アメリカへ帰国する飛行機の中アランはひかりに尋ねる。

「今回地域リーダーたちに会ってみてどうだった?」

「皆、いい人ばかりだけど、共通しているところがあるのは分かったわ」

「共通していること?」

「ええ、皆、それぞれ信念みたいなのがあってそれによって行動しているみたい」

 アランは僅かに笑った。

「ひかりはよく見ているね。そうだよ、各地域リーダーは信念を持って行動している。それはドレイクヴァロの信念と呼んでもいい」

「ドレイクヴァロの信念……」

「ひかりにも信念はあるだろう?」

 アランに言われてひかりも自分の心に聞いてみる。

「ええ、あるわ。私はアランとともにドレイクヴァロの一員としてドレイクヴァロを支えていくわ」

「ありがとう、ひかり。俺にも信念はある『ドレイクヴァロの夢』を実現するというね」

「ドレイクヴァロの夢?」

「うん。まだひかりには話せないけど代々の総帥と初代の地域リーダーが目指した世界だよ」

「それは難しいの?」

 ひかりの問いにアランは静かに答える。

「とても難しいことだ。実現できるか誰にも分からない。だが代々のドレイクヴァロに関係した者たちが夢見た世界だよ」

「ふ~ん、なんか気になるけど話していい時になったら聞くわ」

 アランはひかりに軽くキスをする。

「俺と結婚する時に話してあげるよ。正式な総帥夫人になったらね」

 ひかりは頬を赤く染めて答える。

「ええ、分ったわ。アラン」

 飛行機は間もなく到着するとのアナウンスが流れた。



 
 ひかりが各地域リーダーのことを考えているとアランが声をかける。

「それでロシアのキマイラの動きが気になるから今回はジェイソンたちを連れて日本に行くことになった」

「ジェイソンさんたちを?」

 ひかりはそれほどキマイラという組織が危険なのかと思った。
 ジェイソンたちを連れて行くと判断したのにはそれなりの懸念材料があるのだろう。

「まだ具体的にキマイラがどう動くか分からないから基本的には通常の警備で大丈夫だろう。ひかりにはソフィアがつく」

「分かったわ」

 ひかりはソフィアのことが苦手だが仕方ない。

「それより準備は順調に進んでいるかい?」

「ええ、大丈夫よ。日本のパーティーは初めてだけど頑張るわ」

 ひかりは気合いを入れる。
 アランはそんなひかりを見て微笑んだ。

 各地域リーダーはひかりのことを次期総帥夫人として認めている。
 これはドレイクヴァロがひかりという人物を認めたことになる。
 これからはひかりもドレイクヴァロという組織を牽引していく一人になる。

 次期総帥の双頭の鷲の隣りに立つ存在。
 それが「ひかり」だ。

 アランはひかりにキスをした。