「このことがドレイクヴァロが普通のマフィア組織と決定的に違うところさ」
アランはひかりに言う。
ひかりはアフリカの青の熊のところにあった「ドレイク診療所」といい、マフィア組織でありながら「麻薬」を減らす行為をしていたり本当にドレイクヴァロという組織はただのマフィア組織ではないのだと思った。
だからといってドレイクヴァロが慈善事業ばかりする組織でないことも知っている。
必要であれば女子供でもドレイクヴァロは躊躇いなく殺す。
善と悪が表裏一体になった組織だ。
自分はまだまだドレイクヴァロという組織について勉強しなければならない。
ひかりはそう強く思った。
「ひかりさんは日本人で日本に暮らしていたと聞いたけどアメリカの生活は大変でしょう? ましてや双頭の鷲の婚約者だものね。辛くない?」
「心配していただいてありがとうございます。ですが、アランと婚約したことには喜びはあっても後悔はしません」
「そう。アランはこう見えても父親に似て執着心が強いから束縛されているのじゃなくて?」
「ギンの叔母様」
アランが慌てて銀の豹に声をかける。
ひかりはニコリと笑い答える。
「束縛されているという意識はありませんが常に私のことを考えてくれているアランには感謝の気持ちでいっぱいです」
「なるほど。それだけアランを愛しているのね」
銀の豹はクラウドの妻であった若菜のことを思い出す。
クラウドは若菜に対しての執着愛がすごかった。
でも若菜はそれを困った顔をしながらも受け入れていた。
「では、次期総帥夫人としての覚悟はできていると言ってもいいわけね」
「はい。私はアランと共に闘う覚悟はできています」
銀の豹はひかりのことを目を細めて見た。
ひかりはその眼差しを避けることもなく銀の豹を見返す。
フッと銀の豹は笑った。
「アラン。貴方は良い配偶者に巡り会えたわね」
「ええ、ひかりは私の側でいつまでも共にあろうと誓った仲です」
アランは真面目な顔で銀の豹に言った。
「両羽ひかり」はクラウドが認めた双頭の鷲の婚約者。
クラウドがただアランが好きな女性だからという理由で次期総帥夫人を認めるわけがない。
そのことは銀の豹が一番よく知っている。
さて、将来このひかりという人物がドレイクヴァロに何をもたらすのか。
銀の豹に楽しみのひとつがまたできた。
銀の豹との歓談の後、アランとひかりは次の地域リーダーに会うべく旅立った。