2023年の年次有給休暇(以下、有給休暇)の取得率は65.3%と過去最高を記録しましたが、政府が目標として掲げる70%には到達していません。
そのようななか、有給休暇の取得を促進し、従業員のワークライフバランスを向上させる制度として注目を集めているのが、有給休暇の「計画的付与制度」です。
この制度は、労使協定を締結することで、企業が有給休暇の取得日をあらかじめ設定できるというものです。
従業員はためらうことなく有給休暇を取得でき、企業は計画的な事業運営が可能になるなど、さまざまなメリットのある計画的付与制度について解説します

 

制度利用で有給休暇の取得率向上に期待

有給休暇の「計画的付与制度」とは、労働基準法第39条に基づいて設けられた制度で、使用者は有給休暇のうち5日を超える部分について、労使協定に基づいて、計画的に休暇日を定めることができます。
たとえば、年10日の有給休暇が付与される従業員の場合、自由取得分の5日を除いた残りの5日が計画的付与の対象となり、年間20日付与される従業員であれば15日が対象となります。

2019年4月から施行された「有給休暇の取得義務化」により、使用者は年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、毎年5日以上の有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。
しかし、企業によっては、「忙しくて休めない」「同僚に迷惑をかけたくない」などの理由から、従業員がなかなか有給休暇を取得しきれない現状があります。
有給休暇の取得率向上は、多くの企業にとって長年の課題でした。

計画的付与制度を導入するメリットの一つに、この有給休暇の取得率向上があります。
従業員は会社が休暇日を定めることで、気兼ねなく休暇を取得できるようになります。
十分な休暇が取れれば、心身のリフレッシュを図ることができ、疲労回復やストレス軽減にもつながるでしょう。
また、有給休暇の取得が進むことで、従業員のワークライフバランスが向上し、企業に対するエンゲージメントやロイヤルティが高まることも期待できます。

一方、企業にとっては、従業員の休暇日が事前に明確になるため、業務の年間計画や月間計画を立てやすくなります。
これにより、人員配置や生産スケジュールを最適化し、業務の停滞や遅延を防ぐことができます。特に、後述する一斉付与方式であれば、業務を完全に停止させる期間を設けることで、設備の保守点検や社員研修などを効率的に実施することも可能です。
計画的な休暇取得は、業務の属人化を防ぎ、組織全体の生産性向上につながります。

つまり、有給休暇の計画的付与制度は、労働者の権利である有給休暇の取得を促し、企業側にとっても計画的な業務運営を可能にする、労使双方にメリットのある制度といえます。

業種や業務内容によって最適な方式を選択

計画的付与制度には、主に3つの付与方式があります。
事業場全体の休業による「一斉付与方式」は、企業全体あるいは部署全体で一斉に有給休暇を取得させる方式です。
代表的なものとしては、夏季休暇や年末年始休暇、ゴールデンウィークの飛び石連休を計画的付与による連続した休暇にするケースです。
製造業などで生産ラインを停止させる場合や、オフィス業務が完全に停止できる企業などでは非常に効果的な方法です。

班・グループ別の「交替制付与方式」は、サービス業や流通業など、事業を完全に停止することがむずかしい企業に適した方式です。
従業員を複数の班やグループに分け、それぞれのグループが交替で計画的に有給休暇を取得するというものです。
たとえば、Aグループが「10月1日から7日」まで、Bグループが「10月11日から17日」までといったように、時期をずらして有給休暇を付与します。
これにより、従業員の休暇取得を促進しつつも、必要な人員を確保し、事業運営を継続することが可能になります。

年次有給休暇付与計画表による「個人別付与方式」は、従業員一人ひとりの事情や希望を考慮し、個別に有給休暇の取得計画を立てる方法です。
たとえば、従業員の誕生日や結婚記念日、家族の行事に合わせて有給休暇を付与したり、閑散期に集中的に取得させたりするケースがあげられます。
企業側は、従業員からの希望を募り、業務に支障が出ない範囲で調整しながら「年次有給休暇付与計画表」を作成し、この計画表に基づいて、個人の休暇日を設定することになります。

どの方式も、企業の業種や業務内容、従業員の働き方などによって向き不向きがあるため、自社に最適な方式を選択することが重要です。

また、計画的付与制度の重要なポイントは、有給休暇の付与日数のうち、最低5日間は従業員が自由に取得できる日として残しておかなければならないことです。
計画的付与の対象となるのは、あくまで5日を超える部分のみです。
この5日は、病気や慶弔など、従業員個人の急な事情に対応するために確保されるべきものであり、労使協定で指定することはできません。

いずれにせよ、計画的付与制度は従業員にとって有給休暇の取得日を会社によって決められるという側面があるため、導入に際しては従業員からの反発や不満が生じる可能性もゼロではありません。
制度導入を検討するのであれば、その目的が、従業員の有給休暇の取得促進であることを丁寧に説明し、従業員の理解と協力を得るようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。

事務所を借りるうえで、通常は毎月一定額の家賃を支払うことになります。
事業活動の拠点となる事務所の家賃は、大きな支出の一つで、この家賃を処理するための勘定科目が「地代家賃」です。
しかし、一口に家賃といっても、その性質や支払い形態によって、経費として認められるものとそうでないものが存在します。
「地代家賃」に含まれる費用の範囲は思った以上に広く、さまざまなケースがあるので、会計処理の際は留意が必要です。
会計処理を行ううえで非常に重要な「地代家賃」について、詳しく解説します。

