最近は色んな事情で学校に行けない子供が増えているという。
学校には行けないけど勉強はしたい、
そういう子たちをターゲットにした昼間の塾なんかもあるらしく、
バスで迎えに来てくれるらしいと人伝に聞いた。
私が通勤している田んぼが点々とある片田舎の駅前にも
塾がひしめき合って激戦区になっている。
夕方になると塾の先生らしい人たちがお出迎えをしている光景なんかもよく見かける。
そんなとき、つい思い出してしまう。
今からもう20年以上も前の話。
中学生のときのことを。
中3のとき、私は近所の塾の夏期講習に通い始めた。
その塾は塾長のおじさんと教室長と呼ばれる受付のおばさん以外は
ほとんどが大学生の若い先生だった。
初日、数学の先生は大学の都合で来られないということで代わりの先生だった。
数学の先生はどんな人なのかなーって思いながら楽しみに帰った。
後日、数学の先生の初めての授業。
初対面での第一印象は
なんかボソボソ話してるし、俯き気味で、すごく暗い。
なんていうか陰気でちょっと怖い…
そう思った。
その先生も私と同じでこの夏期講習からの新人だったらしく、
まだ慣れてなかったらしいと後で知った。
何度かその先生の授業を受けてるうちに、
先生もだいぶ慣れてきて、俯きもなくなり言葉もしっかり聞き取れるようになった。
たまに冗談を言ったりすることもあった。
なんでかわからない。
いつからかわからない。
私はこの先生のことが気になるようになった。
気づいたら、好きになっていた。
夏期講習が終わってからも私はこの塾に通い続けることになった。
先生には数学の他に、理科も教えてもらうことになった。
先生とたくさん話がしたくて、私は数学と理科の勉強を頑張った。
復習して、わからないことが出てきたら先生に聞きにいく。
先生に聞きたいから勉強する…そんな感じだった。
だから数学と理科だけ成績が伸びた。
質問して、先生と他愛のない話をするのが本当に楽しかった。
話してたら遅くなりすぎて、親に怒られたりもした。
それでも私は先生とたくさん話がしたかった。
先生は大学生だから、私みたいな中学生を相手にしないのはわかってたけど…
(今思えばたったの4つ差だけど、この学年での歳の差は大きかった)
高校受験が終わり、中学を卒業して私は塾をやめることになった。
先生との接点がなくなってしまうことは
私にとってとてもとても辛いことだった。
塾に先生が来るであろう時間に塾の近くを通ってみたり、
そこで偶然会えたら少しお話をしたり…ということを何度かした。
それでもそんなことも長く続くわけではなく、
高校生活を楽しみながら、それなりに好きな人もできたりした。
でも心のどこかではやっぱり先生のことが気になるし好きだった。
今みたいに携帯を持ってたわけでもないから連絡の手段もない。
時代が違えばもう少し繋がりが持てたのかもしれない。
高校を卒業して、専門学校に入った頃、
やっぱり諦めきれなくて
せめて想いは伝えたいと思った。
先生の住所は知っていたので、手紙を出した。
ずっと好きだったこと、自己満足だけど伝えたくて。
連絡くれたらいいなってダメ元でメールアドレスを書いてみた。
しばらく経った頃、先生からメールが来た。
跳びはねるほど嬉しかった。
内容は『ビックリしたよ(笑)』と書かれていた。
告白したことにビックリしたのか
手紙が来たことにビックリしたのかわからないけど…
なんでもいい。
先生からメールがきたことが嬉しかった。
返事を返したけど、もう返事は来なかった。
一度でいいから、会いたかったな…
それからしばらくして私は社会人になった。
ここからのことは残念ながら記憶が少し飛んでいて、
正確な年月がわからないのだけど…
私の友人と先生のお母さんが同じ職場で働いていた。
そのことは友人から聞いて知っていたのだけど
その友人から衝撃の連絡があった。
先生が東京で交通事故で亡くなったと言う訃報だった。
友人が何を言っているのかわからなかった。
私に諦めされるためについた嘘?
いやでもなんでそんなことを?
そんなことしないか…え、なんで?
そんなことあるわけないやんって
どうしても信じられなかった。
もちろんそのことは嘘じゃないだろうし、
お母さんから聞いた本当のことなんだろう…
どうして?なんで?
なんで先生が死ななきゃいけないの?
なんで?
意味がわからなかった。
ずっと、ずっと大好きだった先生が死んだ?
どう言うこと?なんで?
あまりにもショック過ぎて、
数日間放心状態になった。
先生にはもうずっと会ってなかったから
死んでない。
絶対どこかで生きてる。
そう思えて仕方ない。
今まで通り、ただ会えないだけ。
死んだって何?
先生は生きてるよ。
生きてるに違いない。
会えない遠くにいるだけ。
第一印象はとても苦手なタイプだった。
そこから打ち解けていくなかで先生のことがどんどん好きになった。
本当に大好きだった。
はじめ好きじゃなかった分、自分でもビックリするほどはまっていったんだと思う。
今でもたまに先生の顔を思い出す。
訃報が何年前だったのか、何月だったのか…
そのあたりは全く思い出せないくらい
ショックでとんでしまった。
いつのまにか、歳上だった先生の年齢を追い越した。
先生は20代なかばという若さで亡くなった。
いや、きっと生きてる。
生きてるよ…
少なくとも、私の中では生きてる。
もうずっと前だけど、
あまりに憔悴していた私を心配した別の友人が
自宅にお参り行く?って声をかけてくれた。
でも、先生が死んだ事実を受け入れたくない私は
あと一歩の勇気が出ず、行くことができなかった。
いつか先生に会えるかな。
また会いたいよ。
20年近く経った今も、そんなことを思うと涙が出る。
今日ふとそんなことを思った。
先生、会いたいよ。