コロナウイルスがジワジワ蔓延しつつある今現状をふまえた上で、全世界で不要不急の外出を控える動きが活発化している。
一方で、『GO TO トラベル』なんて矛盾した政策もとられている今日この頃ではあるが、経済を回していくには致し方ないのだと、そこに関してはこの政策を受け止めている自分がいる。
しかし、いち介護士である私にとっては、利用者さんに感染させてしまう可能性を考えると、やはり参加することは出来ないのが、とても残念である。
そんな中、東京在住の友人から連絡があった。
「ねぇ、旅行行こうよ!」と。
「……」
わかる。とてもよくわかる。私も行けることなら行きたい。
行きたいけど、職業柄厳しいものがある。
結局のところ今の仕事を辞める決断をしない限りは、『GO TO!』に参加することは出来ないのである。
彼女は、私が介護という職についていることも十分に理解してくれているはず。
それなのに、こういった声をかけてくるというのはおそらくストレスを発散したいのだろう。
彼女は、在宅ワークということもあり(コロナの影響により)、外に出て気分を紛らわしたいのだろう。
元々旅行好きの彼女にとっては、この決して短くもない期間自宅に缶詰状態で仕事に打ち込むというのは、相当なストレスが溜まっているに違いない。
そこに関しては、先程の発言も理解出来ないこともないのだが、ここで違和感をおぼえる発言をしてくる彼女。
「なんか毎日毎日東京ばかり〇〇人の感染者が……。って言ってるけど、実際のところ大したことないからね? 東京の人口何人居ると思ってんの? 大袈裟に言うのほんとやめてほしいよねー。 そんな簡単に感染するわけないじゃん。 東京以外の人たちってビクビクし過ぎてて異常だと思う。 感染してもそんなすぐ死なないって。 なーんにも心配ないから。ほんと。大丈夫、大丈夫。 で、いつ行く?」
うん。どこが大丈夫なのだろう。
確かに過剰反応し過ぎている事は否めない。けれど、感染のリスクを考えると身構えてしまうのは、仕方のない事だと思う。
どこから突っ込めばいいのかわからないけれど、確かに彼女は間違ったことは言ってないのかもしれない。
言ってないのかもしれないけど、果たして『GO TO!』に乗っかって一緒に旅行へ行ったとしても、彼女が感染したところで苦しい思いをするのは彼女だけ(最小限の被害)で収まる可能性は高いけど、こちらはそんな簡単な被害では収まるわけがない。
もし、私が感染したとして、気付かずに出社し、利用者さんや他の職員さんに感染させてしまった場合を考えると、完全にクラスターが発生してしまう。
それだけに留まれば良いが、2次、3次、と、次々に感染させてしまったらと思うと『恐ろしい』なんて言葉だけでは言い表せない複雑極まりない感情の渦に飲みこまれる。
決して、一生這い上がることは出来ないんじゃないかと息が止まるほど、胸が苦しくなる。
そんな思いを彼女に吐き出すも、聞き入ってはくれない。
それこそ、コロナというウイルスの受け取り方の違いというのか、感覚のズレというのか、互いに理解し合うのはとても難しいことなのだと改めて実感させられた。
とはいえ、彼女との付き合いは長いこともあり、きちんと説明すれば納得してくれる人間(だと信じている)なので、また説得を試みようとは思うが、こうも感覚のズレが生じているこの溝をどうにか上手い具合に埋められるような、互いに理解し合えるような結論へと導いて行ければと心の底から願うのみである。
どうにかして……どうにかして良い方向へ……。