「地代家賃」として計上できるもの

「地代家賃」は、その名の通り、土地や建物を借りる際に支払う費用を指す勘定科目です。
具体的には、事務所や店舗、工場、倉庫、土地などの賃料などがこれに該当します。

地代家賃を会計処理するうえで大切なのは、その費用が「事業を行ううえで発生したものである」という点です。
たとえば、会社が事業のために借りている事務所の家賃は「地代家賃」として経費にできますが、社長個人の住居の家賃は、たとえ社長が会社を経営していたとしても、会社の経費としては認められません。

「事業活動に直接関係する費用かどうか」という点が重要な判断基準となり、密接に関わるさまざまな賃料がこの勘定科目に含まれます。
それでは、具体的にどのような費用が「地代家賃」として計上できるのでしょうか。

まず、最もわかりやすいのが、会社が借りている事務所や店舗の家賃です。
これは事業の拠点となる場所の賃料であるため、「地代家賃」として経費にできます。
毎月支払う賃料だけでなく、更新時に支払う更新料も、その契約更新にかかる費用として「地代家賃」や「支払手数料」として処理することができます。
なお、20万円未満の更新料は、「少額繰延資産」として全額を支払った期の費用処理が可能ですが、20万円以上の更新料の場合は、期間に応じて按分して費用処理が必要です。

次に、事業で利用している駐車場の賃料も「地代家賃」として計上することが可能です。
従業員用の駐車場や、社用車の駐車場など、事業に直接関連する駐車場の費用であれば問題ありません。
たとえば、営業担当者が顧客訪問の際に一時的に利用するコインパーキング代は「旅費交通費」として計上されることが多いですが、毎月継続して借りている月極駐車場であれば「地代家賃」として計上されます。

さらに、商品や資材を保管するために借りている倉庫の賃料も「地代家賃」に含まれます。
物流拠点として倉庫を利用している場合、その賃料は事業を運営するうえで不可欠な費用です。
同様に、特定のプロジェクトのために一時的に借りる仮設事務所の賃料や、イベント開催のために借りる会場の賃料なども、その期間の事業活動に直接関連するため、「地代家賃」として計上することができます。

また、土地の上に建てられた建物の賃料だけでなく、土地そのものを借りている場合の賃料(地代)も「地代家賃」として計上します。
自社で建物を建てるために土地を借りたり、資材置き場として更地を借りたりする場合などがこれに該当します。

地代家賃として計上できないもの

「地代家賃」として計上できる費用がある一方で、同じような賃料であっても経費として認められないものや、別の勘定科目で処理すべきものも存在します。
これらの区別をしっかり理解しておくことは、税務リスクを回避し、適切な会計処理を行ううえで非常に重要なポイントになります。

まず、前述した通り、プライベートな利用に関わる家賃は経費にできません。
たとえば、会社の代表者が自宅を事務所としても利用している場合では、事業に使用している部分とプライベートな部分を明確に区別し、事業に使用している部分の家賃のみを「家事按分」によって経費として計上することになります。
この家事按分は、使用面積や使用時間などを合理的な基準で計算し、その割合に応じて費用を按分する方法です。

また、賃貸契約に関連して発生する費用でも、その性質によって地代家賃以外の勘定科目で処理すべきものがあります。
たとえば、契約時に支払う敷金や保証金は、原則として経費にはならず、会計上は「差入保証金」といった資産の科目で処理されます。
ただし、契約書に「返還しない」旨の記載がある保証金や、償却されることが明らかな保証金については、その実態に応じて、経費計上が認められるケースもあります。

また、建物を購入した場合の代金は「地代家賃」ではありません。
建物は固定資産であり、購入した際には資産の科目で計上し、その後、税法で定められた耐用年数に基づいて毎年少しずつ「減価償却費」として経費処理していきます。
同様に、建物の購入にかかった仲介手数料なども、原則として建物の取得価額に含めて減価償却の対象となります。

事務所や店舗、倉庫、駐車場の賃料など、事業活動に直接関連する賃借費用は原則として「地代家賃」として経費計上が可能ですが、敷金や保証金、建物の購入費用、内装工事費用などは、その性質上、別の会計処理が必要となります。
税務調査などの際に指摘を受けても説明できるよう、「地代家賃」を含めた各勘定科目の内容をしっかり把握しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。

年金制度改革により、老齢厚生年金を受給している高齢の労働者が一定の収入を得ると、年金額が減額される「在職老齢年金」が見直されます。
同制度は、受給している老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が減額されるため、いわゆるシニア世代の「働き控え」が問題になっており、これを解消する目的で、減額の分かれ目となる基準額が2026年4月より引き上げられます。
基準額の見直しは、高齢者の就労意欲や働き方に大きく影響を与えるとされています。
今回は在職老齢年金の仕組みや見直される内容について、説明します。

 

老齢厚生年金カットの基準額が62万円に引上げ

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在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら働く60歳以上の労働者が老齢厚生年金を受け取っている場合に、年金と給与などの合計額が一定額を超えると、年金の一部または全額が支給停止される制度のことです。

