理論上、もちろん紙切れになりますよ。えぇ。
でもそんな会社を避けて投資することはできます。
これについて語るには、基礎的な財務の知識が必要になります。
できるだけザックリ書いてみたので、興味があればがんばって最後まで読んでみてください。
財務三表とは?
会社の会計で用いられる表、そして私たちがその会社の資産状況や経営状況を把握するのによく見る表は以下の3つです。
①貸借対照表(BL、バランスシート)
②損益計算書(PL)
③キャッシュフロー計算書
他にも財務諸表はきっとあるのだろうけど(知らんけど)、これを見とけば会社のことが大体わかる主要な表のため、財務三表とか言ってまとめられてます。
ファンダメンタルズ重視で投資をしている人がよく着目するのもこの表たちです。
それぞれの概要をば。
①貸借対照表
今その会社にどんな性質の資産がどれくらいあるか?を示した表です。
上場企業の決算短信を開いて下にスクロールすると出てくるこんな見た目をした表で、2ページにまたがっていますが、セットで見ます。
大きくわけて、左側が資産、右側が負債と純資産の部。
右側は「左側の資産をどこから調達してきているか?」を表しており、常に
資産=負債+純資産
という関係が成り立つため、バランスシートとも呼ばれています。
もうちょっとわけていくと、
左側、流動資産はすぐに現金化できる(もしくは現金)資産
固定資産は機器、設備、土地など通常すぐ現金化しない資産
右側、負債の部は期限付きで必ず返済しなければならない調達方法(他己資本)
純資産は返済しなくてもよい調達方法(自己資本)
です。
私たちが投資したお金は自己資本に入ります。
前会計期間の実績も併せて載っているため、各項目(勘定科目と言います)をググり、3ヶ月前と比べてどの勘定科目が増えたか、減ったかに注目することで、資産状況の変化もわかったりします。
②損益計算書
会社が1年ないし1四半期(上場企業は3ヶ月に1度の開示が求められます)、どれだけどんな利益を上げて、損失を出したのかがわかる表です。
重要なのは、売上高、営業利益、経常利益、四半期純利益。
重要なので会社四季報にも載ってます(四季報の純利益履歴は年間)
売上高は費用とか無視した売上全体の金額です。
1万円お客さんにキャッシュバックして3万円の商品が売れたとすれば、3万円が売上です。
変な話、3万円キャッシュバックして3万円の商品売っても、売上は3万円です。笑
そこから本業にかかわる費用を加味して営業利益が出ます。
わかりやすいところで言うと、原料費、人件費、広告費などなど。
そしてさらに本業以外の活動で出した利益、損失を計上して、経常利益が算出されます。
こちらは投資損益、受け取った利息や支払った利息などなど。
そうして残った経常利益からさらに税金や特別に発生する損益を足し引きして、残ったのが純利益です。
後に書きますが、ここまで見た貸借対照表と損益計算書のつながりが重要です。
損益計算書で最後まで残ったピュアっピュアな利益は、貸借対照表の純資産に貯めるか、投資に回すか、株主に還元する(増配とか)ことになります。
③キャッシュフロー計算書
①貸借対照表の中で、キャッシュ(現金)にかかる部分が重要なので、これの出入りについて詳細に説明したのがキャッシュフロー計算書です。
こちらは四半期ごとではなく、1年ごとに開示されています。
大きくわけると、営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフロー。
営業活動によるキャッシュフローは、その名の通り本業で出入りしたキャッシュに関する部分。
ここは成長企業でない限り、通常プラスでないと事業を継続する必要性がないということになってしまいます。
投資活動によるキャッシュフローで出入りするのは、よくイメージされるところで言うと、新しく店舗を構えたり機械を揃えるなどの設備投資、そして有価証券を取得する(子会社や関連会社にする)M&A目的の投資など。
どんなことに投資をしているのかを見ることで、その会社の方針がよく見える部分です。
営業活動で生んだキャッシュの範囲内でまかなえているのが理想ですが、成長企業はその限りではありません。
最後の財務活動によるキャッシュフローは、他2つのキャッシュフローを計算した後生じた余剰や不足をどこに使ったか、またはどう調達したかを表す調整部分です。
少しややこしいのは、不足している時は新たにキャッシュを取り入れる(借金など)ためプラスに、余っている時はどこかへキャッシュを支払うためマイナスになります。
各表の関係
三表を繋ぎ合わせると、こんな感じになります。
三表の中でも貸借対照表、損益計算書は全体を俯瞰できるため、よく見られています。
その分学習範囲は膨大ですが、キャッシュフロー計算書は今回説明したものだけで投資先の決定には十分です。
さらに、投資リスクに関するお話に重要な点を挙げておきます。
【赤字の定義】
赤字とは、支出が収入を上回ることです。
