クシマばあさん4~コマネチ大作戦 | 音楽でよろこびの風を

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世間を騒がす夫婦音楽ユニット 相模の風THEめをと風雲録

まだ、朝早いのにピンポ~~ンといしはら家のドアベルが鳴った。
誰だよ、こんな時間に。
寝巻き代わりのジャージのままドアを開けると。
いた。いや、出た。なぜそこにいる。ばばぁ。


クシマばあさんが玄関の外に立っている。
なぜか魚屋のトロ箱を抱えて、怖い顔で立っている。
『おい、うすらトンカチ。』
「どうしたんすか、こんな時間から。しかもよく家が分かりましたね。」
『80年生きておれば、わからぬことなどない!手前はまた変なこと書いたろう。
今朝になったらまたタコがなぁ、昨日以上に大量に届いたのじゃ。
なにか細工しとるに違いない。』


あ、しまったぁ。あれだよ。
一昨日。「たこさん希望」
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1690089922&owner_id=297853
昨日。 「たくさん希望」
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1690576167&owner_id=297853
またまた真に受けた人、多数らしい。
そんなに信じやすくて大丈夫か?報道とかにだまされんなよ。


というわけで、たこさんがたくさん、ばあちゃんのところに送られてきたんだ。
顔の上半分だけ笑いながら無理やり口を開いた。ごまかすしかない。
「い、いや、それはさ、ばあちゃんに魚屋さんでも開いて欲しいんじゃないかな。」
『なぜ、ワシが魚屋を開店せにゃいかんのだ。金はうなるほど持っちょるぞ。
それにたこさんしか売っていない魚屋なんぞ、日本の、いんや世界のどこにある?
それは”蛸屋”じゃろうが。』
僕はこういうとき諦めが早い。観念した。
ばあちゃんに理由を話すと
『ふん、うすらとんかちの考えそうなことよ。謝る代わりに、まずここで叫べ。』
「叫べってなにを?」
『決まっておるじゃろう。合言葉じゃ。』
来やがったぁ。ばあちゃんの家ならともかく、ここ、オレんちだぞ。
近所の手前だってあるじゃないか。
「あ、あの例のあれですよね。ばあちゃんの智恵袋...」
『そうじゃ、じいさんの、だ。』
「言わなきゃいけないんですか。あのご近所の手前もあるし。」
『アホ、純真な老人の心を(よく言うよ...)踏みにじってナニを抜かす。
わしゃ悲しゅうて悲しゅうて。保健所に訴えてやる。』
「オレは捨てイヌですか。わかりました、わかりましたよ。
とりあえず中へ入ってください。はい、玄関閉めましたね。
え、中には入るが玄関は開けたまま言え???


...わかりました。言いますよ。


息を肺の奥深くまで吸い込んだ。いくぞ~~。
「おばあちゃんの智恵袋!!おじいちゃんのキ・ン・○・マ・ブ・ク・ロ~~」
あらん限りの大絶叫。


地震とか放射能とかそういう理由ではなく、もうここには住めないかも。


『エライ。見直したぞ、うすらトンカチ。』
「おはようございます。」
『なに今更挨拶しとるんじゃ。』
「いや、何か生まれ変わったような気分で。」
『そうじゃろう、そうじゃろう。
ああいうこと恥ずかしげもなく絶叫できるようになると、いろいろ楽になるぞ。
聞いてるワシの方が恥ずかしかったわ。』
恥ずかしいと言っている割には、ニヤニヤしながら話している。
「ばあちゃん、人にあんなこと言わせておいてなに言ってんすか。もう、エラソーに。」


