「ひかりとエドワードの学校の方には俺から連絡するからその期間は学校を休んでかまわない」

「サンキュー、アラン兄さん」

「ありがとう、アラン。紗羽瑠たちに連絡してもいいかしら?」

 ひかりはアランに帰国の日程を紗羽瑠たちに話していいか確認した。
 アランはドレイクヴァロの双頭の鷲だから場合によっては危険回避のため移動スケジュールは他言無用の時がある。

「ああ、今回はブラックウェル貿易会社の副社長の立場で行くからかまわないよ」

「分かったわ」

 ひかりはアランに笑顔を見せる。突然の話だがひかりには日本に帰れる貴重なチャンスだ。
 最近はホームシックになることはないが日本の友達や知り合いに会えると思うと心が躍る。

 紗羽瑠たちとは頻繁にメールでやり取りしているがそれでは会話した気にはならない。
 国際電話は高いのでひかりは使わないしやはり顔を見て直に話したい。
 喫茶店で紗羽瑠と舞菜と三人でたわいない話をして盛り上がっていたことが懐かしい。 

「三月下旬だと日本は桜の季節ね」

「日本では桜を見ながらお酒飲むんでしょ?」

「そうね。それを『お花見』と言うのよ」

 エドワードの問いにひかりが答える。

「屋形船に乗りながらお花見したことあるけど、とても素敵なのよ。満開の桜の花がライトアップされてとても幻想的なの」

「じゃあ、今回は屋形船でお花見するか」

「えっ! でもそんな贅沢しなくても」

「俺は賛成!!」

 エドワードが手を挙げる。

「俺もひかりと一緒に屋形船から桜を見たい。ひかりとは一つでも多くの想い出を残したいんだ」

 アランにそう言われるとひかりも弱い。
 アランは常に危険と隣合わせで生きている。

 考えたくはないがアランはいつ命を落とすことになるかも分からない。
 だから二人の想い出をたくさん作りたいというアランの言葉には逆らえない。

 ひかりもアランと同じ気持ちだ。アランと一つでも多く想い出を作りたい。
 ひかりは両親を殺されて亡くしている。明日という日が当たり前に来る日々がいかに大切なのかを身をもって知っている。

「分かったわ。エドくんと花音も一緒に乗りましょうよ」

「うん! じゃあ決定ね」

 エドワードは嬉しそうに元気よく返事をした。
 ひかりはエドワードにも花音との想い出をたくさん作って欲しいと思っている。