射撃場に着くと一人の青年が狙撃の訓練をしていた。
「ハリー! 双頭の鷲様とその婚約者のひかり様だ。ご挨拶しなさい」
ハリーと呼ばれた青年はスナイパーライフルを片手に三人の方にやってきた。
「初めまして、双頭の鷲様、ひかり様。ハリーと申します」
「こちらこそよろしくハリー。私が双頭の鷲だ」
アランとハリーは握手を交わす。
「私は婚約者の両羽ひかりです。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
ハリーは笑顔を見せる。
その笑顔は今時の若者らしく見た目からはハリーが凄腕のスナイパーだとはみんな思わないだろう。
「貴方が2000mの標的に当てられる話を聞いて一度その腕前を見せてもらいたくて。ダメかしら?」
ひかりに言われてハリーは緑の虎の方を見る。
緑の虎はハリーに軽く頷く。
「分かりました。準備します」
そしてハリーは狙撃の準備をする。
的は2000mだ。
ひかりはハリーの撃ち方を見ようとハリーを見つめる。
一瞬ハリーの姿が消える。
(えっ!?)
ハリーはその瞬間標的に向かって撃った。
見事に銃弾は標的を倒した。
「すご~い!」
「見事だな」
ひかりとアランは声を上げる。
「ありがとうございます。双頭の鷲様、ひかり様」
ハリーは嬉しそうな顔をする。
「ねえ、ハリーさん。さっきハリーさんが消えたように感じたんだけどあれはなぜか分かる?」
「ああ、それは世界と同化するからです。無心って言えばいいかな」
ハリーはひかりの言葉に戸惑いながら答える。
「なるほど。無心ね……。銃の上達にはどんなことを心掛けた方がいいのかしら?」
「一番大事なのは『無心』になることかな。世界と同化するために。自分自身が自然の一部になるというか。呼吸の仕方も大事ですね。一定のリズムで呼吸をすると自分の鼓動が聞こえる。その鼓動と世界の鼓動が重なった時に倒す標的が見えるんだ」
「日本の武術の精神に繋がるモノがあるわね」
ひかりは納得する。
「うん。だから自分も東洋の武術を習っているんだ。ひかり様ももしかして武術するんですか?」
「ええ。私は不動流がメインだけどいろいろな武術を習っているわよ」
「本当に!? じゃあ、今度いい武術があったら情報くれませんか?」
「いいわよ。いろいろ情報交換しましょ? 私もスナイパーの極意知りたいし」
その言葉にハリーは驚いたような表情をする。
「ひかり様もスナイパーやるんですか?」
「ええ。まだ700mの標的に当てるのがやっとなんだけど……」
ひかりはちょっと俯く。
「ひかり様は武術も習っているし一般人よりはスナイパーの素質がありますよ。それにひかり様はまだまだ若いから訓練をきちんと受ければもっと上達すると思います」
「ありがとう、ハリーさん」
意気投合する二人を緑の虎とアランは見つめる。
「ハリーはまだまだ成長するでしょう」
緑の虎はアランに話かける。
「彼なら次代を任せられそうだな」
「ええ。きっと双頭の鷲様の代になる頃は彼も双頭の鷲様のお力になれるはずです」
アランは頷いた。
そしてアランとひかりは次の地域リーダーに会うべく旅立った。