一般的には葬儀の前日の夜に故人を偲んで勤める法要を通夜というが、本来の通夜とは、文字通り夜通し勤める法要全てを指す言葉である。寝る間も惜しんで勤めることによって、信心の深さや願いの強さを示したと考えられる。そして通夜を終えて拝む朝日に、特別な輝きを見出したのだろう。
現在の仏式の作法では、人が亡くなるとすぐに勤める枕経があり、その後改めて通夜となるが、かつては枕経を夜通し勤め、夜が明けてから葬儀を勤めていた。これは亡くなってから葬儀を勤めるまでの間、故人の魂を悪霊から守るためだったという。故人を守る為に皆が集まることによって、故人との思い出を語らう場となり、いつしか枕経と切り離されて現在の通夜の形になったとされる。
他の宗教でも通夜のような儀式は行われる。私も以前、プロテスタントの教会で通夜に当たる集まりに参加したこともある。葬儀という最後のお別れの前に、故人との思い出を分かち合いたい。そういう気持ちは人間にとって普遍的なものかもしれない。