はら
蒸し暑い風が背中を湿らす朝
街へたどり着いた時には既に汗だくだ
眉間にしわ寄せ通り過ぎる人並み
海に行くときのみ 夏を歓迎する大人達
発達した人類のご都合主義に嫌気が差し
とあるビル内の喫煙所へ向かった
安全面を気にしてか
はたまた時代遅れな喫煙者達を見世物にするためか
全面ガラス張りの都会の最後のサンクチャリー喫煙所
嬉しい事に その透明な箱には誰もいない
こんな汗だくの状態で 新幹線ホームの喫煙所並みに混んでいたら
耳毛までヤニくさくなる
ビルの最果てに作られた見世物小屋で一人 俺は終わりを迎える夏を憂いて紫煙をくゆらす
と
いきなりガラス張りのドアが蹴破られた
バン
ドアは激しく壁に打ち付けられ
私の静かな憩いの時間に終わりを告げた
何奴?
ふと見ると
年の頃58才位
ダブルの紺のスーツ
温水風スダレヘアー
の小さなオジサンが 仁王の様な面持ちで 俺を睨んできた
ふぅー またか trouble always find me
で
オジサンはタバコに火をつけながら すげーデカイ舌打ちをbpm150位のスピードで打ち始めた
チチチチチチチチチッ
オジサンがタバコを吸う
肺に煙を貯めながら
チチチッ
吐きながら
チチチッ
あああぁ
苛つくな
チッ
俺も舌打ちを一発
仁王が俺を見る
で
チッ
俺も
チッ
奴も
チチチッ
俺も
チチチッ
仁王の吐く息の音もでかくなる
ふうー ふうー
荒くなる
ふうーふうー
タバコの煙により可視化された仁王の匂う息が俺を包む
チッ
奴も舌打ちを更にでかくした
チッー
なるほど
デカさなら負けない
我舌王なり
ガキの頃に学んだデカイ舌打ちの出し方を未だに覚えている俺
舌を上顎に密着させ そのまま舌と上顎内の空気を吸い出す
舌の先に力を集約する
そして一気に弾く
キュンー
舌打ちを越した 舌波だ
キュンー
キュンー
キュンキュキュンー
チッ
奴のか細い遠吠えが消え入りそうになっている
しかし 仁王は苛つきがピークに達した様で赤い顔して今度はすげー貧乏揺すりをしている
タタタタタッ
既にタップの域だ
チチチッ
タタタタタッ
チチチッ
タタタタタッ
うるせえな
キュンーーキュンーキュン
舌波で撃ち殺そうとするも
チチチッ
タタタタタッ
ダブルにかき消される
さらに 鼻の中の具合が悪いのか
フゴッ フゴッフゴゴってのもやりだした
業師め
キュンー
駄目だ 虚しくなるだけだ
チチチッ
タタタタタッ
フゴゴッフゴゴッ
太刀打ちできねえな
あんたに勝ちは譲るよ
と
バン
ドアが再び開いた
別の仁王が現れた
チッ
チッ
チッ
それぞれが意思確認をしだす
キュンー
フゴゴッ
チチチッ
タタタタタッ
ギャッホ ギャッホへ ギョウショウアー
?
野郎
とんでもねえ夏風邪を運んで来やがった
無色透明な部屋で男達の真の戦いが始まった
続く?