アポロビルを卒業し、あべちかを彷徨うようになった頃、それと同時に高校も卒業した。


振り返れば、なんと悍ましい高校生活であったのであろうか。


たぶん人にはね…

とても充実した青春時代を謳歌していたように映っていたんだと思う。

だって、勉強はぼちぼちだけど、基本お調子者だから学級委員とかもしちゃってさ、サッカー部のキャプテンで背番号は7。偽りのプラトニックな彼女もいましたね。はい。


しかし、それとは裏腹に、

親には練習と嘘をつき、雨の日も風の日も夜な夜な暗闇の高架下に通い続けた日々。

彼女とのデートも急用が入ったと嘘をつき、待ち人が現れるかどうかもわからないアポロビルへ通い続けた日々。

なんとも、無駄な時間とお金を費やし誰にも打ち明けることのできない究極の秘密を手に入れてしまったのだ。

そして、二面性を持ったヤヌスの鏡のような高校生活は終了した。


そんな春休みの矢先、卒業打ち上げ飲み会なるものが天王寺の某居酒屋で催され未成年の集団達は人生お初にお酒を知ることになる。

確か酎ハイを3杯だったと思う。吐き気がして1人お店を出た。頭の中がクラクラし真っ直ぐ歩くことすらままならない。アルコールの怖さを初めて体感し飲むんじゃなかったと深く後悔をした。

トイレを探そうとフラフラしていると、なんと見慣れた光景が広がっている。


躊躇わずに発展トイレへ向かう。案の定小便器は満員御礼、しかしタイプがいないんだな、これが。半世紀程前の継ぎ当てされたボロボロの背広を身につけた爺さんばかり、そして全員ガリガリのヒョロヒョロ爺がキョロキョロしている。


いやだ。

一気に酔いが覚めすぐにトイレから出た。


やはり身なりがキチンとした紳士的な方はこういった場所にはいないのであろうか。

少しの間、酔い覚ましにと噴水前で人間観察する。


ん??

何か気配を感じる。

ふと横を見ればグレーのハットを召したお爺さんが僕の隣に立っていた。