架空都市は、地理好きの間では昔からよく行われることである。それについてまずネットで調べた。いつもはWikipediaだが、残念ながら記事がないようなので、今回はpixiv百科事典の引用だ。

 

「架空都市とは、主として創作のために造られた実際には存在しない都市である。

たとえば架空鉄道が鉄道だけを空想して創る趣味であるのに対し、架空都市はそれらだけにとどまることなく、架空の世界自体を空想して創造する趣味である。

この行為自体の目的としては「自らの創作の元本とする」「他の項目(たとえば都市計画とか鉄道とか)のためのたたき台」などが存在する。

 

これらの都市の創造には、創造度の観点、手段の観点、目的の観点など、複数の分類が可能である。

 

創造度の観点より

 

都市の中には既存地域に挿入するタイプ、既存地域をモチーフとして創作するタイプ、あるいは既存地域をモデルとせずゼロから完全に想像して創るタイプなど、さまざまなタイプに分類できる。

 

・既存地域に挿入する

たとえば「日本の関東に存在する町」という風なものである。これに関しては作者の居住する地域周辺や著名な地域近郊に設定されることが多い。

・既存地域をモチーフにする

たとえば「デトロイトのような過去発展したものの廃墟とかが入り混じった都市」という風に特徴のある都市や地域をモデルとして作成することが多い。また、時代設定を変更して作成する(たとえば夕張が石炭による発展をそのまま推し進めたような地域、であるとか東京が何らかの事情で廃墟になり、それをリノベーションした都市、あるいは周辺地域が代替として発展した都市など)ことも可能である。

・新たな地域を創作する

今までの常識などと全く異なる地域を作成することになるため、作者の想像力が試される。

 

規模の観点より

 

 1つの市町村にとどまるものから、架空の国家、架空の島や大陸、あるいは架空の惑星や星系のレベルに達するものまで、さまざまなタイプがある。

 なお、単位が大きくなるにつれ、設定が必要な項目が増え、整合性をとることが難しくなるため、注意が必要である。たとえば大陸などを設定した場合、気候や地形、海流や地下資源、さらにはそこに暮らす民族や文化などまで場合によってはモデルとなった大陸に関して調査したり、新たに設定しないといけなくなる。

 

系統・手段の観点より

 

地図の描画を中心としている場合は架空地図とも呼ばれる。一方、鉄道の描写が中心であれば架空鉄道としても扱われる。その他、ファンタジー・物語を中心に扱っている場合もある。

逆にアニメや漫画、小説などに使用する世界の場合、このタグを使用することは少ない、これは通常それらの創作が主となるため、創作された都市にスポットライトが当たることは少ないためである(シェアードワールド、すなわち複数の著者が同一の世界設定や登場人物を共有して創作する作品群を予定した世界の場合が該当する。また、TRPGなどの異世界に存在する都市もこれに該当する)。」

 

私はネットを始めて20年以上経つが、こういう趣味を持つ方は昔からいた。またTwitterを始めてもうすぐ8年だが,やはり私の周りはそういうコンテンツを生み出される方も多い。そして、そのクオリティがまたすごいんだ。

私なんかは、後述するが自分で一から考えた架空の世界を考え出すこと自体無理なので、それをしてる時点で強いし、そしてそんな自分の世界に、地形図とか昭文社地図のような、本物そっくりの地図を作り出すことまでしているのだ。

私にはそんな芸当できっこない。

 

で、私はというと、地元・長崎をモデルにして、その地名だけを改変した(1箇所だけ架空の土地開発を行った箇所はあるが…)高宮市という町を考えるにとどまっている。

それは、少し前にこのブログで発表した「ハルワカのうた」の舞台にするためのものであり、だから私がよく知ってる長崎から大幅に変える必要がないわけだ。

だけど、それだけじゃもったいなくて、あくまで個人の趣味として、「私だったら、この長崎の地名をこのようにしたい」と、架空の合併やら架空の町名設置やらをするという遊びを始めたわけである。

 

とあるフォロワーさんが、先日、「半空想地図」という用語を出してきた。すなわち彼の住む町に、架空の廃置分合を施し、架空の大字小字を設置するというものだった。

これを見て私は、そうそれ、私がやってんの、ほぼそれだ!と思った。

彼は使用する地名こそ現実のものであり、市名や町字名のほとんどを架空のものに入れ替えた私とは厳密には違う。ただ、私のは純然たる架空都市じゃあないよな、それはガチ勢に申し訳ないな、と考えていたので、この「半」という冠が非常にありがたい存在に思えた。

