人種差別が激しかったアメリカ南部。
中でもミシシッピ州は一際だったとされるが、そこに暮らす裕福な
白人たちと雇われていたメイドたちの日常を描いた『HELP』。
実際にこの地で育った無名の原作者と、同地出身の監督が作り
上げた映画で、特に際立った俳優がいるわけでもないのに興業
的に成功をおさめ、アカデミー賞にもノミネートされた。
うちオクタヴィア・スペンサーが助演女優賞を獲得している。
1960年代前半、裕福な白人家庭では子育てをメイドに任せ、カー
ドゲームと、名声を得るためのボランティアに精を出している。
小さいころはそんなメイド達に育てられたにもかかわらず、結婚す
ると家の中のトイレも使わせず、平気で非人道的な扱いをしてい
る白人たち。
北部の大学から戻った駆け出しライターのスキーターは、そんな友
人たちの振る舞いに疑問を抱き、この現状を本にして出版すること
を決心する。
メイドから話を聞こうとするが、普段から濡れ衣を着せられては捕ま
ったり、殺されたりする黒人たちは話すことを拒否する。
だがある事件をきっかけに出版に協力すべく自らの経験を語りだす。
悲惨な状況を描きながらユーモアも取り入れられ、この状況下でこ
れほどあっさり出版できたものなのか疑問も残るが、映画としては
よくできていて見てよかったと思える作品。
特にメイドの中心となる二人と、下層階級出身だがこの町一番の男
性と結婚し同じように差別されるシーリア役のジェシカ・チェスティン
がいい。
不当解雇されたメイドと心を通わせる食事のシーンは、人種だけで
ない差別に耐えながら生きる者同士のつながりを鮮やかにみせる。
また憎まれ役のヒリーを演じるロン・ハワードの娘ブライス・ダラス・
ハワードは昨年「50/50」にも出演していたが、今回憎まれ役に徹し
ていて出色。
この時代の人種差別については『Eyes on the prize』という非常によ
くできたドキュメンタリーがありおすすめ。
以前は日本語のナレーション付のものが限定でVHSで出されており
入手できたけれど、その後DVDにはなっていないみたい。
オリジナル版のDVDは手に入るようですが。
近代美術館で開催中の「ジャクソン・ポロック展」
床に広げた大きなキャンパスに、絵具をふりそそいで描くアクション
ペインティングでピカソを超えたと言われたアメリカの芸術家。
ポロックはトレードマークとも言える「ポーリング」という技法を確立し 、
グッゲンハイムに見出され一夜で有名になっていった。
まさにアメリカンドリームの体現者ですね。
ポーリングとは流動性の塗料を画面に流し込んで描くというもので
あるが、初期のころはネイティブアメリカンやキュビズムに影響を受
けた絵を描いていた。
初期の作品も好きだけれど、だれでもできそうで実は緻密に計算
されているポロックのポーリングはやっぱり圧倒されます。
特に壁画は大きさもあるのだけれど、迫ってくるものがあって圧巻。
ちなみにこの作品のクリスティーズの最新評価額は200億円。
世界最高額です。すごい!
しかし晩年には衰退の危機を迎える。
黒を基調とした「ブラック・ポーリング」と呼ばれるシリーズ。
これは評価されることなく、失意のうちに飲酒におぼれ結局交通事
故により44歳の短い人生をおえる。
展示の最後にはアトリエが再現されていました。
広いアメリカの大地に立つ質素な小屋。
こういうところで書かれていること自体ヨーロッパの絵描きとは違う
感じがするが、ポロック自身は「アメリカ」と特別視されることを嫌が
っている。わかる気もするけれどやっぱりこのダイナミックなところは
アメリカの絵画なんでしょうね。