精(しょう)入れ・精抜きについて
仏壇を購入して新しい仏像などを本尊として祀ったり、位牌や墓碑を造った時には、仏様をその中にお迎えする為に精入れをする。それらを移動させたり手を加える際には、仏様に浄土へお帰りいただく為に精抜きをする。宗派や地域によって呼び方は様々であるが、このような仏事は広く行われている。
古代インドでは形ある何かを祀るという偶像崇拝の習慣はなかったとされる。よって精入れや精抜きは元々仏教で行われていたのではなく、中国や日本で確立したと考えられる。
何かを祀ることは私達が敬う対象を明確にし、よりよいお参りをして心の安らぎを得る手助けとなる。しかし、本当は仏像も位牌も墓碑も人間の手による造形物に過ぎない。それを仏様が宿るものとして祀ることは、形あるものへの執着にもなりかねない。だから精入れや精抜きによって、ただの物と仏様の宿る大切な物を区別しているのだろう。頻繁に関わることはないが、仏教徒としての信仰のあり方を考える上で重要な仏事である。