ツール・ド・フランス2022
7月1日(金)開幕
ステージ1
1903年に創設されたツール・ド・フランス史上、最も北の遠い都市
北欧デンマークの首都コペンハーゲンから開幕。
コペンハーゲン市街地で、13.2kmの個人タイムトライアル
フランス国外でのグランデパール(開幕)は合計10回目。
コロナ禍によって1年、五輪やサッカー・ヨーロッパ選手権でもう1年延期となったデンマークは記念すべき10ヶ国目。
首都に設定された13.2km特設コースを舞台に、2017年以来となる初日個人タイムトライアルが催された。
ランゲブロ橋やランゲルニエ埠頭の「人魚姫の像」、アマリエンボー宮殿などコペンハーゲンが誇る観光名所を通過し、コースディレクターが「完全なタイムトライアルスペシャリスト向け」と呼ぶコースは確かに平坦基調ではあるものの、減速を強いられる鋭角コーナーも含めてカーブが25ヶ所以上も存在する。
さらに市街地特有の石畳区間やスリッピーな舗装区間も含まれる上、この日は折りからの雨によってコースが濡れ、普段以上に攻めれば攻めるほど落車リスクが高まる難コンディションに仕上がった。
優勝は、56. イヴ・ランパールト(クイックステップ31ベルギー)
クイックステップは、昨年もアラフィリップがステージ1優勝。
クリスティアン・プリュドム氏の旗振りによって第1走者
214. ジェレミー・ルクロック(B&B27フランス)
が出走し、第109回ツール・ド・フランスが動き出した。
雨脚は強まったり弱まったり。前半スタートの後半スタートの選手も、ウェット加減に差はあれど、ほぼ平等に濡れた状態で「時間との戦い」に挑むこととなる。
スピードに長ける優勝候補勢がずらり揃った前半戦。
その内の一人と目されていた8番手出走
144. ○シュテファン・ビッセガー(EF23スイス)
はコーナーを攻めすぎた結果2度の落車。
オランダTT王者に輝いたばかりの
175. ○バウケ・モレマ(トレック35オランダ)
の暫定トップタイムを塗り替えたのは
101. ○マチュー・ファンデルプール(アルペシン27オランダ)
だった。
持ち前の身のこなしを武器に、濡れたテクニカルコーナーをハイスピードで駆け抜けたファンデルプールはモレマを3秒56上回る15分30秒62(平均51.1km/h) で暫定首位に立つ。
21番手出走の東京五輪個人TT金メダリストにしてマイヨジョーヌ候補筆頭の
11. ○プリモシュ・ログリッチ(ユンボ32スロベニア)
もファンデルプールにこそ届かなかったものの、15分33秒17(平均50.9km/h)を叩き出し好調ぶりをアピールした。
マイヨジョーヌ獲得に意欲を燃やしていた
94. ○シュテファン・キュング(FDJ28スイス)
は10秒以上遅れたが、もう一人のTTスペシャリスト、世界王者
24. フィリッポ・ガンナ(イネオス25イタリア)
は後輪のスローパンクに見舞われながらも圧倒的パワーで押し切り、ファンデルプールの持ちタイムを2秒64更新(15分27秒98/平均51.2km/h)してみせる。
65番手出走
16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー)
66番手出走
1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア)
とスター選手が連続スタートする中、中間計測ポイントを3秒遅れの5番手で通過したファンアールトがガンナにホットシートに座る暇を与えず5秒67上回る15分22秒31(平均51.5km/h)でフィニッシュ。
続くポガチャルもファンアールトにこそ届かなかったものの2秒48遅れ(15分24秒79/平均51.4km/h)の暫定2位で終え総合ライバル勢を一蹴。その仕上がり具合が万全であることをアピールした。
中間計測タイムを更新した
15. クリストフ・ラポルト(ユンボ29フランス)
はスリップ転倒で脱落。
ファンアールトのステージ優勝が決まったかに思えたものの、番狂わせを演じたのが105番スタートの
56. イヴ・ランパールト(クイックステップ31ベルギー)
だった。
「コーナーでは自分自身に"タイヤを信じて攻めるんだ。さもなくば数秒をロスしてしまう"と言い聞かせながら走った」と言うランパールトのフィニッシュタイムは、ファンアールトから4秒55速い驚きの15分17秒76(平均51.8km/h)。
