赤の蛇がリビングにいると扉がノックされる。
「赤の蛇様。双頭の鷲様と婚約者の両羽ひかり様がお着きになりました」
「お通ししろ」
すると扉が開き双頭の鷲のアランが入ってくる。
一歩遅れてひかりも部屋に入る。
赤の蛇はひかりを見た途端に顔色を変えた。
「ジュリア!!」
赤の蛇は我を忘れてひかりに走り寄る。
だが赤の蛇の手はひかりに触れることはなかった。
素早くアランがひかりと赤の蛇との間に入ってガチャッと音がしてアランの低い声が警告したからだ。
「今すぐ離れろ、アカ。頭を撃ち抜くぞ」
アランは自分の愛用しているグロック19を赤の蛇の頭を狙い突きつける。
赤の蛇はハッと我を取り戻した。
「分かった。撃たないでくれ」
赤の蛇は両手を上げてゆっくりとアランたちから離れた。
だが、赤の蛇はひかりの顔から視線を外さない。
「まったく、いきなり俺の婚約者に手を出そうとは度胸がいいな」
アランは赤の蛇がアランたちから十分離れたのを確認すると銃をしまった。
ひかりには突然の出来事で何が起こったか分からない。
「すまないワシちゃん。彼女があまりに妹のジュリアに似ていたから我を忘れてしまった」
「妹さん?」
ひかりの言葉に赤の蛇は頷く。
そして赤の蛇は胸元から一枚の写真を取り出した。
「妹のジュリアだ。10年前の写真だけど」
その写真を見た時にひかりもアランも驚いた。
確かにひかりにそっくりだ。
姉妹と言っても通じるくらい似てる。
「確か妹さんは亡くなっているんだよな?」
「ああ、10年前に病死した」
アランの問いに赤の蛇は答える。
「これなら見間違っても仕方ないわね」
ひかりも納得したようだ。
「アカ、今さらだが彼女は俺の婚約者の両羽ひかりだ」
「両羽ひかりです。これからよろしくお願いします。赤の蛇さん」
ひかりはニコリと赤の蛇に笑いかける。
笑顔も妹のジュリアと一緒だった。
赤の蛇はジュリアのことを思い出しながら目頭が熱くなった。
「ようこそブラジルへ。今さらだけど俺が赤の蛇だよん」
赤の蛇はこみ上げるモノをグッと抑え笑顔を浮かべる。
「立ち話もなんだからソファに座りなよ」
アランとひかりがソファに座ると赤の蛇が自らコーヒーを淹れる。
二人にコーヒーを勧めながら赤の蛇は言う。
「毒見済みだから飲んで」
「毒!?」
ひかりは物騒な言葉に反応する。
「アカはこんななりはしているが慎重な男なんだ。自分の身は自分で守るのがモットーだっけ?」
「そうよ~ん。おかげで料理もけっこう覚えたよ」
赤の蛇は得意そうに答える。