というわけで、長崎市(他3町)をモチーフにした高宮市を、合併、それに町字改正の歴史を妄想したものを今回からシリーズにしていく。

そして、それを地図に示していく。

未完成の状態で始めていくので、気が向いたら更新とならざるをえないため、時間はかかるがお付き合いいただきたい。

 

なお、長崎市の現実の地名まで示すとキリがないので、全部は対応させられないさせていただくことはご容赦いただきたい。詳細はWikipediaの長崎市の地名の項に譲ることとし、比較いただきたい。

…まあ、できる限りの解説は後ろの方に示しておきたいと思う。

 

それでは早速いってみよう。

 

1889年(明治22年)

※市街地版の拡大版はこちら

 

最初は地図を2枚示す。

1枚は高宮市の全体図、もう1枚は高宮市街の地図だ。原則として、昭和の大合併前に市域になった地区を拡大したものである。

以後、大字は両方の地図に記載することとし、町については市街図に掲載されているものについては全体図では割愛するものとする(図中橙に塗っている)。

 

色分けであるが、橙は前述の通りある。以下箇条書き。

青 高宮市外の大字

灰 高宮市外の大字なしの区域

   (※今回の地図に限り市内にも大字なしの区域がある。色は微妙に変えた)

桃 高宮市外の町

緑 高宮市内の大字

紫 高宮市内の町。住居表示未実施。

黄 高宮市内の町。住居表示実施済。

 

赤字 高宮市外の村名

橙字 高宮市外の町名

青字 高宮市内の広域町名

 

赤線 市町村界

青線 高宮市内の「広域町名」界

 

※広域町名 高宮市の独自用語で、旧町村名を単位とする〇〇町××という形で住所表記する場合の町名部分。なお、高宮市の条例で、この広域町名はTownと訳す。

 

…ここから本題に入ろう。

 

史実と同様に市町村制を施行することとする。

高宮市は、高宮区が市制施行したものであり、下記の87町を含む。

 

崎島町、唐人町、飛梅町、広瀬町、本竹篭町、曳船町、楊枝坂町、丸岡町、漆喰町、油屋町、八咫町、新竹篭町、東鍛治町、西鍛治町、銅町、西浜崎町、東浜崎町、万町、榎町、西古瀬町、中古瀬町、東古瀬町、銀座町、磨師町、森崎町、呉服町、新紺屋町、麹町、紙屋町、高麗町、米屋町、新博多町、大川戸町、古田町、桶屋町、本大工町、魚ノ棚町、酒屋町、福禄町、本紺屋町、木材町、月成町、北下町、南下町、江戸町、北橋町、平島町、織田島町、島本町、本博多町、一ノ堀町、新町、金物町、後天徳町、新天徳町、本天徳町、豊前町、木挽町、桜岡町、中町、代官坂町、桂木町、八百屋町、呂花町、馬場町、津町、下玉調町、西中玉調町、西上玉調町、西新上玉調町、東中玉調町、東新上玉調町、東上玉調町、本神戸町、浜神戸町、鰻島町、黒井町、伊勢屋町、北職人町、浜町、小笠原町、蘭町、松枝町、邸町、曽根崎町、片男波町、古瀬町

 

このほか、西高宮村・北高宮村・東高宮村・南高宮村の各一部を編入した。これらには大字を設置せず、小字で表記することとした。

 

また、現在の高宮市域に、37村が設置された。以下、その一覧である。また、()に大字を示す。

なお、虎浜・古郷地・草深・喜瀬屋の4村のみが北橋郡であり、他はすべて高宮郡である。

 

