女は結婚することにした。
いつまでも日本人の相手をしているわけにはいかない。
相手は、まじめな警察官だった。
「おめでとう、それが何よりよ」と、娼婦仲間のみんなは祝福してくれた。
幸せな一年が過ぎた。
しかし、夫の給料では生活が段々と苦しくなり、借金も増える一方だった。
夫はまじめで、仕事でワイロを取るようなことをしなかった。
生活の苦痛が女の両肩にのしかかるようになった。
女は、夫に内緒で、再び日本人の相手をするようになった。
いまは携帯さえあれば地球上の誰とでも話のできる便利な世の中だった。
電話すると、以前のなじみたちと、すぐに連絡がついた。
フライトが到着する日時と、ホテルの名前を聞けば、それでよかった。
夫には、田舎の実家に行くと言って外泊をした。
生活は段々と楽になった。借金はきれいに片付いた。
日本人を相手にすることはやめられなくなった。
ある日、
客と泊っているホテルの部屋のドアを蹴り開けて、制服姿の夫が現れた。
夫は拳銃で、女をその場で射殺した。
客の日本人に向けても発砲したが、弾は外れた。
他人を殺せば、親戚の警官たちにも責任が及ぶので、
わざと外したらしかった。
夫は自分の頭を撃ち抜いて、即死した。
ホテルの従業員がかけつけ、警察がかけつけ、メディアがかけつけ、
野次馬も押し寄せた。
客の日本人は、裸のまま小便を垂れ流し、ブルブル震えながら、
血まみれの部屋で放心状態になっていた。
野次馬のなかには、日本人もいた。
「外国で遊ぶときは、生還を期せずの覚悟いるな」と、
日本人たちは笑った。