『あのな、今は硬直しておるのじゃ』
「は、オレのあれですか?」
『なにを見栄張っとる。この役立たずが。
そうではなくての、この地震だ、原発だで、東京近辺だけでもみんな疲れておる。
もちろん被災された方たちとは、比べ物に並んだろうがの。
しかし、この1週間での心の動く早さは凄まじいぞ。
先週の金曜の朝と今の心の位置を比べてみ』
「ほんと、エライ違いますね。地震、津波、東京界隈の人たちは、
交通機関がとまって帰るのが大変くらいで済みましたが
翌日はその地震のニュース映像にに呆然。
息つく間もなく今度は原発、放射能、ガソリンに食糧不足。
三段重ねのお重みたいにいろんなトラブル来ちまいましたからねえ。
しかもまだ真っ最中だし。」
『最初の2日くらいは気持が高ぶっておるから、その勢いだけで持つのじゃ。
じゃがな、そろそろ疲れがピークに来る人と、平常心に戻れる人と分かれてくる頃。
善意や何かしなきゃという気持も、ちょっと疲れてくる頃じゃ。そこでだ。』
「そこで?」
『たけしじゃ』
「はぁ???たけし、ってどのたけしさんですか?」
『日本でたけし、といったらまずはあの”たけし”じゃろうが。
お前だって夢中で見てたろ、たけちゃんマン。』
「ああ、あのたけしさんですか。でもこのページで呼ぼうったって無理ですよ。
有名人だし、ギャラ高いし。」
『だからうすらなのじゃ、お前は。
日本人なら誰でも知っておる笑いのアイコン、たけしを脳内で再生するのじゃ。
それならただじゃろが。』
「はぁ。」
『コマネチ知っとるな。』
「知ってますよ、もちろん。」
『やれ』
「え~、今ですか。さっき叫んだからいいじゃないですか、勘弁してくださいよ。」
『ワシしか見ておらん、なにを恥ずかしがっておる。やれ、コマネチ。
お前がやらんのならワシが手本見せようか。』
「あ~~~~、やめて、いいですいいです。そんなもん見たら目が腐るわ。
やりますよ、やります。やりゃいいんでしょ。
はい。 こ  ま  ね  ち 。いいすか、これで。」


『ぶわっかも~~~んンンン!!!!!!!!!!!!!!!』


その声の圧だけで2メートル吹っ飛んだ。放水車並みの圧力だ。
『このうすらトンカチ、こんこんちき、どてかぼちゃ、おたんこなす。
手前はたけし様の”コマネチ”をナメとんのかぁ~。
もっと気合入れてやらんかぁ。
そんなコマネチをやるやつは男の風上にも置けん。
いや、風下にも海の中にも川の中にも下水管の中にもどこにも居場所はな~~い。
はい、手をお前の役立たずの下に添えて!
斜め上45度に勢いよく引き上げて!
あらん限りの大きな声で!!!
行け~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!』



「コマネチ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!」



『エライ!それでこそ男じゃ。
その勢いでいってしまえ、ワシもやるから一緒にやれ。コマネチ百連発じゃ』
「あ、ばあちゃん、オレやりますから。腹くくりましたから。男っす。押忍!
放射能がなんだぁ。イキます。」

せぇ~~の!


「コマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチ
コマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチ
コマネチコマネチ......



コマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチ
コマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチ
コマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチ



......コマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチコマネチ


コ!マ!ネ!チ!
コマネチ~~!!


はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ。
お、おばあちゃん、やりましたよ。コマネチ百回。」
『素晴しい!!お前は男じゃ。表彰してやる。
ノーベル頑張ったで賞にも推薦しておいてやる。どんな気分じゃ?』
「はぁはぁ。なんかですねえ。道がパア~~っと開けた感じです。
スゲーですよ、これ。すっきり。なんかうつうつとしてたのがウソみたいです。すげー。」
『これじゃ。思いっきり大きな声を出してバカになって身体を動かす!
これを見ている皆のものも今すぐやるのじゃ!
え、ご近所が?
家族が?
この時期にフキンシン?
なにを世迷い言いうておる!
お前が笑えば世界が笑うのじゃ!!
お前も一緒に行け~~~~~~~~!
コ・マ・ネ・チ!!!!』


地震とか放射能とかそういう理由ではなく、もうここには住めないかも。


「ばあちゃん、これも”拡散希望”にしておきますか?」
『ふふふ』
「なんすか、その不気味な笑いは?」
『勝ったなこれで』
「なにに勝ったんです?」
『ヤシマとウエシマじゃ。』
「なにくだらない対抗心燃やしてんですかぁ~。」
こ、こんなところでめらめらしていたとは。
『”たくさん希望”って書いておけ!』


「たくさん希望」