具体的には、受け取っている年金月額と、厚生年金保険の標準報酬月額(給与など)および標準賞与額(賞与など)を合算した「総報酬月額相当額」の合計額が、一定の基準額(支給停止調整額)を超えた場合に、その超えた額に応じて年金が減額される仕組みになっています。

2025年度の基準額は51万円(2024年度は50万円)と定められており、超過分の50%が年金からカットされることになります。
たとえば、65歳の社員で、会社から毎月30万円(総報酬月額相当額)が支払われ、老齢年金を毎月20万円受け取っているケースは、基準額の51万円を超えていないため、年金がカットされることはありません。

一方、老齢年金が同じ20万円でも、会社から毎月33万円が支払われているケースでは、合計額が53万円となり、基準額の51万円を超えてしまいます。
このケースでは、超過した2万円の50%である1万円が年金からカット(支給停止)されることになります。

これまでは、この基準額を超えないよう、高齢労働者による『働き控え』が起きていました。
内閣府の調査によると、60代では約4割、70代以上でも約2割が、「年金が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く」と回答しています。

この働き控えを防ぎ、高齢者の就労を後押しするために、年金制度改革の一環として、基準額を51万円から62万円に引き上げることとなりました。
この引上げによって、年金月額と総報酬月額相当額の合計額が62万円未満であれば、年金額の一部または全部支給停止がなくなり、全額が支給されることになります。

引上げに伴う企業側の対応と準備

基準額の引上げは、高齢者の就労意欲を高める効果が期待されています。
これまで労働時間や賃金を抑えていた高齢の労働者が積極的に働けるようになるため、企業にとっては、経験豊富で即戦力となる高齢人材をより確保しやすくなるというメリットがあります。
労働時間の短縮を希望していた高齢社員がより長く働きたいと希望するようになるかもしれませんし、これまでよりも高い賃金を得たいと考えるようになるかもしれません。
企業にとっては、高齢社員の働き方について、より柔軟な対応を求められる場面が増えるでしょう。

基準額の見直しに伴い、企業としては賃金制度の見直しや雇用契約の再検討も視野に入れて動く必要があります。
高齢社員の経験やスキルを最大限に活かすために、これまでよりも責任のある業務を任せたり、新たな役割を与えたりすることも考えていかなければいけません。
年金制度の変更に合わせて、魅力的な働き方を提供できる制度設計にすることで、優秀な人材の流出を防ぎ、定着率を高めることにもつながるでしょう。

ただし、注意したいのは高齢社員の勤務時間が増えることにより、給与総額が増加し、人件費を圧迫する可能性もある点です。
特に、社員の年齢構成比が高齢側に偏っている企業ほど影響は大きくなります。
これまでは、「年金カットを避けるための賃金調整」が前提でしたが、基準額の引上げにより、その前提が崩れるため、新たな給与設計や再雇用契約の条件の再設定が必要になるケースもあります。

さらに、高齢社員の報酬増は、社会保険料の企業負担にも影響を与えます。
会計担当者は、自社の人件費シミュレーションに基づき、予算の再見積もりや年度計画の修正が必要になる可能性があることも頭に入れておきましょう。

今回の引上げは、高齢者の働き控えを防ぐためのものです。
企業にとっても、経験豊富な高齢人材の活躍を促進し、人手不足の解消や組織力の強化を図る大きなチャンスとなります。

引上げに備えるためにも、まずは高齢社員のニーズを把握するためのアンケート調査や面談などを実施しましょう。
社員一人ひとりがどのような働き方を望んでいるのかを把握することで、よりパーソナルな対応が可能になります。
たとえば、フルタイムでの勤務を希望する高齢社員もいれば、週数回のパートタイム勤務を希望する高齢社員もいるでしょう。
それぞれの希望に合わせた柔軟な働き方を提案できるように、多様な選択肢を用意しておくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。
 

税務調査の通知を受け取ると、多くの経営者は不安を感じるものです。

しかし、日頃から適 切に対応・処理していれば税務調査を過度に心配する必要はありません。今回は、税務調査の基本知識、対象となりやすい企業の特徴、事前準備、当日の対応方法について解説します。

税務調査の基本知識と対象になりやすい企業の特徴

税務調査とは、税務署が申告内容の正確性を確 認するために行う調査です。

法人や個人事業主の 帳簿類を調べ、申告漏れや誤りがないかをチェックします。税務調査には「任意調査」と「強制調査」があります。    

「任意調査」は納税者の同意に基づき、通常は事前通知があります。「強制調査」は脱税の疑いがある場合に裁判所の令状により実施されます。調査開始の1~2週間前に通知 されるのが一般的ですが、目的達成のため通知な しで行われることもあります

税務調査の対象に なりやすい企業には以下のような特徴があります。

 

①売上や利益に大きな変動がある                                                  ②業績に比べて経費が過大である                                                  ③現金取引が多い業種である                                                     ④前年と比べ経理内容に大きな変化がある                                                ⑤業種別の「標準指標」から大きく外れている

