「二宮?」
次の日美術準備室に行くと
いつもと変わらない先生がいた
昨日いなかったことを
話してくれるわけでもない
あの人には話したのに
僕には話してくれない
僕は特別じゃなかった
先生は“僕”だけじゃないんだ
「大野先生……」
「ん?」
「先生はどうして僕に手紙をくれたの?」
「手紙?………あぁ、絵につけてた手紙?」
先生だから
どの生徒へも平等
大野先生は特に優しいから
先生自身人気もあると思う
けどせめてあの絵と手紙だけは
僕だけの特別にしたい
「どうしてわざわざ家まで手紙を届けたの?」
「二宮に学校に来てもらいたかったからだよ」
「でも僕先生と話した事もなかったでしょ?」
「うん、そうだね」
「先生の顔も知らなかった」
担任だったわけでもない
なんでもない僕に
届けられた封筒は
僕には特別だった
「先生は僕を知っていた?」
「ふふ、もちろん」
「なんで?」
「入学式の日に1人でいただろ?」
「え?」
「周りはみんな親御さんや友達といたのに」
中学を卒業する前に
両親が離婚して
専業主婦だった母さんが
朝から晩まで働くようになった
そして県外の私立の高校に
進学が決まっていた僕は
生活の為に忙しくする母さんに
入学式の事は告げられず
1人で出席して
母さんの旧姓に改姓された
自分の名前を張り出された
クラス表で見つけた
父さんが出ていった家
そこにかけられたカレンダーには
“入学式、◯◯写真館で家族写真”
と赤いペンで書き込まれていて
僕は母に気がつかれないように
それを修正液で消した
「二宮の事が気になったんだ」
「………気になった?」
「うん、どうしてか……気になったんだ」