「……誰……?」
『誰って……オレ。潤だよ。
……ってか他に誰がこんなことすんのさ」
ふふふっ。
あぁあぁ、拗ねちゃって。
相変わらず僕の潤は可愛いんだから。
『ねぇ、入っていい?』
「だめぇ」
『え、なんで?』
「もう寝るから」
『まだ寝ないでしょ』
「寝るよぉ。
……てか、こんな時間にどうかした?」
『うん、寒くて寝れねー。
この家ボロすぎんだよ。
……だから……ねぇ……
まぁの布団で一緒に寝てもいい?』
「だめぇ、いいわけないだろぉ?」
『いいじゃん』
「だめだよ」
『ちょっとだけだから』
「だめなもんはだめ」
『ほんとにちょっとだけだからさぁ』
「……ほんとにぃ?」
『うん、ほんと』
「もうっ、仕方がないなぁ。
……じゃあ、ほんとにちょっとだけだよ?」
『うん。わかってる』
ふふふっ。
大丈夫、
最初から帰すつもりなんてないよ。
「…………おいで……潤……」
すぅっと古い木の引き戸が静かに開いて、息を潜めた“したり顔”の潤が まるで忍びのように音も立てずに部屋に入ってくると、捲ってやった布団の隙間から ゆっくりと、そのしなやかな身体を滑り込ませた。
寝床に入るなり僕にしがみつくように抱きついてきた潤の身体は なぜだかすでに熱を持っていて……
「ねぇ潤、わざわざ僕の身体で暖まらなくても潤の身体もう充分あったかいんだけど?」
「寒いんだよ。冷えきってんの。
だからさぁ、まぁ……あっためてよ……」
「ふふふっ。甘えん坊だなぁ、潤は」
「……ってかさ、さっきのやつ。
誰だと思ったんだよ?
……ってか誰がよかったんだよ?
正直に言えよ」
抱きついた僕の胸元から不服そうに大きな瞳を揺らして僕を見上げる可愛い潤の柔らかな髪を、宥めるように手で梳いてやる。
「なんの話ぃ?」
答えをはぐらかす僕にイラついた潤が、僕の身体に乗り上げると、顔の真横に手をついて僕のことを真上から見下ろすような体勢になった。
「もしかしてアイツだと思った?
アイツのが良かった?
……ってかまさかオレが居ないあいだにちゃっかりアイツともこーゆーことしてんじゃねぇだろうなぁ?」
ふふふっ。
ねぇ、それはヤキモチってやつ?
なんでそんなに可愛いかなぁ、僕の潤は。
そうやってまた、
僕のことを夢中にさせるんだろ?
「なに言ってんの?わけが分かんないや」
さらに答えをはぐらかして揶揄ってやると、途端に拗ねたように唇を尖らすから、伸ばした腕を潤の首に回した。
そしてそのまま優しく引き寄せてやると、潤の唇がそっと僕のそれに重なった。
誰かさんへの嫉妬に心を焦がす今夜の潤は最初から荒々しくて、噛み付くようなキスはあっという間に深くなり、逃げ惑う僕の舌を追いかけるように執拗に舌を絡ませた。
“仕方なく”を装った僕の身体を潤の熱のこもった瞳と大きな熱い掌が縦横無尽に弄る。
「……ッハアァァァ……」
久しぶりの感覚に思わず漏れでる熱い吐息に僕の理性も次第に蕩けていく。
「……っんん……っんあっ……」
「……声、出すなよ。
アイツに聴こえたらヤバいんだろ?
……まっ、オレは別に構わないけど」
僕らの使ってる部屋と部屋との間には、一応空き部屋を挟んではいるものの、昭和に建てられた木造のこんな古い家屋の造りに、防音効果など殆ど無い。
潤に煽られるようにそんなことを耳許で囁かれた僕は、薄い壁を隔てた向こうに櫻井さんが寝ていると思うだけで可笑しなくらい興奮した。
「……まぁ……まぁ……好きだよ……」
うわ言のように僕の名前を繰り返し、貪るように激しいキスを続ける潤の身体を昂ぶる心と身体でキツく抱きしめた。
「……っんん…っんあっ…っん…っん…」
立て続けに与えられる快感に思わず漏れそうになる声をなんとか必死に押し殺し、迫りくる背徳感と罪悪感に苛まれながらも……
……僕は
今夜も、
潤と、またひとつ……