また、同業他社と比べて極端に業績がよい・悪い企業も目立ちやすく、特に業界平均より利益率が著しく低い場合は、売上未計上を疑われる可能性があります

税務調査に備えるために 事前準備と注意すべき点

税務調査では、必要書類をすぐ提示できるよう、 事前準備が不可欠です。                                          確定申告書や決算書の基本書類に加え、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、 買掛帳、預金通帳などを整理しておきましょう。

売上計上時期は重点的に確認されるため、見積書、注文書、請求書、納品書、領収書などの関連資料も重要です。

仕入や経費に関連する証憑類も欠かせません。特に交際費や旅費は支出の目的を明確にしておく必要があります。

 人件費については賃金台帳、タイムカード、雇用契約書、源泉徴収票などの準備が求められます。

 その他、棚卸表、固定資産台帳、契約書、議事録なども、必要に応じて準備しておくとよいで しょう。

 調査官が特に注目するのは、以下の項目です。

 

①売上・仕入の計上時期と処理が適正か    

②人件費内容が実態と一致しているか 

③交際費・寄付金などの処理が妥当か 

④印紙税の納付漏れがないか                                                                  調査当日は冷静に対応し、質問には事実に基づいて正確に答えましょう。困った場合は顧問税理士に相談してください。

また、不明な点は「わか らない」と正直に伝え、確認後に回答する姿勢が 重要です。

書類はすぐ提示できるよう整理してお き、迅速な対応を心掛けることで調査が円滑に進みます。 税務調査はどの企業にも起こり得ます。調査をスムーズに乗り切るには、日頃からの記帳や書類整理が何より重要です。

 

日常業務のなかで「備え」を意識しておくことで、いざというときの混乱を最小限に抑えることができるでしょう。

 

 

※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。

2027年9月から、高所得者の厚生年金保険料が段階的に引き上げられるという制度改正が予定されています。
いわゆる高所得者の「厚生年金保険料引上げ」は、一部の従業員だけではなく、企業の負担も増すことになり、給与計算や労務管理などにも影響が出る可能性があります。
制度改正は将来の年金制度の安定化を目的としており、企業としては変更内容を正確に理解し、適切な対応を準備していく必要があります。
無用な混乱を避けるためにも、早めの対策を講じておきましょう。

 

保険料引上げの狙いと引上げのスケジュール

 

少子高齢化が進む日本では、現役世代の減少と高齢者人口の増加により、年金制度を支える人が減り、年金を受け取る人が増えるという構造的な問題を抱えています。
つまり、将来的にこれまで以上の保険料収入が必要になります。
その対策として、高所得者からより多くの保険料を徴収しようというのが、2027年9月から実施予定の「厚生年金保険料引上げ」の狙いです。

また、現役世代のなかでも所得の高い層に、より多くの保険料を負担してもらうことで、所得格差による将来の年金額の差を縮め、年金制度の公平性を高めるという意図もあります。
まとめると、将来的な年金制度の安定化と、世代間の負担の公平性を確保するというのが、高所得者の厚生年金保険料引上げの目的ということになります。

現在の厚生年金の保険料は「標準報酬月額」によって32段階(第1級~第32級)に区分されており、上限も設けられています。
これまでは、一定以上の高給与を得ている従業員であっても、保険料は上限額に基づいて計算されていました。
標準報酬月額とは、厚生年金保険料や将来の年金額を計算する基礎になるもので、毎月の給与や通勤手当や残業代などの手当をもとに、「標準報酬月額表」に照らして等級が決められます。
給与ではなく、標準報酬月額をベースにするのは、昇給や減給などによって毎月の保険料が変わるのを防ぐために標準化する必要があるからです。

 

企業側の保険料負担増と従業員への対応策

 

上限額の変更は、従業員だけでなく、企業にも影響を与えることを理解しておく必要があります。
労使折半が原則である厚生年金保険料において、従業員の保険料が増加すれば、それに伴い企業の負担額も増加することになります。
たとえば、第一段階の65万円から68万円に上限が引き上げられた場合、該当する高所得者がいれば、労使の双方が年額で3万円以上の負担増になる見込みです。
当然、高所得の従業員を多く抱える企業ほど、この影響は大きくなるでしょう。

また、従業員の給与計算や社会保険の手続きにおいても、新たな上限額に対応したシステムの改修や事務作業の変更が必要となる場合があります。
企業においては、制度変更の内容を正確に把握し、適切な準備を進めることが求められます。

さらに、対象となる従業員からは、手取りの収入の減少に対して、不満が出るかもしれません。
企業としては、今回の制度変更の趣旨や影響について、従業員に対し丁寧に説明し、理解を求める必要があります。

ただし、これらの取り組みを行うには、まだ時間的な余裕があります。
今、企業として行うべきことは、厚生年金保険料引上げの対象となる従業員を特定し、制度変更後の保険料負担額を試算することです。
試算によって、企業全体の社会保険料負担がどの程度増加するのかを予測し、今後の人件費計画に反映させましょう。

厚生年金保険料における企業負担分の増加は、企業の人件費の増加に直結します。
今回の制度変更が中長期的な経営計画にどのような影響を与えるのかを検討し、必要に応じて予算の見直しや経営戦略の修正を行う必要もあるかもしれません。
従業員の理解と協力を得ながら、引上げ開始予定の2027年9月までに準備
を進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年7月現在の法令・情報等に基づいています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