北高宮村(西高宮・北高宮・東高宮)、南高宮村、笠戸村(小笠原・下戸山・上戸山)、下宮川村(宮川鴻坂・宮川竹若・宮川稲葉・宮川秋月・宮川神立・清島)、中宮川村(西高宮・宮川山王・宮川中之・宮川新珠下)、上宮川村(宮川西・宮川北・宮川新珠下・宮川新珠上)、名知村、猪鹿倉村、玉木村(玉木・佐野岡・平谷)、深水村(深水・吉永)、福岡村(福岡・小屋塚・熊柿)、綱島村、若菜村(日吉・北若菜・若菜浦・修理部・散々)、冷水村(冷水・日吉)、魁村(魁町・東魁・田之浜・内河野・真宮)、虎浜村(虎浜・牛島)、古郷地村、白富村(平・白羽・富好)、羽二重村、登扇宜村(登扇宜東島・登扇宜西島)、床島村、萱場村(萱場・布目)、為永村

川原村、宮ヶ浜村、名母里村、岬村、鰻島村、黒瀬村(黒瀬・室津)、神森江村、徳和瀬村(琴根・徳和瀬・片岡・乙形・香藤木浦)、梵天丸村(梵天丸・村正・琴根・祢々川)、菊水寺村(月湊浦・菊水寺・浜・雛形)、春若村(上春若・下春若・久世)、天幕村(天幕・三十谷)、草深村、喜瀬屋村(喜瀬屋・一丈三尺)

 

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地図見たらわかるとは思うが、高宮区87町というのは、もう長崎区87町そのままだ。町名を変えただけで(というか、いくつか町名までそのままのところも…)、町の形もそのままだ。町の数が多すぎて、改変も面倒なんでしなかった。
周囲の村から色々編入したが大字は設置せず、というのは実は福岡市を参考にしている。その福岡市で言うと、東中洲町(いわゆる中洲)とか出来町のあたりだ。ネタバレになるが、その福岡市と同様、数年後に町名設置を行うことになる。
ちなみに、現実の長崎市は市制時にもうちょっと周囲の村を編入しているが、今回は私のこだわりで抑えめにした。

あとは、のちに高宮市になる村がたくさんある。
ざっくり、現実の長崎でいうどのへんにあたるのか、ざっくりと触れておこう。

・南北高宮村:こちらは、まあ上下長崎村だ。合わせて13郷、全部を大字にしたら細かすぎるので北は3分割、南は分割なしにした。ちょうど4つなので東西南北だ。
・笠戸村:こちらは戸町村だ。実際には大浦と戸町に大分されるので、それぞれ小笠原と戸山として合成村名とした。
・上中下宮川村・名知村:宮川=浦上だ。このうち上宮川村は現実で言うところの彼杵郡浦上5村、市町村制における西浦上村だ。厳密には市町村制の少し前に合併して浦上村になっていたわけだが、それが、浦上西村・浦上北村・浦上家野村・浦上木場村・滑石村だった。滑石だけ浦上がつかないこと、現代において西浦上から独立して長崎市の一地区として数えられていることを考慮し、名知村として独立させた。こちらは後に合併する。また、中宮川村・上宮川村は現実で言うところの幕府領浦上村であり、中宮川村が山里分、すなわちのちの浦上山里村であり、下宮川村が渕分、すなわちのちの浦上渕村だ。こちらは私の独断と偏見で大字を分けさせてもらった。ホントは馬込郷まで昔から浦上だったのだが、本案では西高宮村の一部ということにさせてもらった。これはかなりなんとなくの結果だ。本来、浦上ではなく深堀領であり、市町村名直前の時点で独立した村だった神の島は清島村として史実通り独立させた。以下も、史実で大字区域となっている場合は本案でも当然のように大字扱いとした。

・猪鹿倉村:現実で言う小ヶ倉。

・玉木村:現実で言う土井首。なぜ土井首を「玉木」という名前に改変したかは忘れた。しかし、佐野岡・平谷は各々竿の浦と平山を捩ったことは容易に想像がつくだろう。

・深水村:現実で言う深堀。大篭がなぜ「吉永」?と思われるだろうが、こちらは大篭の字である「善長」を捩ったものだ。

:福岡村:現実で言う福田。小屋塚、熊柿はそれぞれ小江、手熊+柿泊の捩りだ。…今思うと大浜+小浦も独立させとけばよかったかな。まあいいんだけど。

・綱島村:現実で言う式見。たぶん淡島神社の捩りだったと記憶しているが、なぜ「綱」かは忘れた。

・若菜村:現実で言う茂木。現実の茂木地区を流れる若菜川をそのまま拝借した。日吉を日吉小中学校をそのまま拝借した。修理部はスリベと読み宮摺の捩りだ。というかあれ自体が宮大工を意味する宮修理の転訛だったりする。散々もチリヂリと読み千々の捩りだ。

