緑の虎はハッと目を開けた。
ベッド脇の時計を見ると明け方だった。
緑の虎はベッドから体を起こす。
「やれやれ懐かしい夢を見たもんだ」
シルバーグレーの髪にブラウンの瞳。
先代の緑の虎から名前を引継いでだいぶ経った。
今の緑の虎は五十二歳になっていた。
スナイパーとしては引退し今は若いドレイクヴァロのスナイパーに指導をしている。
彼はベッド脇の水差しからコップに水を注ぐと一口水を飲む。
「先代の夢を見るのは久しぶりだな。まったく本物の『伝説のスナイパー』になりおって」
緑の虎は溜息を一つつく。
あの時先代と自分が勝負していたらどちらが勝ったかは分からない。
先代が亡くなった今はもう先代を超えることはできない。
数字だけでなら先代を超えることもできるだろう。
しかし「オリバー」という人物はもう誰にも超えられない。
緑の虎を先代から引き継いでからしばらくは寝る間もない程の忙しさだった。
先代はこんな仕事量をこなしていたのかと思うと頭が下がる思いだ。
だが、仕事のコツを掴んでからはようやく自由な時間もできるようになった。
そして今は緑の虎として地域リーダーをしながらドレイクヴァロの若手スナイパーを教育している。
緑の虎の所には世界中のドレイクヴァロのスナイパー候補生たちが集まって来る。
人種も育ちも違う人間たちだがただ一つの共通点は「ドレイクヴァロへの忠誠心」が高いことだ。
緑の虎が若い頃に感じたドレイクヴァロという「帝国」は彼らのような忠誠心の高い者たちが次代へと引き継いで行き今も勢力を拡大している。
この「帝国」はどこまで成長するのか。
緑の虎も明日のドレイクヴァロを背負って立つようなスナイパーになって欲しいと思って彼の技術を惜しげもなく教えている。
先代から緑の虎の後継者の勉強をすることになった時に『ドレイクヴァロの夢』について教えてもらった。
その内容は驚くべき内容だったが、なぜドレイクヴァロが他のマフィア組織と違うのかが分かった。
そして今の緑の虎も『ドレイクヴァロの夢』に向かって進んでいる。
「今日は双頭の鷲様が来る日だったな」
ドレイクヴァロの成功の一つは総帥になる人物が有能な人物に恵まれたことだろう。
ただ総帥になるための勉強しただけではこの巨大な「帝国」は動かせない。
総帥には人を魅了するカリスマ性が必要なのだ。
この人物に付いて行けばいい、いや付いて行きたいと思わせるほどのカリスマ性を現総帥の双頭の龍もその後継者の双頭の鷲も持っている。
「私もその一人か……」
総帥の下で働くことに緑の虎は誇りを持っている。
きっかけは「オリバーに会いたい」ということから緑の虎のドレイクヴァロの人生は始まった。
緑の虎を継いだのも先代との約束だったが総帥の双頭の龍に会ってそれ以上にドレイクヴァロの地域リーダーとして働ける喜びを緑の虎は見出していた。
緑の虎はシャワーを浴びようとシャワー室に向かった。