2025年度の税制改正において、「先端設備等導入計画」に基づく固定資産税の特例措置の期間が、2027年3月31日まで2年間延長されることになりました。
この特例措置は、企業の設備投資を後押しし、地域経済の発展や活性化につなげることを目的としています。
今回の延長によって、より多くの中小企業が最新の設備を導入し、生産性の向上を図ることが期待されています。
ただし、特例措置を受けるには、適用要件があります。
措置の対象となっている中小企業に向けて、固定資産税の特例措置に関する具体的な内容を解説します。

 

先端設備等導入計画で導入した設備が対象

 

2025年度の税制改正は、多岐にわたる項目に及んでいますが、中小企業にとって特に注目すべきなのが、固定資産税の特例措置の延長です。
固定資産税の特例措置とは、「中小企業等経営強化税制」に基づく「先端設備等導入計画」に沿って取得した設備について、一定期間、固定資産税の課税を軽減する制度です。
従来は、2025年3月31日までに取得した設備が対象とされてきましたが、今回の改正により、その適用期限が2027年3月31日まで2年間延長されました。

そもそも中小企業等経営強化税制は、2016年5月に中小企業投資促進税制の上乗せ措置として創設されました。
中小企業投資促進税制は、中小企業が生産性を向上させる設備や、収益力を強化させるための設備などを取得した際に、その費用について特別償却や税額控除を認める制度です。
そのうえで、さらに企業の生産性向上や経営力強化を支援するために設けられたのが、中小企業経営強化税制ということになります。

それでは、今回の税制改正により延長された固定資産税の特例措置の中身を確認しておきましょう。
特例措置は「先端設備等導入計画」に沿って導入された設備に対して適用されますが、この先端設備等導入計画は、事業者が設備投資を通じて生産性の向上や業務の高度化を図るためのもので、市町村の認定を受ける必要があります。

先端設備等導入計画に含まれる具体的な設備としては、160万円以上の機械装置、30万円以上の器具備品、60万円以上の建物附属設備(家屋と一体となって効用を果たすものを除く)、30万円以上の測定工具および検査工具などがあげられます。
なお、これらの設備は、年平均の「投資利益率」が5%以上となることが見込まれるものでなくてはいけません。
投資利益率とは、投資によって得られた利益が、投資額に対してどれほど効率的だったかを示す指標のことです。
5%以上ということは、たとえば160万円以上の機械装置を取得する予定の場合、8万円以上の純利益が出せる見込みであれば、要件を満たしていることになります。
また、生産、販売活動などの用に直接供されるものであることおよび中古の設備は認められず、新品の取得でないと措置が受けられないことにも注意が必要です。

 

対象の事業者と措置を受けるための要件

 

措置の対象となる事業者は、資本金の額または出資の総額が1億円以下の法人か、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人もしくは個人事業主です。
ただし、大企業の子会社など、一定の要件に該当する事業者は対象外となる場合があります。

対象の事業者は、市町村が策定している「導入促進基本計画」に適合したうえで、労働生産性を年平均5%以上向上させる先端設備等導入計画の認定を受ける必要があります。
計画の作成には、設備の導入目的や効果、導入後の具体的な数値目標などを詳細に記載する必要があります。
計画の内容が不十分な場合や、市区村の示す要件を満たしていない場合は、認定を受けることができません。
計画の作成にあたっては、中小企業診断士や税理士などの専門家の支援を受けながら、慎重に進めるようにしましょう。

計画の認定を受けた事業者は、「雇用者給与等支給額」を1.5%以上増加すると表明した場合、対象設備の課税標準が3年間、1/2に軽減されます。
雇用者給与等支給額とは、従業員に対して支払う給与・賃金などの総額を指します。
さらに、雇用者給与等支給額が3.0%以上増加することを表明した場合は、課税標準が5年間にわたり1/4に軽減されます。

今回の改正による固定資産税の特例措置の延長は、中小企業にとって設備投資を促進する絶好のタイミングとなります。
2025年4月1日から2027年3月31日までの間に、事業用として設備を取得する予定があれば、特例措置の適用を検討してみてはいかがでしょうか。
この機会を最大限に活用し、最新の設備導入を通じて、企業の競争力強化と持続的な成長を目指しましょう。

ただし、特例措置の適用を受けるためには、中小企業等経営強化法に基づく先端設備等導入計画の策定はもちろん、対象となる設備の要件や、申告手続きについても正確に理解しておく必要があります。
適用を受けるにあたって、不明な点や不安な点があれば、専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年6月現在の法令・情報等に基づいています。

 

2023年10⽉からインボイス制度が始まったことに加え、2024年1⽉からは電⼦帳簿保存法
が改正されるなど、企業のバックオフィス業務をめぐる状況は⼤きく変化しています。今回
は、導⼊から半年以上が経過したこれらの制度について、実態調査の結果を解説します。

