ジロ・デ・イタリア2022
5月28日(土)
ステージ20
ベッルーノからドロミテ山塊のマルモラーダ(フェダイア峠)頂上までの168km
イタリアのこの辺り。
優勝は、214. アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア,UAE)
グランツール初勝利。
マリア・ローザは、カラパスから
66. ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ)の手に。
2年間への2020年大会と同じく、最終日前日にマリアローザ獲得。
最終日の個人TTでテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス)に逆転負けしたが、今回は1分25秒のマージンを持って最終日に挑む。
今大会最後の山岳決戦。
最終個人タイムトライアルを前にしたその舞台は、荘厳な岩山が続く世界遺産ドロミテ山塊が誇る3つの巨大峠。
スタート後はサン・ペッレグリーノ峠(距離9.6km/平均8%)に向けて徐々に標高を上げ、レース中盤にはチーマコッピ(大会最高地点)である超級山岳ポルドイ峠(距離11.9km/平均勾配6.6%/標高2,239m)を越える。山岳決戦を締めくくるのは2011年大会以来実に11年ぶりの登場となる1級山岳マルモラーダ(別名フェダイア峠:全長14km/標高差1,602m/平均勾配7.6%/最大勾配18%)。
ドロミテを望む平坦区間では、最後の逃げ切りチャンスを掴むべく逃げ形成のためのアタックが活発に繰り返された。緩やかな登り基調であるにも関わらずレース序盤30kmの平均スピードは45.1km/hに達し、再び
21. マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)
を含む15名の逃げグループが形成された。
逃げグループの中で総合成績最上位でも
67. レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ)
の42分52秒遅れ18位。
ケムナやファンデルプール、チッコーネという今大会既に勝利を挙げている3名や、前日逃げのちスプリントで敗れた
11. アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、AG2R)
といったメンバーが先行。
ボーラがケムナを逃げに加えた一方、マリアローザを守るイネオス・グレナディアーズは全員をメイン集団に待機させ、この15名の先行を見送った。
逃げグループはこの日最初のカテゴリー山岳である1級山岳サン・ペッレグリーノ峠(距離9.6km/平均8%)を6分リードで越え、下りをこなして標高2,239mの超級山岳ポルドイ峠(距離11.9km/平均勾配6.6%)に取り掛かる。
メイン集団では総合首位
1.リチャル・カラパス(エクアドル、イネオス)
擁するイネオス・グレナディアーズではなく、3秒差から逆転を狙う
66. ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ)
擁するボーラ・ハンスグローエでもなく、総合3位
41. ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン)
を抱えるバーレーン・ヴィクトリアスが隊列を組んでペースメイクを担った。
タイム差減少を嫌い、逃げグループからポルドイ峠序盤で仕掛けたのは
88. エドアルド・ザルデーニ(イタリア、ドローンホッパー)
ファンデルプールなど非クライマー勢が遅れ始める中、
214. アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア,UAE)
が単独抜け出しを試みた。
「ピュアクライマーではないので、ステージを獲るには早めに仕掛ける必要があった」と振り返るコーヴィは、ロープウェイ駅やレストハウスが並ぶポルドイ峠山頂を、追走グループから1分半、メイン集団から6分弱リードで越えていく。
つづら折れのダウンヒルをこなし、レース状況に変化ないまま、サプライズアタックやビッグネームの脱落もないまま、コーヴィと追走、そしてメイン集団がそれぞれ今大会最後のカテゴリー山岳である1級山岳マルモラーダ(全長14km/標高差1,602m/平均勾配7.6%/最大勾配18%)の登坂を開始した。
先頭コーヴィは緩斜面勾配が続くマルモラーダ前半区間を快調にヒルクライム。
追走グループからは
ドメン・ノヴァク(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
が単独追走に出たものの、コーヴィとの距離は10%超勾配が続く後半区間に入って思うように縮まらない。残り5kmで1分50秒、残り3kmで45秒。「脚が攣っていたけれど気にせずに登り続けた」と振り返るコーヴィは驚異的な粘りを見せてペースを維持し切った。
ジョアン・アルメイダが新型コロナウイルス陽性・離脱してからはステージ優勝狙いに切り替えていたコーヴィが、最後の難関山岳ステージで53kmに渡る独走逃げ切りを達成した。2020年に現チームでプロ入りしたコーヴィにとっては今季3勝目だが、もちろんグランツールのステージ優勝は初めてだ。
「最後の3ステージでチャンスを得たので、なんとしてもステージ優勝を持って帰りたかったんだ。アルメイダが去って以降ステージ優勝は僕たちの目標となっていた。このジロを悲しいものではなく、嬉しい記憶にしたいと思っていた。最後はフルガスだったがベストを尽くし勝つことができた」とコーヴィは語る。イタリアの名門育成チームコルパックからプロ入りしたマウロ・ジャネッティUAE代表の秘蔵っ子が、ピュアクライマーでないにも関わらず大舞台でその才能を輝かせた。
バーレーン・ヴィクトリアスからイネオス・グレナディアーズに牽引役が代わった状態で、総合上位陣は1級山岳マルモラーダの後半区間にアタックする。
6. パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス)
に守られたカラパスの後ろに残ったのは総合2位ヒンドレー、3位ランダ、総合6位ヤン・ヒルト、総合10位ヒュー・カーシーだけ。
すると12%勾配区間でヒンドレーが攻撃を繰り出した。
わずか3秒遅れのヒンドレーのアタックに対し、カラパスがすぐに食らいついた一方、ランダたちは反応できずに遅れていく。逃げグループから遅れ、マイペース走法で脚を残しながらエースの到着を待っていたケムナがヒンドレー&カラパスグループに合流し、猛烈なペースを刻んで登坂を駆け上がる。するとあまり時間を要さずマリアローザが遅れをとった。
今大会初めて見せたカラパスの失速。これを確認したヒンドレーは尽力したケムナを抜き、もう一段ペースを上げてカラパスを突き放しにかかる。明らかに不調のマリアローザはみるみる遅れ、ヒンドレーはわずか数秒でバーチャルリーダーに浮上。チームカーのハンドルを握るエンリーコ・ガスパロットの指示を聞きながら、ヒンドレーが先頭グループから遅れたメンバーを次々と抜き去りながら山頂を目指した。
「全て出し切った」と振り返るヒンドレーは区間6位でフィニッシュ。
完全にリズムを失ったカラパスはランダとカーシーに抜かれ、ケムナにも置き去りにされてヒンドレーから1分19秒遅れで山頂に辿り着く。ランダに逆転されることはなかったものの、マリアローザをヒンドレーに明け渡し、総合タイムで実に1分25秒のビハインドを背負うことになった。
ステージ20結果
各賞