米国のテーパリング(段階的な金融緩和の縮小開始)も市場は織り込んだうえ
で、米株式市場は最高値圏に安定推移。日欧株式市場も上昇基調にありましたが、
11 月下旬に突如マーケットを動揺させたのが、オミクロン株感染リスクの拡大で
す。この南アフリカで発見された変異型コロナウイルスがどの程度の感染力があ
り、既存のワクチンの有効性がどれほど損なわれるのか、など情報が不確実な現
在のような状況では、機関投資家はひとまず売っておこう、と反射的にアクショ
ンします。また最高値圏にまで上昇した株価水準に鑑みて持ち高調整に動きたい
処での丁度よい売り材料と反応した投資家も居たでしょう。
しかし以降もオミクロン株の情報は不確実な要素を抱えたままで、ここから先
は売りの連鎖が起こっての続落と言え、殊に市場に圧倒的に多い短期投機筋が下
落トレンドに入ったと見なすや否や、我先にと売り急いで損失回避行動を競う光
景はいつもの通りのことです。無論この先、足元の市場がどう動いて行くかは誰
にもわかりません。短期筋はわからないから売っておくわけで、長期投資家はわ
からないなら動かない!が常道です。相場を揺さぶる材料は、いつも突発的に発
生し、不確実な状況のなかで市場が動揺で反応したあと実態が明らかになるにつ
れて下げ止まり、やがてリバウンドへと転ずるパターンが多く、私たち長期投資
家は目先の短期筋が演じるリアクションに決して同調することなく、ファクトを
見極めてから次の行動を合理的に判断すればいいのです。
この先オミクロン株の影響が軽微だとなれば、市場は平静を取り戻すでしょう。
逆にこれが実体経済を再び停滞させる要因と判断されたなら、テーパリングの後
ずれと金融緩和の継続期待からリスクオンに回帰して、株価はポジティブな反応
に転ずる可能性もあります。要するに短期的な相場の値動きは当てられません。
長期投資の経験値が備わった人にとっては一時的な市場反応と冷静にとらえら
れても、長期投資を始めて間もない方々にとっては、言わば初めての大きなマー
ケット調整の体験で、不安感が高まっているかもしれませんが、足元の相場が荒
れている時ほど決して投資行動を変えないこと。それが長期的成果の大前提です。
暫し悪天候が続くかもしれませんが、私たち長期投資家は相変わらず泰然と進ん
でまいりましょう。
中野 晴啓