インボイスの導⼊により約8割が事務負担増

 2023年10⽉から始まったインボイス制度は、正式名称を「適格請求書等保存⽅式」といいます。
事業者が消費税を正しく納めるため、消費税の⾦額などを書いた請求書・領収書など(インボイス)を基に計算する仕組みです。2024年に⽇本・東京商⼯会議所が⾏なった実態調査によると、制度導⼊前に免税業者だった事業者のうち、企業間取引(BtoB)を中⼼に⾏う事業者でインボイス発⾏事業者へ登録した割合は73.3%に達した⼀⽅、消費者向け取引(BtoC)中⼼の事業者の登
録割合は24.9%に留まっています。今後の登録意向についても、インボイス発⾏事業者への登録を⾏わなかったBtoB事業者の64.0%が「登録を検討」と回答したのに対し、BtoC事業者の69.5%が「登録申請を⾏わない」としており、事業形態による対応の⼆極化が顕著となっています。なお、インボイス登録を⾒送った主な理由は、新たな事務負担や税負担の発⽣が約半数を占めています。
制度導⼊による影響については、約半数が「コスト増あり」、約8割が「事務負担増あり」と回答しています。具体的には、コスト⾯では「既存システムの改修」が32.4%、事務負担では「仕⼊先の登録状況の確認・管理」が66.0%で、それぞれ最も⾼くなっています。
現場からは「貴重な時間を奪われている」「税負担と事務負担が⼤きい」という不満の声が上がっています。また、いわゆる「2割特例」が終了した後の事業継続を不安視する声もあり、特例措置の恒久化や拡充を望む意⾒も散⾒されます。
⼀⽅で、専⾨家のサポートでスムーズに導⼊できたという声もあり、⽀援の重要性がうかがえます。

改正電⼦帳簿保存法への対応 企業規模で浮き彫りになる格差

 ⼀⽅で、改正電⼦帳簿保存法の対応状況については、企業規模による明確な差が⾒られます。今回の改正では、帳簿書類を電⼦的に保存する際の⼿続きなどについて抜本的な⾒直しがなされており、2024年1⽉1⽇以後に電⼦取引でやりとりした書類のデータ保存が完全に義務化されました。
⽇本・東京商⼯会議所の調査によると、売上規模が⼩さい企業ほど「制度をよく理解できず未対応」の割合が⾼く、⼀⽅、売上規模が⼤きい企業では、「電⼦帳簿保存」や「スキャナ保存」への移⾏が着実に進んでいます。また、改ざん防⽌措置や検索機能の確保といった技術的要件への対応に苦慮している実態も浮かび上がっています。
こういった企業規模による対応状況の差は、各企業のバックオフィス業務の体制に関連している可能性が⾼そうです。たとえば、売上⾼1千万円以下の⼩規模事業者では、経理事務について、約3割が「すべて社内で対応」と回答しているほか、約9割が「1⼈で従事」、かつ約8割が「専任の経理事務担当者がいない」としており、新制度の導⼊や制度改正に対応するための社内リソースの捻出がむずかしいことがうかがえます。加えて、事業規模が⼩さくなるほど、請求書や帳簿を⼿書きで作成する割合が⾼く、デジタル化への対応が遅れている現状があります。こういった⼩規模事業者ならではの事情により、⼩規模事業者には電⼦化対応の負荷が特に⼤きくなっている可能性があります。そのため、⼩規模事業者に対する⽀援体制の充実が、今後の課題解決のカギとなりそうです。

制度の定着に向けては、きめ細かな⽀援の継続が不可⽋といえるでしょう。

 マーケティングや営業の担当者は、取引先と交渉を行うことが少なくありません。
契約内容や価格などの各種条件は交渉によって決められますし、ケースによってはプロジェクトの成否が交渉で左右されてしまうこともあります。
マーケターや営業の必須スキルといえる交渉力を身につけるにはどうしたらよいのでしょうか。
大切なのは交渉テクニックを覚え、実践のなかで自分のものにしていくことです。
相手から有利な条件を引き出すための交渉テクニックを紹介します。

思わず受け入れてしまう心理的なテクニック
 交渉とは、異なる立場の者がお互いの要求を主張しながら、合意の到達点を探るプロセスのことです。
交渉はあくまでビジネスのためのツールでしかありません。
相手を論破するのが目的ではなく、お互いが納得できる条件で合意に至ることが目的です。
したがって、どんな交渉でも高圧的な態度や相手を見下した言動は絶対にNGです。
お互いがWin-Winのよい関係性を築くためにも、交渉の際は感情的にならず、常に誠実な姿勢で対応しましょう。

交渉に秀でている人は、相手に最大限の配慮をしながら、交渉テクニックを織り交ぜて、着地点を探っていきます。
たとえば、基本的な交渉テクニックに「ドアインザフェイス」というものがあります。
ドアインザフェイスは、相手から何かしてもらったら同じようにお返ししたいと感じる「返報性の原理」を応用したもので、最初に過大な要求をし断られた後に、それよりも受け入れやすい要求を行うテクニックです。
相手は一度断った引け目から、小さな要求であれば、受け入れる可能性が高くなります。

逆に、最初に小さな要求を受け入れてもらい、そのままの流れで、本命の大きい要求も受け入れてもらう「フットインザドア」という、一度受け入れたものは断りづらいという人の心理を利用したテクニックもあります。
状況に応じ、ドアインザフェイスとうまく使い分けていきましょう。

