なんでこんな若い子が・・・



福岡放送 Yahoo!ニュースより引用

あとを絶たない『指導死』 苦悩する教育現場の本音

FBS福岡放送

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福岡市でおととし、当時15歳の女子高校生が所属していた剣道部の顧問の暴言や暴力的な稽古を苦に、自ら命を絶ったとされる問題です。不適切な指導によって追いつめられる子どもは、あとを絶たちませんが、現役教員からは現場のあり方に悩む声も聞かれます。

■侑夏さん
「3年間の最後を6組で過ごすことができて、本当に良かったです。1年間ありがとうございました。」

おととし春、福岡市の中学校を卒業した侑夏(ゆうな)さんは、幼いころから続けてきた剣道の腕を見込まれ、福岡市東区の博多高校に特待生として入学しました。

しかし、高校入学から5か月足らずで、侑夏さんは「部活という存在が死にたい原因なのにね。」「死ぬために学校休んだ。」「誰が悪いって心が弱い私が多分悪いです。迷惑かけて、わがままばっかりでごめんなさい」とSNSに書き残して、自ら命を絶ちました。まだ15歳でした。

■侑夏さんの母親
「指導じゃないと思うんです。うちの子が受けたのは。理不尽な、本当、一方通行な。」

当時の男性顧問の執ような暴言や暴力的な稽古に苦しめられ、もう1人の男性顧問に相談しても、何も変わりませんでした。

「娘はそうして追いつめられた」と、侑夏さんの母親は訴えています。

教員の不適切な指導に追いつめられ、子どもがみずから命を絶つことを『指導死』といいます。遺族の会が2007年につくった言葉です。

『指導死』とみられる事案は、平成以降に報道されたものだけで107件あり、調査にあたった教育評論家は、表沙汰になっていない事案は、さらに多いとみています。

教育現場の問題を研究している名古屋大学の内田良教授は『指導死』の背景に特有の事情があると考えています。

■名古屋大学・内田良教授
「『指導死』、指導絡みの非常に難しい問題は、本人たちは指導だと思っていること。つまり、まっとうなことをやっているんだ、正しいことをやっていて、ちょっと失敗したんだ、と考える。」

現役の小学校教員2人が私たちの取材に応じました。

同僚の教員の指導に違和感を抱くことがあるものの、現場で改善を図ることの難しさを感じているといいます。

■60代女性教員
「廊下で大声で、まくしたてるような叱り方。そういう声を出す先生もいる。」

■20代男性教員
「友だちと比べて、〇〇ちゃんは、できているのに、君はこう、とか、すごく子どもが自分の自信を失ってしまうような発言で、無理やり頑張らせようとする、これってどうなのかなと思ったりする。この先生とは合わないから、学校に行きたくないみたいな声は、よく聞きます。それは、子どもがかわいそうだなと思う。」

■60代女性教諭
「難しいのは、教師と子どもが、うまくいかなかった。それで不登校になりましたとか、じゃあ何が原因だったのかというのは、教師どうしなので、メスを入れられない。」

こうした現状を変えるには、不適切な指導をした教員に対して、きちんと処分を行うことが必要だと、内田教授は指摘します。

それが、教員ひとりひとりに、自分の指導が本当に子どもたちのためになっているかを、あらためて考えてもらうことにつながるからです。

博多高校で起きた『指導死』をめぐっては、学校が侑夏さんの母親に対して、当時の剣道部の男性顧問2人が不適切な指導を行ったことを認めて、謝罪しました。

再発防止策を講じることも約束し、裁判をせずに10月、和解が成立しています。

ただ、当時の男性顧問2人は、ほとんど何も語らないまま、博多高校を退職していました。

■侑夏さんの母親
「高校の顧問の責任追及というのは、しっかりやっていきたい。これは私の意思なので、やっていきたいと思います。」

「娘を追いつめたワケを教えてほしい」と、侑夏さんの母親は、元顧問2人に対し、謝罪と経緯の説明、そして、賠償を求めていくことにしています。