でステージ2位に入り、4日目に劇的な逃げ切りでステージ優勝。マイヨヴェールに着替えてからはアシストとして2日間を過ごしてきたが、まさにファンアールト向きの第8ステージで今大会2勝目。「ポイント賞ランキングにおいても大切な勝利だ。最後はポガチャルも総合リードのためにステージを狙ったため緊張感が高かったよ。でも、そういうプレッシャーが掛かった時にこそ、僕は力を最大限発揮できる」。
得意の登坂スプリントでまたしても2位。前回はポガチャルに、今回はファンアールトに敗れたマシューズは「正直言って自分がミスしたとは思えない。ただ僕より速い選手がいたと言うこと。残り200mでタデイとワウトが囲まれているのを見て、そのまま勝てると思っていたけれど、十分じゃなかった」と話している。
ステージ8 結果
① 16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー) 4:13:06
② 201. ○マイケル・マシューズ(バイク・エクスチェンジ31オーストラリア)
③ 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア)
④ 165. アンドレアス・クロン(ロット24デンマーク)
⑤ 143. アルベルト・ベッティオル(EF28イタリア)
⑥ 41. アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ26ロシア)
⑦ 77. バンジャマン・トマ(26フランス)
⑧ 18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク)
⑨ 36. ボブ・ユンゲルス(AG2R29ルクセンブルク)
⑩ 25. トーマス・ピドコック(イネオス22イギリス)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
① 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア) 28:56:16
② 18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク) +0:39
③ 21. ○ゲラント・トーマス(36イギリス) +1:14
④ 28. アダム・イェーツ(イネオス29イギリス) +1:22
⑤ 91. ○ダヴィド・ゴデュ(FDJ25フランス) +1:35
⑥ 111. ロマン・バルデ(DSM31フランス) +1:36
⑦ 25. トーマス・ピドコック(イネオス22イギリス) +1:39
⑧ 147. ○ニールソン・ポーレス(EF25アメリカ)+1:41
⑨ 61. ○エンリク・マス(27スペイン) +1:47
⑩ 22. ダニエル・マルティネス(イネオス26コロンビア)+1:59
マイヨヴェール(ポイント賞)
① 16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー) 264pts
② 51. ファビオ・ヤコブセン(クイックステップ25オランダ) 149pts
③ 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア) 128pts
マイヨアポワ(山岳賞)
① 146. ○マグナス・コルトニールセン(EF29デンマーク) 11pts
② 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア) 10pts
③ 18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク) 8pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
① 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア) 28:56:16
② 25. トーマス・ピドコック(イネオス22イギリス) +1:36
③ 6. ○ブランドン・マクナルティ(24アメリカ) +7:02