脅征威連合は日本の関西最大の極道組織で前回エドワードを連れて日本に行った時にエドワードを誘拐した組織である。
 その事件の後脅征威連合に脅しをかけておいたのだが脅征威連合は懲りずにキマイラから武器を買っているらしい。

 アランは関東最大の極道組織十和麗月会の本部長の舘智行と兄弟盃を交わした仲だ。
 脅征威連合が力をつけると十和麗月会と抗争になるかもしれない。

 智行とアランは兄弟盃を交わしているがドレイクヴァロと十和麗月会はお互いの行動には不干渉というのが条件だった。
 ただの脅征威連合と十和麗月会の争いにドレイクヴァロは干渉できない。
 だが脅征威連合のバックにキマイラが付くならドレイクヴァロとしても黙ってはいられない。

 ドレイクヴァロは日本の市場での取引相手に主に十和麗月会を選んでいる。
 組織の大きさや運営方針などのことを考えて十和麗月会が最適な相手だと判断を下したのだ。

 そこにアランと智行の私的感情は反映されない。組織の運営とはそういうものだとアランも智行も考えている。
 十和麗月会が無くなることはドレイクヴァロとしても損失になるのだ。

「それについては私も報告事項があります。発言の許可を」

 今度は日本を始めとする東アジアを治める黒の鷹が発言許可をアランに求める。

「黒の鷹の発言を許可する」

 アランは黒の鷹に話しの続きを促す。

「私の調査では主にロシアの東側の町から貨物船で日本のN港に武器を密輸しているみたいです」

「双頭の鷲は今月日本に行く予定だったな」

 双頭の龍のクラウドがアランに確認する。

「はい、表の仕事でですけどね」

「ならば黒の鷹と日本で合流してキマイラと脅征威連合の動きを確認してこい」

「それはかまいませんが……」

「白の狼は引き続きキマイラの動きの監視だ」

「はい。双頭の龍様」

 白の狼が返事をする。

「双頭の鷲殿、発言許可を」

 そう言ったのは地域リーダーの最古参の金の獅子だ。

「発言を許可する」

 アランが短く答えると金の獅子は咳払いをして発言する。

「総帥」

「なんだ、金よ」

「ここらで本腰を上げてキマイラの会長のミハイルを排除するほうが良くはないじゃろうか? 例の木の実もそろそろ食べ頃だと思うしの」

「キマイラのミハイルとは決着をつけないとだろうな」

 アランは金の獅子とクラウドが何を話しているのか分からなかったが二人は意思疎通ができているようだ。
 アランはクラウドがキマイラのことを嫌っているのは知っている。

 クラウドの妻の若菜を殺害したマフィア組織に武器を提供していたのがキマイラだったからだ。
 いつか必ず潰すとクラウドが昔言っていたのをアランは思い出した。

「双頭の鷲様! 発言許可をくれ」

 今度は地域リーダーの中で一番若い赤の蛇だった。

「許可する」

「そのキマイラってのはぶっ潰せばいいんじゃないの?」

「フォッフォッフォ、アカは血気盛んじゃの」

 金の獅子が笑う。

「ああ? 金の爺さんだってさっきキマイラを排除するほうがいいって言ってたじゃんよ」

「わしはキマイラを排除とは言っていない。会長のミハイルを排除すべきと言ったんじゃよ」

「キマイラ潰すのと何の違いがあるんだよ」

「いずれ時が熟せば分かる」

 赤の蛇は納得がいかないという顔をしている。

「アカの言う通りこのままキマイラを野放しにはできない。キマイラに関しては引き続き監視を強化するように」

 双頭の龍の一声でキマイラへの方針は決まった。

 アランは日本行きに若干の不安を覚えた。だが日本行きを中止にするわけにはいかない。
 ブラックウェル貿易会社のパーティーの件もあるが先ほどクラウドからキマイラと脅征威連合との動きを確認しろと言われたからだ。

 アメリカにいても日本の情報は手に入るがやはり現地に行って確かめた方がより正確な情報が手に入るだろう。
 定期報告会は他には特に変わったことはなく各地域ともキマイラに注意すべしということで終了した。