三好氏アンソロジーに記事寄稿しました。
毎年出店者として参加しております文学フリマ大阪に今年も参加して来ました。
ブログでお付き合い頂いている皆さま、お久しぶりです。ご無沙汰しておりました。
今年は例年と違い自著での製本による発表ではなく「X」でお付き合いいただいている加賀野ようこさんが制作された三好氏アンソロジーに新作記事を書いて掲載させていただきました。
加賀野さんは主に三好長慶に代表される戦国期三好氏の一族や家臣の逸話や事案を取り上げて論文などの史料に基づく漫画や、ご自身が専門とされる科学分野的な視点からの記事などを書いておられます。例えば松永久秀の爆死伝承が実際に行われたとした場合の、爆薬の分類や爆圧などの検証から書かれた工学的な考察記事は非常に珍しい考察手法で、独特な文調と相まって俯瞰的な視点への導きなど、新たな気付きを与えてくださる好著となっております。
さてその加賀野さんが漫画と記事執筆!アンド編集をされたのがこちら。
「戦国三好氏アンソロジー むらさめ晴れてみよしのに翔ぶ」
わたし含め六名のゲストと加賀野さんでそれぞれに力を出し合い、漫画にイラスト、小説から考察、論文までとオールジャンルと呼ぶに相応しい非常に読み応えと読後の充実感のある大作、いや超大作となっております。
ネタバレにならない程度にわたしなりの紹介と感想です。
歴史人物のイラストはそれを描く方がその人物のどこを評価し強調するか、という人物評が表現されるのでそれを汲み取る楽しみがありますしその表現手法は勉強になります。わたし自身も描いた人物は特に興味深いです。
小説は硬い論文や伝記と異なり、その歴史人物たちと同じ立場や空気を共有できる楽しみが醍醐味。三好氏はご存知の様に戦国の波間に衰退しますが、取り上げられた時期がよくて読後に高揚感を感じました。
人物考察記事も読んでいて斬新でした。長慶以外の人物たちも、それぞれの立ち位置ならではの苦労をしてのし上がっている様に思い至りました。
論文は機内ならではの当時の政治的環境を知る手掛かりと、三好氏の歴史的評価を窺い知る視点を与えてくれました。
加賀野さんの科学的考察、今回は暗殺について。断片的な史料の記録による症状を推察し、当時の政治的、生活的環境まで幅広く考察に及ぶ記事は相変わらず読み応えありました。
ほのぼのとした絵柄の漫画とのギャップも魅力です。
わたしは三好長慶、義継が活動した畿内、西国の甲冑について書かせていただきました。過去の考察で描いた軍装想像図を用いて西国武者の特徴である派手な装いについて、何故なのかを自身なりに考察しまとめました。
調べていくうちに社会的状況から世界史へと進み、長慶が台頭活動した戦国後期の急激なグローバルな社会環境変化へまで及び、俯瞰的な視点からの歴史考察である「通史」の大切さを改めて実感する良い機会になりました。
記事の補足と訂正、堺について
さて記事やイラストというものは書いて推敲に推敲を重ねて脱稿するものですが、不思議なものでいつも発表後になってから誤りというものに気付くのであります。
今回の記事では社会的な変化を調べる必要から交易や都市などの市場や流通の発展について記事にしました。
そこで堺という都市についても軽く触れています。当時堺はじめ西国の商人の活動が活発で、武将たちと並んで歴史的評価の必要性があるからです。
当時堺の商人たちが港湾都市ならではとしてこの交易に携わり、莫大な経済力を身に付け経済規模の拡大に貢献しました。彼らは海外の高価な嗜好品の流通を担ったからです。
唐物と呼ばれたこれらは主に中国の生糸や絹、新たに西洋から持ち込まれたビロードなどの品々です。これらを積載するポルトガル船の停泊地を巡って九州の諸大名は争いました。大型のポルトガル船は喫水や風避けの良好な停泊地を求めておりイエズス会は布教と交易を不可分に絡めて平戸、横瀬浦などを同地を治める松浦氏や大村氏と交渉し、彼らもその利益を見込んで争いました。記事では堺にまでポルトガル船が来航したと記しましたが、これは誤りです。
堺の商人たちは西国の商人たちと共に遣明船事業の当時よりこれらに絡み、同様にこのポルトガルとの交易品を上方に持ち込む拠点として流通を担ったのですが、ポルトガル船が堺にまでは来ておりません。訂正しお詫び申し上げます。
長慶が活動した当時、「ポルトガル船が堺に来航した」と記した一文は誤りですが、海外を商圏に物流拠点として経済的豊かさを背景に、文化発信の拠点としても重要な地位を占めたのが堺でした。このことは今回の記事の主眼点である西国甲冑の特徴という内容からは側面的な部分になりますが、当時の人々の心理的影響を探った一面からも史実の誤りからも訂正させていただきます。重ねてお詫び申し上げます。
訂正箇所の件は申し訳ないですが、三好長慶、義継が活動した当時、彼らはどの様な甲冑を纏っていたのかという記事については、過去数年の史料検証とじっくり考証を重ねて書いた(描いた)ものの集大成的記事となっておりますので、是非読んでください!
