夜の橋 「夜の橋」ー藤沢周平ーより   

 

  民次にはおきくという別れた女房がいる。ある日、そのお

 きくが民次の住まう裏店を訪ねてきたと、隣家のおかみが

 伝える。おきくは何か話があるらしい。数日して、民次は

 おきくが働いている居酒屋を訪ねてみた。そこで民次は、

 おきくが嫁に行くという話を打ち明けられる。相手は表店

 の番頭だという。元の女房のおきくが、わざわざそんな話

 をするのは民次に未練があるからだった。

  ひと月ほどして、民次は、よく出入りする賭場で、おき  

 くが付き合っているという男を目撃した。番頭にしてはや

 くざものの顔をしていた。噂によればその賭場の常連であ

 るという。民次はおきくにはふさわしくない男だと思えた。

 すぐにおきくにそのことを伝えた。さらに相手の男に直接

 会って、おきくから手を引くよう説得することにした。

 が、男は突然、凶暴化して民次に襲いかかってきた。格闘 

 のすえ、男を打ちのめした。

 後日、男がおきくから手を引いたことを聞く。また前のよ 

 うな平穏な日がもどっていた。出入りしていた賭場の胴元 

 から頼まれた仕事も断って、民次はいままたおきくよりを

 戻したいと思っていた。