その後ランパールトを上回る選手は現れず、後続選手の走りを見守り続けた31歳の元ベルギー王者がキャリア初のツール・ド・フランスステージ優勝とマイヨジョーヌを手に入れた。
「全く信じられないよ。こんなことを予想していなかったし、何が起きたのか理解できない。10位に食い込めればいいと思っていたけれど、どうやってか世界トップ選手たちを打ち負かしてしまった。僕はベルギーの農家の息子。こんなことは一度も夢見たことすらなかった。感情が爆発している」と、涙ながらにランパールトは言う。
パンチ力を武器に、強豪クラシックレーサーの一人に数えられるランパールト。
これまで2度個人TTのベルギー選手権を制しているが、最高峰レースでの個人TT制覇は初。加減速の多いテクニカルレイアウトを味方につけ、屈強なTTスペシャリストを打ち破って2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ第2ステージに続くキャリア2度目のグランツールステージ優勝を挙げてみせた。
2位に甘んじたファンアールトは「勝ちにきたのでイヴが僕より速かったことにショックを受けた」と言いつつ、「自分の走りには満足している。レース中も良い感じだった。コーナーでは大きなリスクを背負わなかったけれど良いラインで走れた。上手くいったし、2位という結果がそれを証明していると思う」と満足げなコメントを残している。
総合成績争いの観点では、ステージ3位に食い込んだポガチャルが早くもライバル勢から一歩リードを奪い取ると共にマイヨブランを獲得。
ユンボ勢は
18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(25デンマーク)
が15秒遅れの7位に入り、そこから1秒遅れでログリッチが8位。
イネオス勢は
28. アダム・イェーツ(29イギリス)
が23秒遅れの13位、
21. ○ゲラント・トーマス(36イギリス)
が25秒遅れ18位、
22. ダニエル・マルティネス(26コロンビア)
ㇵは44秒遅れの33位。
開催国デンマーク勢最上位は
171. ○マッズ・ピーダスン(トレック26デンマーク)
の6位だった。
191. ○クリストファー・フルーム(37イギリス)は122位
ステージ1 結果
① 56. イヴ・ランパールト(クイックステップ31ベルギー) 15:17
② 16. ○ワウト・ファンアールト(ユンボ27ベルギー) +0:05
③ 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア) +0:07
④ 24. フィリッポ・ガンナ(イネオス25イタリア) +0:10
⑤ 101. ○マチュー・ファンデルプール(アルペシン27オランダ) +0:13
⑥ 171. ○マッズ・ピーダスン(トレック26デンマーク) +0:15
⑦ 18. ○ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ25デンマーク)
⑧ 11 プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア) +0:16
⑨ 175. ○バウケ・モレマ(トレック35オランダ) +0:17(去年も9位)
⑩ 86. ○ディラン・トゥーンス(バーレーン30ベルギー) +0:20
⑬ 28. アダム・イェーツ(29イギリス) +0:23
⑱ 21. ○ゲラント・トーマス(36イギリス) +0:25
21 41. アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ26ロシア) +0:31
33 22. ダニエル・マルティネス(イネオス26コロンビア) +0:44
37 111. ロマン・バルデ(DSM31フランス) +0:45
46 151 ○ナイロ・キンタナ(アルケア32コロンビア) +0:49
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
① 56. イヴ・ランパールト(クイックステップ31ベルギー) 15:17
マイヨヴェール(ポイント賞)
① 56. イヴ・ランパールト(クイックステップ31ベルギー)
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
① 1. ○タデイ・ポガチャル(UAE23スロベニア)