売上高やその他諸々の入金より、費用やその他諸々の出金が多く、一般的に営業・経常利益、純利益がマイナスになることを呼んでいます。
【利益が増えても現金が増えるとは限らない】
ちょっと細かい話で、資産として①貸借対照表に計上される売掛金という勘定科目があります。
これは「商品は提供したけどお金は後で徴収するよ」という資産になるので、利益として認識はしていますが、実際にその時点で現金が入ってきているわけではありません。
安全な投資をするために確認したいこと
では、ここまでの知識を踏まえて「倒産しなさそうな会社」を選びます。
四季報でチェックできるものがほとんどなので、ルーティンのようにチェックできるようになればパーフェクトです。
🔸自己資本比率が高い会社を選ぶ
自己資本比率は、自己資本を総資産で除したパーセンテージです。
自己資本は「返済義務のない資金調達の方法」でした。
そのため、不景気により一時的に利益が伸び悩むことがあっても、自己資本を潤沢に蓄えていれば、自由に使えるお金として取り崩しながらも持ち堪えることができます。
目安としては全体平均が40%程度(業種により異なる)なため、それ以上あれば特段問題ないと考えます。
🔸有利子負債の少ない会社を選ぶ
有利子負債は貸借対照表「負債の部」に含まれる、利子をつけて必ず返さなければいけない借金、社債です。
ここが膨らむと債務超過となり、いずれ倒産する確率が高くなります。
目安としては自己資本以下、または総資産の50%以下が望ましいと言われています。
🔸営業キャッシュフローがプラスの会社を選ぶ
営業活動をしている中で、キャッシュが目減りしていく、ましてやマイナスに陥っている会社は、安全な投資先とは言えません。
成長企業に投資して大きな利益を狙う等の目的がない限り、マイナスとなっている会社は避けることをオススメします。
🔸配当性向をチェックする
通常半期に1度、株主へ支払われる配当は、最後の最後に残った純利益から支払われています。
この利益の中からどれだけ株主に配当として還元したか?というパーセンテージを配当性向といい、配当額を一株あたりの純利益で除して求めます。
株主還元も大切ですが、無理に配当を支払うことは、結果的に純利益が含まれる自己資本を取り崩すことになり、安全性は弱まります。
年明けに世間を賑わせたあおぞら銀行もその類で、直近の配当性向が100%を超えていました。
🔸「キャッシュなし資産」が膨らんでいないか確認する
前に出てきたように、利益が増える=現金が増えるわけではありません。
利益は増えていても、現金が足りなくなって借金が返せなくなる「黒字倒産」もあり得ます。
財務諸表を見るのに少し慣れたら、貸借対照表の左側に売掛金、未収入金、在庫関係などの項目が膨らんでいないか、点検してみます。
それでも倒産したら
これだけの項目をしっかりチェックし、ついでに利益が増加傾向か?も四季報で見ておけば、会社が傾くことはなかなかないはずです。
ただ万が一、万が一ですよ。
何かの間違いで、急速に需要が減り、当該事業一本だったとしたら…
テーマ投資など証券会社が扱うセット商品を購入し、その中に危ない株が仕組まれていたとしたら…(実体験)
大丈夫、即時紙切れになるわけではありません。
倒産する会社は上場廃止となりますが、上場廃止する前に猶予期間が設けられています。
取引所がいったん整理銘柄として1ヶ月間指定するため、その間株価はどんどん下落しますが、売ることはできる模様です。
上場廃止となってしまうと売ることが難しくなるため、ここで諦めて売ることになります。
なお整理銘柄の前段階もあり、「上場廃止となるおそれのある銘柄」は監理銘柄として指定されています。
こちらは最近、三菱商事が上場廃止を発表したローソンが載っていますね。
なんにせよいくらでも損はしますが、株式を紙切れにしてしまうのは余程の放置プレーヤーくらいです。
安定経営の会社が良い投資先とは限らない
銀行預金だと目減りするから、安心して投資できる会社に投資して配当年3%を実現したい…という人にとっては、ずっと持ち続けられる、限りなく倒産する確率が低い会社に投資することが良い選択となるでしょう。
ただし、これまでに上げた条件をすべて満たすような会社は規模も大きくなっていることが多く、値動きは落ち着いており、株価も右肩上がりということはあまりありません。
値上がり益をしっかり取りたい場合は、純資産から積極的に投資をしてでも、継続的に利益を伸ばしていく会社への投資が望まれます。
その場合、自己資本は大きくなりづらいですから、安全性も高くはありません。
新規事業にお金が必要で、有利子負債も多少膨らんでいるかもしれません。
グロース市場にやっと上場した会社は、数年のうちに吸収されたり潰れてしまうかもしれません。
そんな数ある企業から成長を信じられる企業を選び抜き、投票できるのも投資の醍醐味。
安全性と事業拡大や既存事業への投資は両立しづらいところがありますが、自分の中で好みのバランスを探りながら投資を楽しみたいものですね