また、交渉の際にメリットばかりを伝えて、自社に都合の悪いデメリットを伝えていないというケースがあります。
前述した通り、交渉は誠実さが重要です。
メリットだけではなく、あえてデメリットも伝える「両面提示」は、比較検討したい相手に有効で、自身の誠実さを伝えることもできるテクニックです。
デメリットを包み隠さず伝えることで、クレームの予防にもなり、相手の信頼を獲得することができるでしょう。

危険なテクニックと誰でも使えるテクニック
 交渉テクニックのなかでも、扱いがむずかしいのが「ローボールテクニック」です。
ローボールテクニックは、たとえば、すでに合意を得ていた単価100円を後から110円にしてもらうといったように、相手が断りにくい状況にして、後から本来受け入れてもらいたい条件を示す交渉テクニックのことです。
相手は一度受け入れてしまった手前、変更後の条件も受け入れざるを得ません。

ただし、ローボールテクニックは、使い所を見誤ると相手からの信頼を失ってしまう可能性があります。
信頼関係のある友人同士や身内同士などの交渉であれば通用するかもしれませんが、ビジネスにおいては使用する場面を慎重に見極めましょう。

ほかにも、表現方法や提示方法を変えて相手の印象を変える「フレーミング」や、最初に情報や数字などの基準を提示して相手の印象を変える「アンカリング」などのテクニックもあります。
ただし、いずれも交渉を得意とする上級者が使用するもので、あまり慣れていない初心者が多用すると交渉がうまくいかないことがあるので注意してください。

交渉で効果的なのは、「ヒアリング」や「保留」といった、初めての人でも使いやすい一般的な交渉テクニックです。
まずは話に耳を傾けるヒアリングで、相手の本心を探りながら、不確定な要素を消していきます。
「その条件ではむずかしい」と言われた場合でも、価格がむずかしいのか、納期がむずかしいのか、「むずかしい」要因をはっきりと聞き出し、代替案を提案できるのがベストです。
そのためには、相手の話をよく聞く能力が不可欠です。

また、条件によっては、その場で即答できないことも出てきます。
相手から条件が提示されると思わず答えたくなってしまいますが、交渉には熟考する時間が必要なこともあります。
明言を避けて、「一度、社に持ち帰らせていただきます」などと保留することも時には大切です。

交渉は、交渉することが決まった段階から始まっているともいわれます。
相手について、どれだけ調べて、準備を行なってきたかが合意を得るうえでの重要なポイントになります。
入念に下調べをしておくことで、相手に納得感を与える提案もできるはずです。
また、事前に複数のパターンを想定したシミュレーションをしておくと、いざというときも安心です。
事前準備とシミュレーションを行い、実際の場面をイメージしておくことが交渉を成功に導く秘訣です。

 

「男女雇用機会均等法」は、職場における男女の均等な機会や待遇の確保を目的とした法律です。
同法では、婚姻、妊娠、出産などを理由とする不利益な取り扱いの禁止や、職場における妊娠・出産に関するハラスメント防止対策措置を講じる義務が定められています。
また、募集、採用、昇進などで性別を理由とした「間接差別」なども禁止されています。
間接差別とは性別以外の事由を要件としながらも、実質的に性別を理由とする差別になってしまうおそれがあるもののことです。
事業者であれば理解しておきたい、間接差別の要件について解説します。

直接差別と間接差別の違いとは
   男女雇用機会均等法では、性別に関係なく、すべての労働者に均等な機会および待遇を与えなければならないとしています。
したがって、同法の第5条と第6条では、募集や採用はもちろん、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種の変更、雇用形態の変更、退職、定年、解雇、労働契約の更新など、すべてのステージにおいての「性別を理由とした差別の禁止」を定めています。
たとえば、採用の際に男性を多く採用したいからといって、女性であることを理由に募集や採用の対象から外すことは認められていませんし、男性もしくは女性であることを理由に優先して昇進させることも許されていません。

こうした明らかな性別に基づく取り扱いの違いは「直接差別」と呼ばれます。
一方、表面上は平等な仕組みでも、運用の結果として実質的にどちらかの性別に不利益になってしまう制度や取り扱いがあります。
それが「間接差別」です。
男女雇用機会均等法の第7条では、間接差別を禁止しており、直接差別と同様に合理的な理由のない間接差別を行なった事業者はペナルティの対象となります。

もし男女雇用機会均等法に違反すると、厚生労働大臣もしくは都道府県労働局長から助言や指導、勧告を受ける可能性があります。
勧告に従わない場合は企業名が公表されるほか、厚生労働大臣から求められた報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりすると、20万円以下の過料が科せられる場合があるので注意してください。

間接差別に該当する具体的な事例
   では、どのような行為が間接差別に該当するのでしょうか。
厚生労働省令では、間接差別となる例の一つとして「労働者の募集や採用にあたり、労働者の身長、体重または体力を要件とすること」をあげています。
もし募集の条件に「身長170cm以上」という要件を設けた場合、表面上は男女差別には見えないかもしれませんが、実際には身長170cm以上を満たすのは男性がほとんどで、女性の募集を排除してしまうことになります。
このように直接的ではないけれども、実質的に差別になってしまっているのが間接差別です。

