「自分で料理するんですか?」
「当たり前じゃん。自分の口に入るもんは自分で作るのが俺の主義だよ~ん。ひかりちゃんにもレシピ教えてあげようか?」
「わあ、ぜひお願いします」
ひかりはアランとエドワードに作る料理の参考にしようと思った。
ひかりの笑顔を見ていると妹のジュリアと会話しているようで赤の蛇も嬉しくなる。
自分の女にしたいとまでは思わないがひかりのために何かしてあげたくなる。
これでまた一つ赤の蛇の中でドレイクヴァロに忠誠を誓う理由ができた気がする。
さすが双頭の鷲の隣に立つ女性といったところか。
「なんかひかりちゃんとは気が合いそうだわ、俺」
「ひかりが俺の婚約者ってことを忘れるなよ」
アランは再度赤の蛇に脅しをかける。
「わ~かったって。ひかりちゃんは愛されてるねえ」
ひかりは僅かに頬を染めた。
ひかりの純情そうな反応に赤の蛇は思わず笑みが零れる。
妹のジュリアも純情な娘だった。
他人の空似なのは分かっているが赤の蛇はひかりから目を逸らせない。
「それでアカ。最近の南米の地域で変わったことはないか?」
「う~ん、これといって報告することはないかな。各国とも口止め料の滞納も無いし」
「そうか。そういえばあの子は元気か?」
アランが気にしているのは赤の蛇の後継者として育ててる子供についてだ。
「ああ。学校の成績もこないだ学年でトップになったと嬉しそうに報告に来たよ」
「なるほど。いい子供を選んだな」
「選んだ訳じゃない。全ては本人の努力だよ」
「そうだな。悪い言い方をした。すまなかった」
アランは赤の蛇に謝った。
「別にいいよ。ワシちゃんだって総帥の実子だから後継者になった訳じゃないこと知ってるから。後継者になったのはワシちゃんのこれまでの努力の結果だし」
「そう言ってもらえると嬉しいな。あの子が跡継ぎになるにはあと10年はかかるだろう。アカもそれまで頑張って長生きしろよ」
「俺はおじいちゃんじゃないって。そんな簡単に死んでたまるか」
アランと赤の蛇はお互いに顔を見合わせて笑う。
お互いに常に危険と隣り合わせの立場だから敢えてそれを笑いごとにする。
それぐらいの度量がなくてはドレイクヴァロの幹部など務まらない。
「あの子は間違いなくワシちゃんの時代で活躍することになるよ~ん」
「それは楽しみだ」
アランは頷いた。
優秀な人材は多いにこしたことはない。
それから少し話した後にアランとひかりは帰ることになった。
「アラン、赤の蛇さん。お願いがあるんだけど」
「なんだ? ひかり」
ひかりは一瞬躊躇したが思い切って言葉を発する。
「赤の蛇さんの妹さんのお墓参りに行きたいんだけどダメかな」
「ひかりちゃん……」
赤の蛇は目を見開いて驚く。
「時間的に無理なら仕方ないんだけど、ジュリアさんのこと人ごとじゃない気がして」
ひかりは赤の蛇が自分の中に妹のジュリアの面影を見ていることに気付いていた。
余程妹を大事にしていたのだろう。
だからひかりは自分にできる精一杯のことをしてあげたかった。
「ありがとう、ひかりちゃん。お墓は車で10分くらいの所にあるからそんなに時間はかからないよ」
「それぐらいの寄り道ならかまわないよ」
二人の許可が出るとひかりはホッとした。
そしてひかりたちは赤の蛇の妹のお墓にやって来た。
ひかりは途中で買ったお花を供えると両手を合わせてジュリアの冥福を祈った。
お墓に手を合わせるひかりを見て赤の蛇はアランに小声で言う。
「ワシちゃん。いいお嫁さんゲットしたね。俺は赤の蛇としてひかりちゃんを次期総帥夫人として認めるよ」
「赤の蛇。ありがとう」
アランも小声で返事をする。
そしてアランたちは次の地域リーダーのところに向かった。