住宅に車検のようなものってあるの? | 200年住宅のススメ

住宅に車検のようなものってあるの?

車には新車購入時には3年後、その後は2年ごとに車検があります。各部を確認して痛んだ部品や安全かどうかをチェックされます。一方の家はどうでしょうか?新築住宅をハウスメーカーで購入した場合は1年点検、3年点検、10年点検のお知らせが来ますし、工務店などでも同様の点検をおこなっていますがこの定期点検は少し趣旨が違っているものが多いようです。現状のコンディションを確認する点は同じでしょうが、実はこの点検リフォームを受注する事がメインになっているようです。つまり営業活動です。点検の項目は各社でバラバラで、しかも建築をしていない業者に依頼する場合にはいい顔をされません。建てた業者じゃないと分からない部分が多いのです。図面もあって確認申請や完了検査といった検査を受けているにも関わらずです。

それは何故か、つまり住宅の重要な部分構造体や筋交いなどの耐震に関係する重要部分があやふやなのです。私も設計士ですので依頼を頂いて住宅の設計をおこない確認申請や完了検査を出させて頂いて法律に定められた基準に適合した住宅を建てさせて頂いています。構造の計算やその他の法律に適合しなければならないものは全て検討して、法令で定められた基準以上のものを創っています、しかし業務をおこなっていて問題点を感じるのは

1、 建築基準法そのものが最低基準を定めたものであり、もし最低基準で建築した場合、経年変化による強度の低下などがあれば最低基準を下回った品質になるのです。

2、 建築士が設計をした建物の場合(建築士以外が設計をおこなう事もないのですが)本来建物の強度に関する重要な項目などが実は建築士の自己の確認のみで行政では確認をおこなわないという特例措置があるのです。

3、 建築基準法で定められた基準は構造や採光といった基準であり、生活をおこなう為の品質などにはふれられていないという事でしょうか。

建築基準法の基準は粗悪な住宅が建てられないようにという目的で定められ、その後何度も改正されているのに未だに欠陥住宅は後を絶ちません。

現状に最大公約数の意見を聞いてまとめる法律の方が間に合っていないのです。問題が大きくなって初めてその問題部分だけを規制する改正がおこなわれる為にその問題の根本となった原因が解消されず、それがまた新たな問題を起こす可能性が高いのです。大手のハウスメーカーに取って都合のいい事しか法改正はおこなわれない気がします。

住宅の建材に含まれる有害物質が原因で体調を崩すハウスシックという現象が一時問題になりました(現在も解消はされていないのですが)これは建材というベニヤやフローリングや白蟻の防除の為の薬に使われている有害物質がアルミサッシなどの建具や断熱材の入った気密性の高くなった住宅で室内に放出され人体に影響を及ぼしたのです。白蟻を殺し、寄せ付けないような強い薬ですから人体にも悪影響な事は当たり前です。ハウスシックが社会問題となり建築基準法は改正されました。24時間換気という24時間室内の空気を入れ替える換気設備を新築住宅には設置しなければならなくなったのです。それとともに建材などには含まれる有害物質がどの程度空気中に揮発するかの数値にもとづいて格付けがされました。F☆☆☆☆という星印です。Fはホルムアルデヒドという有害物質を示しています。☆の数が多いほど放出量が少なく安全という表示です。このF☆☆☆☆の表示義務が課せられ家を建てる建材は全て最高ランクの☆4つになったといっても過言ではありません。しかし☆がいくつ着いていても(4つまでしかないのですが)完全にそのホルムアルデヒドが0では無いという事です。それと家に使うモノには規制がかかりましたが、家具などの家が完成してからユーザーが買ってくるものにはこの規制が無いのです。ですから対処料法的に24時間の換気設備が義務付けされています。誰も有害な物質を出す建材を無くしたり、有害物質をゼロにしたり、気密性を少し落として昔の家のように換気扇を使わずして空気が入れ替わるような家作りを提案しないのです。作り手がなぜおこなわないのか?それはそれを使う方が安価で簡単だからです。工務店も大手ハウスメーカーが気密性の高さを宣伝するから同じように気密性を高めた家を建てるのです。確かに気密性が高いという事は冷暖房の効率は上がり、省エネになります。でも、昔の家だって負けてはいません。確かに少し寒いですが古民家など夏はエアコン無しでも自然の風が気持ちよく通って気持ちいいですし、逆に寒いときはもう1枚洋服を余分に羽織ればしのげますし、夏はエアコンより扇風機の方が夏バテしない体が作れると思います。どうしても寝苦しい熱帯夜の時だけエアコンを使えばいいのです。

ハウスシックの問題事態、自然素材ではなくビニールクロスや集成材、新建材といわれる工場で生産された資材を使いだしてから出て来た問題で、新建材を使わなかっても家は建ちますし、家具だって無垢の木を使った家具ならば何世代に渡っても使えるのです。