たとえば、重い荷物を運搬する業務において、業務を行うための最低限の体力の有無を採用の要件とする場合は、合理的な理由があるため間接差別とはいえません。
しかし、重い荷物を運搬するための設備や機械がすでに導入されており、業務において体力がそこまで必要ないにもかかわらず、体力や筋力の有無を採用の要件としている場合は、間接差別に該当する可能性があります。

ただし、募集する際の「ガッツのある人」「体育会系の人」といった抽象的な表現は「体力の有無を採用の要件としている」とまではいえません。
逆に、体力を要件にする合理的な理由がある場合は「○kg以上の荷物が持てる人」のように、具体的な数字を示すことが大切です。

また、厚生労働省令では「労働者の募集や採用にあたり、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること」も、一般的に女性が不利になるため、間接差別と定めています。
間接差別とならないためには、転居を伴う転勤に合理性がなければいけません。
たとえば、広域にわたって展開している支店や支社がないにもかかわらず、「転居を伴う転勤に応じることができることを要件」としていた場合は、間接差別にあたります。

こうした間接差別は、事業者側に差別の意図があったかどうかは関係ありません。
差別の意図がなくても、一方の性別に不利益が生じていた場合は、間接差別となります。

厚生労働省令であげられた2つの事例以外にも、個別に合理性が判断されるため、結果として間接差別に該当してしまうケースが存在します。
2024年5月には、一般職の女性が素材大手メーカーの子会社を相手取って起こした裁判で、ほぼ男性で占められた総合職にのみ家賃の8割を補助する社宅制度を認めているのは間接差別だという判決が出ました。
間接差別が認定されたのは、今回の裁判が初めてです。

社宅制度などは多くの企業が導入している制度でもあります。
事業者が認識していなくても、間接差別は起きているかもしれません。
法令違反や訴訟リスクを避けるためにも、事実上どちらかの性別だけに適用されている制度や取り組みがないか、現時点で確認しておくことをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。

少⼦⾼齢化などにより、企業の⼈材不⾜は深刻な問題となっています。これからは少ない⼈員のなかで、いかに⽣産性を向上させて売上・収益を上げていくかがカギになるでしょう。
今回は近年⽬覚ましく進化しているAIに着⽬し、売上向上に向けた活⽤⽅法を紹介します。

AIは企業の売上拡⼤に貢献   ⼈材不⾜解消の起爆剤となるか


  AIとは⼈⼯知能(Artificial Intelligence)の略であり、⼈間が⾏う問題解決や意思決定といった知的能⼒を、コンピューターをはじめとする機械を⽤いて模倣・再現をするもののことです。
AIの進化は⽬覚ましく、次々と新たな技術が⽣み出されています。「売上向上」に着⽬しても、AIでできることは多岐にわたり、たとえば過去の販売データや外部要因を分析し売上予測を⽴てること、個々に向けてカスタマイズしたパーソナライズドメールを作成・送信すること、商談の議事録や商品説明⽂、提案資料の作成など、その活⽤法はさまざまです。
では、なぜ売上拡⼤に「AI」が有効なのでしょうか。理由はいくつかありますが、⼤きなものとして、取り扱うデータが爆発的に増加していることや、労働の効率化が求められていることなどがあげられます。AIで処理できるデータ量は膨⼤で、それらのデータをもとにAIを活⽤した機械学習を駆使することで、売上予測に影響を与えるであろう要因や影響度合いを分析できます。
また、新型コロナウイルスの流⾏期には、その影響で、対⾯でのコミュニケーションが激減し、オンライン中⼼の⽣活になるなど私たちの⽣活スタイルは⼤きく変わりました。現在でもその影響は続き、従来の営業やビジネススタイルが⼤きく様変わりしたことで、AIを活⽤して業務を効率化することが重要視されるようになりました。
このように、企業はいかに⽣産性を⾼め、少数精鋭によって利益を上げていくかが問われており、AIの活⽤はそれを実現するための必須のツールであるといっても過⾔ではありません。

 

⽣産性向上と売上拡⼤実現に向けAIは可能性を秘めたツール

  AIを活⽤して⼤幅な作業負担軽減につなげたスーパーマーケットの事例があります。過去の販売データ・天気データ・セール情報などのデータを分析し、それを元に⾃動で発注することで、発注業務の⼿間を⼤幅に削減し、顧客満⾜度を⾼める仕事に集中できるようになりました。また、全体の売上を最⼤化するために、AIを使って、膨⼤な商品数のなかから売上効率を上げる商品の組み合わせを算出し、品揃えパターンを⽣成しているドラッグストアもあります。
AIは⼤変便利なツールであるといえますが、企業がこれを導⼊・活⽤するうえでは課題もあります。たとえば、新システム導⼊に伴う組織の対応⼒や推進⼒の不⾜、負担感が懸念されること、データを分析して課題を解決するデータサイエンティストやプロジェクトマネジャーの確保・養成がむずかしいことなどがあげられます。AIの仕組み構築に不安がある場合は、SaaSの活⽤やコンサルティングサービスの活⽤も⼀案です。
⽣産性向上・収益の拡⼤を⾒据え、AIにできることは任せて業務効率化し、売上につながるコア業務に専念できる体制を考えてみましょう。