2017年4月19日
それから病院に電話しました。
「ご連絡頂きまして、出られなくて申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ急に申し訳ありません。生検の結果が出ました。
その事で、できれば早めにこちらにお越しいただきたいんですが……ご都合がつきますか?」
「はい。よろしければ今からでもそちらに向かえますが……」
「……そうですか。ではお越しいただけますか?受付には整形外科のKと面談と言って頂ければ、話が通るようにしておきますので。
あと、ご家族の方とご一緒にお越し願いたいんですが……」
うわガチなやつだ
「わかりました。母と一緒に行きます」
「では、お待ちしてます」
電話を切って、深くタメ息
私は結婚していません。
出会いがなかったのもありますが、結婚出産に興味なく、ずるずるこの年齢まで1人でいました。
姉と弟がいますが、姉は結婚しており、私は職場が近い実家で両親と弟と暮らしています。
一緒に暮らしてる以上、隠せるわけもなく
申し訳なく思いつつ母に、病院への同行をお願いしました。
15時ぐらいに到着した大病院
急な割り込みで待たされるかもと、覚悟していたのですが、すんなりと診察室に呼ばれて中へ。
母とK先生初対面。
挨拶はそこそこに、すぐ本題へ入る。
「針生検の結果〈悪性軟部腫瘍・未分化多形肉腫〉という珍しい〈がん〉だとわかりました」
「珍しい……どれぐらい?」
「人口10万人に約二人か三人の確率で、遺伝性のものでもないし、患者本人の不摂生が理由ってわけでもない。発生要因は判明されていない。
災害にあったようなもので、
………運が悪かったとしかいいようがない」
なんてもん引き当てたんだ私。
なぜ切開生検の時にそれが判明しなかったのか、図を書きながら先生は説明してくれました。
切開生検は皮膚と筋肉を切り開いて中の細胞を採取するんだけど、
恐らく切った部分が、がん細胞に届いておらず、なにもない細胞を採ってしまったのではないか、と
一方、針生検は深部まで針を突き刺して細胞を採る事ができるので結果が違ってしまったのではないかという事
・・・今なら。
切開生検を行った病院に「支払った金返せ!!」
とか、怒鳴りたい所なんですが
あの時はそれどころではありませんでした。
「……大丈夫?」
先生がこちらを窺う。
「……大丈夫です」
その時の私は本当に大丈夫でした。
震えもないし、涙も出ない。
っていうか。
そんな重いもん背負うことになった事に、まだ実感が沸いていませんでした。
「………じゃあ、話を続けるよ。
取り合えず、まあさんがすぐにしなければならないのは〈がんの転移がないか確かめる〉事。
次の診察予定日(4月24日)に血液検査と胸部CTを受けてもらって、
次の日の4月25日にPET検査を受けて貰いたい」
「ペット検査?」
「がん細胞に目印をつける薬剤を点滴で投与して、専用の装置で体を撮影する検査の事。
……急な話で悪いけど、仕事より今はこっちを優先してもらいたい」
「はい」
ゆっくりとこちらの様子を確認しながら話す先生。
「……で、次に治療。
がんの治療手段は三つ。
・手術
・薬(抗がん剤)
・放射線
基本は手術と抗がん剤。
治療期間は転移がなければ三ヶ月から半年になると思う」
「はい」
「……大丈夫?」
「はい……これから、よろしくお願いします」
「……はい。頑張りましょう」
頷く先生に頭を下げて、診察室を出ました。
会計へ向かう道すがら、母が「なんでこんなことに……」と漏らしたので、「ごめん」と謝る。
「まあの方が辛いでしょうが」
と、私より背の低い母は私の腕に腕を回しました。