ニューヨークからシカゴに戻るプライベートジェット機の中でアランはパソコンで仕事をしていた。
今、やっている仕事はドレイクヴァロの次期総帥「双頭の鷲」としての仕事だ。
ドレイクヴァロは世界規模のマフィア組織であり次期総帥のアランにとってはこちらがメインの仕事だ。
そんなアランにケビンがコーヒーを淹れてくれる。
「ありがとう。ケビン」
コーヒーを飲みながらアランは仕事の続きをする。
「ドレイクヴァロか……」
アランは仕事をしながら誰にともなく呟く。
ドレイクヴァロを世界最大のマフィア組織にしたのはアランの祖父とその祖父の弟である。
祖父は曽祖父の組織したマフィア組織を若くして継ぐと自分の双子の弟と共に組織改革を行い勢力を拡大した。
祖父は『双頭のグリフォン』と名乗り武器の密売を始めると同時にいち早く『情報』というモノの価値を見出し世界中の国々や戦闘組織などにドレイクヴァロの構成員を送り込み機密情報ですら手に入る情報網を築き上げた。
双頭のグリフォンはただスパイを各国に派遣しただけではない。
ドレイクヴァロのスパイは国や組織に潜り込みその国や組織のトップかもしくは幹部になるように仕事をする。
組織によってはいつの間にかドレイクヴァロのスパイに乗っ取られたりして組織ごとドレイクヴァロの支配下に置かれることもある。
双頭のグリフォンは戦争孤児や貧困層の若者を雇いドレイクヴァロのスパイとして教育をした。
それは力による押さえつけの教育ではなくその貧困層の若者たち自身の生活やその家族の生活の面倒までドレイクヴァロは惜しみなくお金をかけて護った。
そのため生きていくために悪に手を染めていた若者たちは自分の意思でドレイクヴァロのために働くことを選び始める。
それがドレイクヴァロというマフィア組織の強みになった。
力で従わせれば反発や裏切りにもなる。
だがドレイクヴァロの構成員たちは自分の意思でドレイクヴァロの組織に命と人生を捧げることを選んだ者たちだった。
そのため通常のマフィア組織より団結の力が強くドレイクヴァロを裏切る者は少なかった。
ドレイクヴァロも甘い蜜ばかりを彼らに与えたわけではない。
ドレイクヴァロを裏切った者には壮絶な罰を与えた。
組織の構成員として働けば安定した生活を約束され組織を裏切れば地獄の処罰を与える。
それが双頭のグリフォンが徹底したことだった。
まさに飴とムチの両方を使った人材育成である。
その方針がドレイクヴァロという世界最大のマフィア組織を誕生させた。
普通のマフィア組織とは違うドレイクヴァロを各国は恐れている。
そして祖父の弟はブラックウェル貿易会社の社長になりドレイクヴァロの武器の密売や人物の密入国を合法的にやってのけた。
ブラックウェル貿易会社は最初はドレイクヴァロの隠れ蓑的役割が大きかったがドレイクヴァロが育成した人材を使い企業として成功を治め始める。
双頭のグリフォンの弟は商才もあったようだ。