・冷水村:現実で言う日見。冷水にも日吉があるのは、現実の日見村が1898年に茂木村の一部を編入したことにちなむ。本案では日吉村が市町村制の折に分割編入したことにした。

・魁村:現実で言う矢上。魁の名前は単にかっこいいからそうしただけだと思う。現実の地名としても島原に先魁町があるからまあいいっしょ、と思った記憶はある。こちらは現実にあった5つの「名」をそのまま全部大字にした。大字魁町の今後には注目である。

・虎浜村:現実で言う戸石。これもなんとなくかっこいいから虎浜にしたんだと思う。牛島は現実の牧島が畜産業に関係する地名だからそうしたんだと思う。

・古郷地村:現実で言う古賀。

・白富村:現実で言う三重。単になんとなく架空の地名として気に入った「白富」をそのまま採用しただけだと記憶している。白富が白羽と富好の合成地名だというのも後付けだ。実際には三重地区よりも畝刈の方が栄えていることから、畝刈こと白羽と、三重こと富好の合成にしたわけだ。平だけは普通に多以良の捩り(というか表記変更)だ。

 

ここまでが現実で言うところの平成の大合併以後の長崎市域だ。次は平成の大合併で入った地域を紹介しよう。

・羽二重村:現実で言う香焼。これも単に気に入った名前を採用しただけだろう。

・登扇宜村:現実で言う伊王島。登扇宜はトセンギと読むが、なぜこの名前を採用したのか、本当に忘れてしまった。

・床島村:現実で言う高島。

・萱場村・為永村・川原村:現実で言う三和。それぞれ蚊焼、為石、川原にあたる。川原はもう名前を変えることすらしなかった。

・宮ヶ浜村・名母里村・岬村・鰻島村:現実で言う野母崎。それぞれ高浜・野母・脇岬・樺島にあたる。鰻島については現実の樺島に生息する大鰻にちなんで名付けた。そして、樺島に由来して長崎市中心部に樺島町があるように、高宮市中心部のそっくり同じ場所に鰻島町を作った。

・黒瀬村・神森江村:現実で言う外海。それぞれ黒崎・神浦に当たる。また、室津は出津の捩りだ。池島にあたる島はこの段階では独立させなかった。まあ、近代になって栄えた島だからね。

・徳和瀬村・梵天丸村:現実で言う琴海。それぞれ長浦・村松にあたるが、名前は似ても似つかない。これは、白富や羽二重同様、気に入ったから採用したものだと記憶している。ただ、大字については現実を大分捩った。琴根は戸根と戸根原だし、片岡は形上だ。また、乙形は尾戸だし、村正は村松だ(すなわち、梵天丸は実は西海にあたるということ)。祢々川は子々川だ。こちらは史実通り、そのうち菊水寺(時津)に編入される。香藤木浦(コウジキウラ)は、全国的な大字のあるあるとして、中心部からはずれた漁村がなぜか○○浦として独立した大字になってたりするよねと、という一種のネタだ。現実で言うところの尾戸郷小口浦だ。

・菊水寺村:現実で言う時津。そろそろ「ハルうた」の舞台に近づいてくるので、現実に即しない、作中で使用される独自の地名が登場し始める。月湊(浦)もその一つだ。雛形は普通に日並の捩りだ。浜は浜田の捩りとして「浜村」という地名を用意したが、高宮郡浜村が市町村制で大字になった結果、菊水寺村大字「浜」になってしまったという、これまたネタというか、一種の皮肉だ。

・春若村:現実で言う長与。こここそがまさに「ハルワカのうた」の舞台なので、春若も久世(現実で言う高田)もネーミングとしては完全なオリジナルだ。

・天幕村・草深村・喜瀬屋村:現実で言う多良見。天幕は現実でいう伊木力にあたるが、この辺まではハルうた勢力圏か。草深と喜瀬屋は各々大草、喜々津にあたる。

 

…とまあ、こんな感じで、「半架空都市」高宮市の地名の変遷を現在までお伝えできればと思う。

超マニア向けの企画ですが、よろしくお願いいたします。