よく見れば、すべてが漏れ出していた。
よかったな、と思う。

全部だだ漏れだったのか、と。
あなたも。
あたしも。
美しいものは全部垂れ流しだったのか。
大切なものは全部漏れちゃってたのか。

汚してしまってごめんなさい。
撒き散らしちゃってごめんなさい。

お詫びに何かできればいいけど
価値あるものは何も残っていないのです。




ギラリ、と

肋骨三千余本
夜目にも白々と抜き身の刃を打ち揃え
されこうべ されこうべ
無明世界の髑髏曼荼羅

生れきざりし胎子の頭蓋
血染めの怨念武者の首
愛執地獄の心中者
樺の枝に揺れる綱
日照りの野辺の行き倒れ

海行かば水漬く屍 山行かば草生す屍
されこうべ されこうべ
無明世界の髑髏曼荼羅
逃れども 逃れども え逃れず

蝦蟇が一匹、のそり、と
見よ、二十六夜の白い角




濡れた青葉が欲するものをあたしは知らない
西風が声を詰まらせて泣くわけをあたしは知らない

あたしはただ知っている
張り裂けて、滴るもののあることを

毛皮を剥がれた野鼠の丸裸の悲しみをあたしは知らない
根腐れていく立葵が最後に捧げる太陽への祈りをあたしは知らない

すべての祈るべき祈りの言葉をあたしは知らない
すべての絶望すべき絶望についてあたしは何も知らない

あたしはただ知っている
あたしの空には
張り裂けて、滴るもののあることを




*感謝をこめて、この詩を宇佐世白さんに献げます