こちらの記事にnanasiさんからお問い合わせをいただきました。

 

「いい人」今川氏真! 大河ドラマ「直虎」を面白くするVIP!(その五の上)

http://ameblo.jp/sagarasouju/entry-12174327295.html

 

nanasiさんコメント

「どのような資料からこういう情報を得られているのですか?私はもっと氏真のことが知りたいのでよろしければ参考となる資料を教えていただきたいのですが。」

 

まだまだ誤解や偏見が多くて研究の余地がある今川氏真に興味を持つ方がいらっしゃるのはとてもうれしいですね。

 

それではぼくの独断と偏見で今川氏真研究資料を紹介させていただきます。

 

 

氏真研究の第一歩として一番効率的なのはこちら!

 

山紹さん「今川家に関する歴史年表」

http://www.geocities.jp/senakamikutu/

 

山紹さん「今川家に関する歴史年表」今川家数百年の歴史を超詳細な年表にまとめた、質、量ともに最高クラスの資料です。

ほとんどの記事には出典が明記してありますので、元記事の確認もできます。

今川家について深く知りたい方はまずはこの年表で検索して、元資料にあたっていけば効率的に調査できます。

山紹さんの「今川雑記」も今川に関する考察が多数掲載されています。

 

 

氏真の生涯を描いた単著は残念ながらまだないようですが、氏真を調べるなら必ず読んでほしいのが、

 

観泉寺史編纂刊行委員会編『今川氏と観泉寺』(吉川弘文館、1974年)

 

氏真の生涯をまとめていますのでお勧め!

 

何よりも、この分厚い本は「今川氏真全詠草」として当時入手できた氏真の和歌千七百余首を収録しております!

 

誰かの人生を知る時に、その人が書いたものを読まないという手はありません!

「詠草」というと花鳥風月などばかりを詠んだ歌が載っているだけと思うでしょうが、「述懐」などといった題で氏真はしばしば自らの心境を詠んでおります。

 

残念なのは歌が詠まれた時期が分かるのは天正三年氏真詠草ぐらいであることです。

 

しかし天正三年(1575)以降の氏真の和歌を収録していますので、これを丁寧に読めば、氏真三十八歳以降の心の軌跡が分かります。

 

この詠草はまだまだ研究が進んでいないので、調査する価値が大いにあります。

 

なお、幼少期の氏真の和歌を載せたこの二冊もお勧め。

 

小川剛生『武士はなぜ歌を詠むか―鎌倉将軍から戦国大名まで』(角川学芸出版、2008年)

米原正義『戦国武士と文芸の研究』(桜楓社、1976年)

 

小川さんの本は、幼少期の氏真詠草や氏真が冷泉家から歌を学んだ様子が書かれており、米原さんの本は今川家の文芸として、氏真誕生以前から氏真の時代まで今川家の文芸の状況が分かります。

 

ただし、今川家の文芸活動には政治的側面があった事を忘れないことが大事だと思います。

 

 

 

さて、氏真の伝記ではありませんが、静岡県史は大きな流れを追う上で役に立ちます。

 

『静岡県史 通史編2 中世』(静岡県、1997年)

 

 

お父さんの今川義元の研究本も必読でしょう。

 

有光友學『今川義元』(吉川弘文館、2008年)

小和田哲男『今川義元:自分の力量を以て国の法度を申付く』(ミネルヴァ書房、2004年)

 

氏真の事績をもう少し細かいところまで追いたい人は、このブログでもよくリブログしている小和田先生の著作集がよいでしょう。

 

『小和田哲男著作集』清文堂出版、2000-2002

(1) 今川氏の研究

(2) 今川氏家臣団の研究

(3) 武将たちと駿河・遠江

(4) 争乱の地域史 西遠江を中心に

 

人の研究では満足できない、史料を直接読みたい方は、以下の四冊をどうぞ。

 

『静岡県史資料編7 中世三』

『静岡県史資料編8 中世四』

『戦国遺文 今川氏編 第3巻 第4巻』

 

氏真や周辺の人物が出した文書を読むのも勉強になります。

この時代の文書は省略も多く、判別困難な字も多いので、丁寧に読むと、学界でも知られていない新事実が発見できるかも!?

 

 

 

氏真と親交のあった人々の記録も面白いかもしれません。

 

山科言継『言継卿記』

弘治二年(1556)から三年(1557)にかけて駿府に滞在し、氏真と交流しています。

 

里村紹巴『富士見道記』 

氏真と親交があった連歌師です。

永禄十年(1567)に氏真が治める駿府に行き、歓待を受けています。

内藤 佐登子『紹巴富士見道記の世界』(続群書類従完成会、2002年)が原文に解説付きでお勧め。

 

松平家忠『家忠日記』

家康家臣で、母親が氏真の従姉妹(鵜殿長持娘)です。

氏真が牧野城主となった時、一緒に仕事をしました。

氏真のことは「氏真様」と書いて敬意を示しています。

 

 

とりあえずこんな所から始めたら良いと思います。

 

まずは山紹さんのサイトがお勧めです。

 

それから山紹さんのサイトで興味を感じた本を片っ端から読む、あるいは図書館やNacsisWebcatで「今川」で検索しまくる、雑誌『戦国史研究』を見まくるなどしていけば、あなたも今川氏真に関する専門家になるでしょう!!!

 

あ、それから小説ではありますが、更新中のぼくの小説『マロの戦国‐今川氏真上洛記‐』も是非ご覧ください。

 

小説『マロの戦国‐今川氏真上洛記‐』   

http://ncode.syosetu.com/n5953di/

 

作中で氏真公が「ヒャッハー」したり、いわゆる「赤マフラー」な所も多少ありますが、天正三年氏真詠草を楽しく読んでもらって、その内容を理解してもらいたいために書いています。

 

これを読まれた皆さんも、「この資料はいいぞ」というものが見つかりましたらコメントをお願いします!