作り手の効率化や利益などの都合だけで住む人の事を考えていない家が多すぎるのです。

欠陥住宅と言えば地域の工務店が建てた家ばかりが報道されますが、果たして建築士やハウスメーカーが建てた家に欠陥住宅は無いのでしょうか。実はハウスメーカーの家にも欠陥住宅はあります、しかしマスメディアやテレビはハウスメーカーから広告やCMをスポンサーとして提供してもらっていますのでお得意様の悪口は報道できないのです。設計士の住宅にもむろん欠陥住宅はそんざいしますが、設計事務所自体の建てている棟数もすくないのでマスメディアもセンセーショナルでインパクトの大きなものを取り上げたいのであまり表には出てこないのです。

たぶん欠陥住宅の発生の度合いは工務店、ハウスメーカー、設計士とも同じぐらいだと思いますし、件数でいうと多分建築棟数の一番多いハウスメーカーだと思います。

プレハブの住宅ではなく木造住宅でベイツガの土台、合板のフローリング、基礎の高さが最低基準の300mm、そしてビニールクロスとプレカットが私は木造住宅をダメにしたポイントだと思います。

土台とは家の総重量をコンクリートの基礎に伝える大切な部分です。そこに白蟻に弱く、日本の気候風土に合わない外国の柔らかいベイツガという木を使っています。弱い事、腐りやすい事を知っているので防腐剤を注入して使用しています。

無垢のフローリングや畳は湿気を吸うので夏場ジメジメした時に歩いてもサラサラしていて気持ちがいいものです。合板のフローリングはベニヤ板の上に紙のように薄い無垢の板を接着剤で貼っています。表面には鏡のような光沢を持つ塗装がされていたりします。中には無垢の板でなくて実に良く出来た印刷の木目のものもあります。湿気を吸わないので歩くとべちゃべちゃして気持ち悪いですし、何かモノを落とすと中のベニヤが見えるような傷になって愛着がとても湧くような代物ではありません。

日本は湿気の多い気候です。古いお寺や神社、それに古民家が何百年と経っても残っているのは地面から出来る限り高く床を話して、床下をスケルトンで風が良く通るようにしているから湿気で木材が腐らない、外から床下が見えるので白蟻などが着いたとしても早い段階で発見できた対処できるからなのです。コンクリートで家の周囲を囲って床下が見えないようにするのは何故なんでしょうか。法律でコンクリートの基礎を作らないと行けないからです。それなら出来るだけ床下の高さを高くして風通しとメンテナンスができるようなモノにしないといけないと思います。何かの本で床下の高さは1mぐらい必要というのも読んだ記憶があります。

ビニールクロスは安価で施工生がいいのでみんな使います。外国にも壁紙はもちろんありますが、海外の壁紙は、字の通り紙か布で出来ています。ビニールの壁紙は室内の湿気を吸う事もありませんし、壁の中の湿気を排出する事もありません。ビニールクロスは5年から10年もたてば黄ばんでとても味があるようにはみえません。土壁や漆喰、木の板などや最近ではケイソ土などいくらでも壁材としていいものはありますが、ビニールクロスよりコストがかかるという事で敬遠されてしまいますが、イニシャルコストだけでなくランニングコストも考えて家の耐久性を25年や30年ではなくてもっと長いスパンで考えればビニールクロスほど使い捨てでもったいないないモノは無いのです。

そしてプレカット、プレカットとはプレ(事前に)カット(加工)するという事で工場の機械を使って構造材の継ぎ手やほぞ穴などを加工してくれます。大工さんは工場で加工されたものをただプラモデルのように組み立てるだけです。技術もいりませんし、機械で加工するので精度も良く、品質のムラも無いのです。いいように思うかもしれませんが、加工するものが鉄やプラスチックなどの工業製品なら同じ品質もののが大量生産できますが、木造住宅の構造は木です。自然素材ですから同じ柱でも1本1本クセが会ったり年輪の具合や強度もバラツキがあるのです。昔の大工さんは木の年輪などを見ながら使う場所や方向を決めて使っていたのです。木は曲がったりそったり、ねじれたりしますからそれを予測して使っていたのです。柱の真ん中に年輪の中心がある柱を心持ち材といい、年輪の中心がない柱、心去り材よりも強度が強いので柱などに使いますが、年輪は綺麗な円周ではなく木が成長していた時には南側の日当りのいい方向は年輪巾が広く、日当りの悪い北側は年輪の巾が狭いのです。木材に含まれる水分が抜けてくると年輪巾の大きな方が痩せてそちら側にねじれます。プレカットの工場を私も見学した事がありますし、価格と納期の早さに負けて過去プレカットを使って建てた事もあります、その時プレカット工場で見たのは機械に柱などの木材を入れるのは年配の経験豊かな大工さんではなくてヘルメットをかぶった20歳ぐらいの若いお兄ちゃんでした。プレカットで加工した和室の柱ななどにはたまに上下が逆に加工されたサカ木といわれるモノが混じっています。木の柱は生きていたときと同じように地面に近い方は下に、葉っぱがあった上の方を上に使います。それが逆さまなのです。むろんそういったモノは交換してもらいますが、和室ではなく大壁で隠れてしまう部分の柱であれば大工さんも気にもとめないで使ってしまう場合もあるかもしれません。機械という便利なものは時として経験や知識を学ぶチャンスを奪ってしまうものなのです。

参照 http://ameblo.jp/ykawakami/