「はい、3冊で1,600円ね。毎度」
これほど緊張したことはない。
当時、高校生の私には何か悪いことをしている感覚すら覚えた。
西成の薄暗い路地裏で怪しい怪しい外国人に3万円位手渡すくらいのドキドキ感だったように思う。
茶色い紙袋を小脇に抱え、そそくさと店を後にした。
早く見たい。
通ったこともないような人通りの少ない道を選び小さな公園にたどり着いた。
誰もいないブランコ横のベンチに腰掛け、紙袋から参考書に挟まれたその雑誌「サムソン」をとりだした。
そして、
ドキドキしながら1ページ目を捲った。
若いデブのふんどし姿の写真…
2ページ目、その若デブと毛深い熊みたいな中年が抱き合ってる写真…
「イーヤーーー」
なんて本を買ってしまったんだ。
それでもペラペラとページを捲ってみると、
その瞬間、僕の手が震えた。
白髪で色白、ちょいぽちゃの6.70代の紳士おじいちゃんが「お待たせ!」と言わんばかりに登場した。
なんてこった。
僕の知らなかった世界。
寒空の下、何時間もの間、食い入るように写真だの小説だの漫画だの文通コーナーだの暗記するくらい見ていたと思う。
気がつけば日が暮れかけていた。
どうしようこの本…
自宅には100%隠しきれる場所はない。
悩みに悩んだあげく、とある高架下の鉄橋下の僅かな隙間に隠した。
探検〜♪発見〜♪僕の趣味〜♫
なんかね、救われた感じがしました。
一人じゃなかったんだ。
そして自覚しました。