もう数か月前になりますが、「ホピの予言」という映画を見る機会がありました。自然と共に生きていたアメリカンインディアン達の生活に、19世紀以降アメリカ政府
は暴力的に立ち入り、第2次世界大戦中は、彼らにウラン発掘の作業を強要します。
アメリカは、始めウランをアフリカのコンゴから輸入していたそうですが、ニューメキシコ州、アリゾナ州、コロラド州などのアメリカンインディアンの土地にウランが豊富に埋もれていることが解ると、次第に国内で調達するようになります。日本人にとっても大人気な観光スポット、グランドキャニオンだけでも約40か所のウラン採掘場所、周辺の採掘鉱山を含めると約100か所あったそうです。そしてそこには精錬所も次々と建てられ、放射性物質は川に流され、日常の生活環境ー空気も水もーは有毒物質で汚染されます。ウランの危険性も知らされず、発掘を続けた結果、心身ともに病んでしまった多くのインディアン達。その環境の中で生活を営む住民達は、癌になり、或いは死に、そうでなくても後遺症が残り、それは奇形の次の世代を生み出すことにもなりました。「自分達が取り出していたウランがまさか、日本で原子爆弾として落とされるとは。。。」と苦悩に満ちた思いを吐露していた場面がありましたが、自分達も同じように犠牲になったわけです。世の常で、いつも権力により、弱い者たちが潰されていきます。そして、ウランが掘られた穴は、何と封印されずに開けっ放しだったというから驚きです。グランドキャニオンの辺りは、場所によっては微量かもしれませんが放射能被爆を受けるそうです。(若い頃、母を連れてグランドキャニオンを訪れたことがありますが、僅かな被爆を受けていたかもしれません)
アメリカンインディアン、ホピの予言は、母なる大地を掘り起こしてはいけない、と伝えています。大地は母体の内臓、それを蹂躙することは厳禁としていますが、結局のところ人類は、資源・重金属を求めて、儲けになるなら、と地球上のどこであろうとお構いなしに掘り続けています。また、ウラン鉱石を発見したからといって、そのウランを100%エネルギー源として使えるわけではなく、核分裂反応を起こすウラン235は鉱石の何と1パーセント以下
そして精錬所で精製された後には、劣化ウランというカスが出てしまう。やはり、ホピの予言で厳重に戒められていた母なる大地を掘り起こすようなことをしてはならないのですね。ウランとは人類が扱いきれない相手なのだ、と実感します。
映画の中で、自然の素晴らしさを伝えてくれる興味深い個所がありました。インディアン達が住んでいる所は砂漠地帯。そこでも、ちゃんとトウモロコシが育つ。 なぜ??? その砂漠地帯ではよく稲妻が発生するそうで、稲妻は彼らにとって「命の源」なのだそう。何故かというと、現代農業では肥料として窒素が使われますが、なんと稲妻の放電によって空気中の窒素が大活躍するそうなのです。空気の成分の78%が窒素で、電気の作用によってそれが集められ、大地に降り注ぐ。稲妻によって出来たその「天然の窒素」が大地に落ちて、過酷な砂漠地帯にもかかわらず作物が育つ、という、自然の循環があったのでした
ホピの予言には、今までの世界大戦や自然災害、原発事故、コロナ禍なども予知されていたそうです。20世紀中ごろからの急速な資本主義社会がこのまま進んでしまうと、必ず世界は滅亡の道を進むことになります。今までの歩みをやみくもに突き進むのではなく、今一度立ち止まって、滅亡の道を辿らないように賢い生き方を我々は選択すべき分岐点にいる、と予言の中にもあります。コロナで社会の構造も変化している今、物質より精神・心が優先した生き方を探っていこう、と感じている人達も増えているようですが、自然と共に生きてきたインディアンの教えは、自然をコントロールしようとしてきた人類への警告、と謙虚に受け止めたいです
因みに、アメリカンインディアンは、自分達はインディアンであり、アメリカンインディアンではない、という意識だそう。あくまでも先住していたのは彼らで、あとからアングロサクソン民族が移住してきたので、後者の民族の名称であるアメリカン、或いは後者があとからその大陸に名付けたアメリカ、それは自分達とは無縁、ましてやアメリカのインディアンは無いでしょう、というという気持ちなのだと思います