ハイリターンならハイリスクなのは当たり前。
でもあまりに危ない会社は避けつつ、できるだけ確度を高めてリターンが狙えるようにリソースを割きたいのは世の性。
前回PBRに着目した妙味ある銘柄の選び方を紹介したところ、ROEと絡めてコメントをいただきました。
おさらいすると、ROEとは
という式で表され、ここに登場するのは損益計算書(PL)で最後に残った純利益と、貸借対照表(BS)の中の純資産のうち多くを占める自己資本(株主持分)だけです。
株価を含まず、今割安か否かの判断はできない指標になっています。
ではROEから何がわかるのかというと、株主の持分に対しどれだけ利益を生めたか?という収益性、収益効率がわかります。
高ければ高いほど、小さな資産で大きな利益を上げているということになるため、収益性が高いと判断されます。
そして自己資本は、貸借対照表の純資産のうち多くを占めます。
似たような指標にROA(当期純利益を総資産で除した百分率)がありますが、株主の視点からではなく、その会社全体でどれだけ収益力があるのか?という観点でみる時に用います。
ムダな資産をしっかり圧縮し、返済できる債務は返済し、全体を小さくした上でしっかり利益を上げなければ数字として改善できない指標です。
その点、ROEは利益を上げることのほかに、自社株買いなど自己資本(純資産の一部)の消却を行うことでも引き上げられてしまうため、いくらでも誤魔化しが利きます。
(もともと自己資本を豊富に抱えている企業であれば、株主還元の観点で◎です)
投資家の立場に限定すればROEも有効な指標ですが、私はどちらかというと資産全体をいかにうまく活用できているか、自己資本のサイズを見た上で、数字としては総合力が問われるROAを好んでみています。
そしてこの2つの指標からも、企業の安全性はなんとなく見えてきます。
ROEの方が分母は小さくなるため、必然的にROAよりパーセンテージは大きくなりますが、その差があまりに顕著な場合には注意が必要です。
当期、5の利益を出せた3社があるとします。
わかりやすく、総資産も各社100とします。
A社:(総資産/負債・純資産)=(100/90・10)
B社:(総資産/負債・純資産)=(100/50・50)
C社:(総資産/負債・純資産)=(100/10・90)
このとき各社の指標は、
A社:ROE=50%、ROA=5%
B社:ROE=10%、ROA=5%
C社:ROE=5.6%、ROA=5%
ROAは総資産が同じなためみな5%ですが、ROEにこれだけバラツキが出ます。
そしてその差がもっとも開いているA社に注目。
自己資本が小さすぎるために、自己資本に対する利益率(ROE)は、一見すると凄まじい結果になっています。
しかしこれ、自己資本比率が低いのと同じことです。
総資産に占める自己資本(BS純資産の一部)のサイズが小さいから、それと比較した利益は潤沢に見え、多額の負債を含めた総資産から見ればちっぽけな利益に見えてしまうんですよね。
この2指標間に開きがあると、安全性に疑念が生じるということです。
では、この安全性問題をクリアしながら、収益力バツグンの企業を探すにはどうすれば良いでしょうか?
これに対するアンサーとしては、開きが小さく(詰まるところ自己資本比率が高く)、ROEも大きい、そんな企業をスクリーニングで見つけてみよう!ということになります。
試しに、SBI証券で絞り込んでみます。
〈抽出条件〉
・市場:東証P・S・G
・ROE:20%≦
・自己資本比率:50%≦
・PBR:0 ≦ 1倍
ROEは10%以上で十分優良といえるため、これくらいあればめっちゃいいな!と思える数値を指定。
ROEと自己資本比率のみだと件数がかなり出てくること、冒頭で説明した通り株価が絡まない指標であることから、今の株価の割安度を示す「PBR1倍割れ」を追加指定しました。
一気に絞られた…( ̄∇ ̄; )
ワクワクしながらざっと各社四季報を見てみましたが、収益がそれはそれは不安定な会社が多かったです。
今年はROEが高かったけど、来年は落ち込む企業、またその逆もあり。
過去爆益を出して以来不振で、取り崩しながら細々営業してるっぽい企業。
買った自社株を積み増して、合併狙ってる?という企業。
さまざまで面白い。
安定している企業を探すには、ROEを妥協し、経常利益の変化率などをミックスさせてスクリーニングしてみても良いかも。
なんにせよわかったのは、今割安な優良株はマジでないということ。
みんなが投資なんて見向きもしなかった時代ならゴロゴロあったかもしれませんが、投資が流行っている今、多少何かの数値を妥協して、みんなが気づいていない将来爆益株を探す必要がありそうです。
そのためには中身の事業内容、資産の使い方などを細かくみていく必要があり、一様にすんなりと語れるものではないのです。
ここからは補足で、今回スクリーニングで使用した2指標を同時に上げることがなぜ難しいのか?ということについてですが、単純に指標の計算式を見比べると明白です。
自己資本を小さくするとROEは上がりますが、自己資本比率が下がってしまいます。
これを、十分な自己資本比率を維持しながらROEを上げたいとなれば、圧倒的な収益力を実現し、最終的に残る当期純利益を爆発的に伸ばさなければ両立し得ません。
しかもそんな銘柄が今割安で、これから期待できる。
うん、今は厳しそうですね。笑
とはいえ、調整局面に入った日本のマーケット。
定期的にスクリーニングでチェックしながら、目ぼしい銘柄があればウォッチリストに入れ、監視したいものです。
確信できるまで動かないのもまた戦略。
グレートグロース狙いのちょっとアブナイ投資もまた醍醐味。
難しい今の相場と、うまく向き合っていきたいものです