本全体では84ページという分厚い濃密な内容の三好爆上げアンソロジーとなっております!
こちら、先日行われました文学フリマ大阪13で加賀野さんご出展のブースでは、当然ですが大好評だったようです。
今年の文学フリマ大阪への出店
さて冒頭でもお話しました様にわたし、さえもんも出店者として参加しておりました。
今年の出店ブース
今年はこれまでと開催場所に変更がありまして、これまでの天満橋のOMMビルから、南港はインテックス大阪となりました。文学フリマ大阪は昨今のZINEブームもあり年々出店者、入場者数共に増加傾向にあり、昨年の文学フリマ大阪12の出店者数が760件が今年は1223件とほぼ倍増とのこと。
我が党が出店を始めて実は今年が4年目。これまでの3年間、出店者数が700件を少し超えた辺りで横這いだったのですからこれは大きな変化です。入場者数も三割り増しの五千人余りと発表が終盤に有りました。ですが今年は例年に比べても前を通る方が少なくガランとした印象。
我が党は戦国期甲冑の変化というマニアックな内容なので一般的なウケはよくありませんw
なので逆に立ち止まり興味を示してくださる方は、歴史に興味のある層で高確率で買って下さる方が多い印象です。会場を一望すると他ジャンルに比べ人集りがとても少なく感じてあまりにも暇なので場内を回って見ることに。
ところが出店数が多過ぎて一店々々をじっくり見るには至らない事。そうすると気付いたのは他所さんも陳列では差が付きにくく、目が留まるのは本以外の陳列、あるいは呼び込みの声掛けをされてる店になってしまう。それとどの店も意外と値札は分かりにくい事でした。これは今後も出店数が増えた場合、どの様にすべきかヒントがありそうです。自ブースに戻り早速横に並べるだけだった本を、イラストページの見開き立て掛け展示に変更。…売れました。そうそう、背中に背負って持ち込んだマイ兜の効果ですが、一般入場者で興味を持たれた方は一名だけでした。しかも初めに本を買う意思は無いとw
来年は出店しようか迷いましたが、新刊が出せたらジャンルの変更を含め今回の教訓を踏まえて検討します。頼むぞ、自分w
それはさておき。わたしが文学フリマに出店を始めたのは、(もう何年か前の話になりますが)この日も出店されておりました大和堂の大和さんのブースを訪ねた際、「さえもんさんも製本して出店されたらよいのに」とお勧めされた事がきっかけでした。そうしてわたしが出店していることをブログに書いたら、同じくブログで親しくお付き合い頂いている落人さんが同様に、なんとZINEを始めた事を知ったのです!
わたしは大和さんに背中を押され頂いたこの様な楽しみ方を、落人さんとそのご友人にも繋いだのですからこれほどうれしい事はありません!しかもこの日は同じく出店されていたのです。さっそく一般入場開始前に大和さん、落人さんどちらの店も訪ねさせていただき、ご挨拶と共にこのうれしさを伝え、ご著書を購入させていただきました。我が党と違いどちらもご盛況だったのは言うまでもないことです。
最後に。今年は製本出店を始めて4年目。これまでと違いアンソロジー寄稿参加という皆で一つのテーマで本を作り上げる、わたしにとっては新しい試みに参加させていただきました。また一つ楽しみを教えていただきましたこと、本当に感謝申し上げます。加賀野さん、ありがとうございました‼︎
加賀野さんも落人さんも、もちろん大和さんも通信販売をされていますので、是非検索して入手してください! まだ在庫が有るかは知らんけどw

