「気付いた時は病室で手術の後でした…」警察の取り締まりに“密着取材” 横断歩道『ワースト1』の現状

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新潟県内の各地で、横断歩道を渡っている子どもが巻き込まれる事故が相次いでいます。新潟県は、2023年にJAFが行なった調査で「信号機のない横断歩道での一時停止率」が全国最低でした。

【画像で見る】事故のあった横断歩道
『歩行者が優先』のはずなのに…。
なぜドライバーは止まらないのか?
警察の取り締まりに密着し、その理由を探りました。

新発田市富塚町で町内会長の武田隆さんは、黄色いベストを着て、横断歩道を渡る児童を見守っていました。車に一時停止を促しています。

「黄色いベストは、遠くから認識してくださるのでありがたいですね」

この道路は、国道と県道を繋ぐ市道で、車を運転する人にとってはいわゆる「抜け道」になっており、スピードを出す車が多いそうです。
近くの学校の先生や住民が協力して、定期的に通学時間帯の子どもを見守る活動をしています。

【町内会長 武田隆さん】
「“横断歩道があるから安心だ”ってことではない、と改めて思い知らされました」

この横断歩道では、2月に事故が起きたばかりです。

新潟県新発田市で2月、横断歩道を渡っていた下校中の児童3人が、軽ワゴン車にひかれて重軽傷を負いました。
富塚町の武田町内会長らはこの事故をきっかけに子どもの見守りを強化しました。

道路交通法では「横断歩道では歩行者が優先」と定められています。
歩行者がいる場合、車には停止する義務があります。

横断を妨げれば横断歩行者等妨害等違反となり、違反点数2点のほか、普通車の場合には9000円の反則金が課せられるばかりではなく、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が罰則で定められています。

しかし…

【事故現場付近の中学生】
「人がいても止まらない。スピード落とさないです」
「止まってくれない方が多いし、スピードも速い」

新潟市中央区でも、信号機のない横断歩道で停止しない車は見られます。

【記者リポート】
「男性が横断歩道にいるのですが、車が止まりません…。― やっと渡ることができました」

JAFが2023年に行なった調査では、新潟県内の「信号機のない横断歩道での車の一時停止率」は23.2%。全国ワーストという不名誉な結果です。

【歩行者】
「車が通らなくなったところを縫って横断歩道を走っていく…」

歩行者も半ば諦めているような状況のなか、横断歩道で子どもが巻き込まれる事故は相次いでいます。

先日も新潟県上越市で下校中の小学校低学年の男の子が車にはねられました。
2月には新潟市東区では、登校中の小学生が横断歩道を渡っている際に車にはねられケガをしています。

こうした事態を受け、警察も取り締まりを強化しています。

■ドライバーはなぜ止まらない? パトロールに密着取材

「横断歩道に、あちらの方いらっしゃったんですけど、分かりましたかね?」
新潟県新発田警察署のパトロールに密着しました。

パトロールでは、下校時間の子どもたちにも声をかけます。

「こんにちは、横断歩道渡るとき、高く手をあげて渡ってね。気を付けてね―」

密着していると、ある危険な場面に出くわしました。
横断歩道に向かって歩いてくる4人組の小学生のうちの1人が、横断歩道を渡ろうとしますが…。

「あっ!」
車はスピード緩めることなく、目の前を過ぎていきました。

警察は違反した車を追いかけます。
「そこの前の運転手さん、止まってください」

小学生が横断歩道を渡ろうとしていたにも関わらず、なぜ車は止まらなかったのでしょうか?

【新発田警察署交通課 小川眞一指導係長】
「歩行者に気付くのが遅れてしまった、と言っていました」

警察のパトロールに密着したこの日、取材中にも4件の違反が確認されました。

違反したドライバーの多くが「横断歩道で待つ歩行者に気付くのが遅れた」と説明したそうです。

一方で、そもそもルールを知らないドライバーも…。

【新発田警察署 渡辺寿智署長】
「基本的に横断歩道などあまり意識していないような運転が目立つ。横断歩道は歩行者が優先であるという認識を持って運転して頂ければ…」

新発田署管内で2024年に起きた人身事故は、2月末までの時点で19件。
そのうち歩行者と車の事故は4件起きています。
また、新潟県警のまとめによりますと、県内全体で2023年には横断歩道上の事故が221件発生。このうち死亡したのは6人。けがをした人は221人に上りました。

ドライバーの不注意で、人生が一変してしまった人もいます。

■「人生が一変してしまうのでドライバーさんも加害者になってほしくない」

2018年、新潟市中央区の信号機のない横断歩道で上野仁恵さん(72歳)は、買い物の帰り道に車にはねられ、骨盤骨折や耳の鼓膜が損傷するなどの重傷を負いました。
その時の衝撃で、事故瞬間の記憶はないといいます。

「ほぼ渡り切るところで、はねられたと聞いています」
「車が来るとかそういう感覚は全くなく、気付いた時は病室で手術の後でした…」

およそ5年たった今でも完治せず、膝には痛みや強張りがあり、事故前のように歩行するのが困難になっています。

「リハビリに行って今の状態を維持する感じ。少なくとも事故前の体にはもう戻れないです」

事故後に聞いた話では、ドライバーは合流する車に気をとられ、「横断歩道を渡る上野さんに気づかなかった」ということです。

【上野仁恵さん】
「ドライバーの意識を改善しない限り、なかなか事故は防げないと思う」

■『渡るよサイン』

警察によりますと、横断歩道を渡るときに、手を挙げるなどして『渡ります』という意思表示をすることが有効だそうです。
悲惨な事故を減らすためにも「歩行者からドライバーへ合図を送ることも大事」としています。

【新発田警察署 渡辺寿智署長】
「道路を渡るんですよという意思表示を、手を挙げる手を挙げるのが恥ずかしければ、しっかりドライバーの方を向いて『わたるんです』という意思表示を、ドライバーにして頂きたい」

新潟県警は2月に、県内にある信号機のない10地点の横断歩道でおよそ1時間検証。
その結果…
横断歩道を渡る際に何もしない場合では、一時停止した車の割合は48.1%。
一方で『渡るよサイン』を示した場合は、停止率が82.3%まで大幅に高くなったということです。

自分の命を守るためには、歩行者もこうした『渡るよサイン』の意思表示を実行したほうが良さそうです。

とはいえ、ドライバーが交通ルールを守ることが大前提。
事故を起こさないためにまずは「ドライバーが交通ルールを守り、事故を減らす認識を持つこと」が求められています。

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